自己投資か…、と僕は考えた。そう言われてみるとあまり考えたことはなかった。
そのくせ、くだらないことに浪費してしまうのだ。
「よおし…!」僕は決心し、その週末、分不相応と思いつつもなけなしの貯金をはたいて、超高級ホテルとして知られているリッツ・ヒールトンに部屋を取った。
しかし、ただ泊まるだけでは面白くないので、自らにリッツ・ヒールトンにふさわしい人間を演じきるという課題を出した。
なりたい自分になったフリをすることも25歳からは大事なことようだ。
【25歳からのルール 09】 なりたい自分になったフリをする!
【25歳からのルール 80】 ホンモノを観る!
【25歳からのルール 85】 あえて大金をはたく!
当たり前のことだが、超高級ホテルと呼ばれるにはそれだけの理由があった。部屋はもちろんサービス、アメニティに至るまで一部のスキもない。僕は圧倒された。これが本物を知るということか…。
そして一泊し、土曜の午前、僕がチェックアウトをしている時、ロビーに入ってきた二人連れを見て、僕は絶句した。
関野さんと、そして、一緒にいるのは松井さんじゃないか!
松井さんは独身だから、関野さんと一緒に歩いていても不思議じゃないが…。
なんとか二人に見つからずにホテルから出られたが、さすがにショックだ。
まさか関野さんが…。っていうかまだ昼間だぞ。
しかし、松井さんが女性社員に人気があることは事実。いやっ、しかし…!
僕は混乱する自分をなんとか納得させようと必死だった。しかし、松井さんも独身、そして関野さんも独身だ。なにも問題はないのだ。
そうさ、よくよく考えればお似合いの二人じゃないか…。
僕はとぼとぼと帰路についた。
そんなこんなで、私生活ではショックなことが起こりつつも、『あたりまえだけどなかなかできない25歳からのルール』を読み、実践していると僕の仕事はかなり変わった。
それは松井さんも言ってくれていることだし、なにより任される仕事の質がそれを物語っている。
まだまだ上原には及ばないが、大きな額の受注も取れるようになってきた。
しかし、一番うれしいのは件の建築事務所との関係を修復できたこと。僕も誠心誠意お詫びしたのだが、松井さんの電話がやはり大きかったようだ。
正直そのまま関係が終わってしまったとしても、会社の損失は微々たるもの。ただ、一度受け持った仕事にはとことん付き合った方がいい。
25歳からのルール32 仕事とは、とことん付き合う!
所長は前言撤回し、今後もわが社の製品を使ってくれると言っていた。
さて、僕の話はここまで。気になるのは 松井さんと関野さんのこと。松井さんたちはあそこで何をしていたんだろう? それは、松井さんの話を聞いてみてほしい。
(作/山田洋介、挿絵/緒崎およ)
- 書籍名:あたりまえだけどなかなかできない 25歳からのルール
- 著者:吉山 勇樹
- 出版社:明日香出版社
- 定価:¥ 1,400 (本体価格+税)
- ISBN-10:4756913326
- ISBN-13:978-4756913326