「いい心がけだ。おまえ、25だろう。そろそろ将来に向けて自分の体の心配をしないとな」
そういえば、松井さんは日本酒を一杯飲んだ後は薄めの水割りに切り替えていた。
それにしても、今日の松井さんはどうしたんだろう、こんなに饒舌な人だったとは?
そんなに酔っているようにも見えないが…。
「係長、僕、係長はもっと無口な人だと思っていましたよ」
「なんだよ、今日はうるさかったっていうのか?」
松井さんがまた、険しい顔をした。
「いえ、そういう意味じゃなくて…」
「はっはっ!冗談だよ、ところでおまえこんなの興味ないか?」
係長の手にはいつ出したのか、一冊の本が握られていた。
「なんですか?これ」
「見ての通りだよ、『あたりまえだけどなかなかできない25歳からのルール』。ぴったりじゃないか、25歳だし、あたりまえのことはできないし」
「はあ…」
「まあ、そんなに難しい本じゃないし、読んでみろよ。何かの役に立つかもしれないだろう」
松井さんはそう言い残すと、大通りを走るタクシーに手をあげた。
僕は駅まで乗せてもらい、松井さんはそのままタクシーで帰宅した。
【25歳からのルール 70】 そろそろ自分の体も心配する
翌日、会社に行くと課内がざわついていた。 僕はデスクにカバンを置き、パソコンを立ち上げると、隣の席の関野さんに話しかけた。 関野さんは係だけではなく、この課でも唯一の同期だ。だからちょっと運命を感じてた。
「おはよう、なんだかいつもと雰囲気が違うみたいだけど、何かあったの?」
「あ、おはよう中山くん、すごいの、上原くんがアルファ建設から大型受注を取ったらしいのよ」
上原も僕の同期。同じコピー機を扱っているが、担当地域の異なる営業二課の所属だ。
「あいつ、また!?」
思わず聞き返してしまった。
3週間前にも、上原は大きな契約を取って、皆の注目の的になったばかりだったのだ。
「そうよ、なんかデキる男って感じよねぇ」関野さんの頬が赤らんでいるのは、大型受注に興奮していることだけが理由なのだろうか…。
関野さんはかわいい。仕事も、スタープレイヤーではないが堅実だ。しかもかわいい。
こうしてはいられない、僕もがんばらねば!僕は担当地域の地図を広げ、契約にこぎつけられそうな企業や事務所をリストアップした。
なんだかガムシャラにやりたい気分だった。
さて、やる気に満ち溢れ、ガムシャラに仕事に打ち込みたい時、25歳からはどうする?
Q3 : さあ、中山はどうすればいい?
1、そのやる気が大事!感情のまま、猪突猛進突っ走る!
2、やる気は大事だが、いったん深呼吸。冷静にやるべき仕事をリストアップしてみる。
- 書籍名:あたりまえだけどなかなかできない 25歳からのルール
- 著者:吉山 勇樹
- 出版社:明日香出版社
- 定価:¥ 1,400 (本体価格+税)
- ISBN-10:4756913326
- ISBN-13:978-4756913326