- 1. 本名を公表しようと思った理由
- 2. アイドルからAV女優へ
- 3. 恋愛観の変化
- 4. 取材後記
■ 本名を公表しようと思った理由
出版前から話題となった本書を執筆した理由とは?
―衝撃的なタイトルが発売前から話題になっていましたが、なぜ本名を公表しようと思ったのですか?
原
「まだ21年しか生きていないですが、今回の本を出版することが決まり、そこを振りかえらなければいけなくなって、考えたんです。
AV女優「原紗央莉」としては、まだ1年しか活動していない。半生のほとんどは本名の私の出来事なんで、AV女優になった理由、家族のこと、昔のことを話すには本名を公表して書いた方が、私らしいと思い、タイトルに本名を入れることにしました。」
―かなり過激な内容ですが、公表することに迷いはなかったのですか?
原 「そうですね。AV女優になることを決めたことが私の中での最大の分岐点でした。そこでの決断が大きなことだったので、本名を公表することや過去を話すことにはそこまで抵抗はなかったです。他人の前でセックスをしている姿を披露すること自体が私の中での究極なので(笑)。まあ全く抵抗がないと言ったらウソになります。 」
―同じAV女優の友達からの反応はどんなだったんですか?
原 「先輩のAV女優の方が、前よりもやさしくなりましたね(笑)。その方からの風当たりがすごく強い時期がありまして。この世界にも上下関係があるんです。それで以前は、「私は先輩よ」っていう感じの態度の時があったんですけど、私が本名を明かすことを知って下さった後にはやさしくなりました。「おまえ、覚悟決めてやんのか」って先輩の心の中の声が、私には聞こえました気がしますね(笑)。 他にも「絶対読むよ!」と言ってくれる人がいたり、ちょっと周りがやさしくなったように感じています。 」
―AVの世界の上下関係ってどんな感じなんですか?
原 「基本は仕事を続けている年数だと思います。出演本数もあるかな。私の中ではAV女優を4、5年やってるという人は先輩なので、その人が同じ年でも年下の人でも、タメ語は使えないですね。芸能の世界では、同年代の子だと仲良くなれば、タメ語でも話せるんですけど。」
―「原紗央莉」という芸名に由来はあるんですか?
原
「特にないです。なんか日本っぽい名前がいいなって気軽に考えました。「紗央莉」が最初に決まって、「紗央莉」をベースにあう苗字を探しました。それで「原」は原監督もいるし悪いイメージないよね、という感じで候補に上がりました。字画数を調べたら、意外によかったので、「原紗央莉」に決まりました。 」
■ アイドルからAV女優へ
―デビュー作の販売本数が10万部を超えたそうですが、爆発的な人気のきっかけは堀江貴文さんがブログで原さんを取り上げたことだと言われていますね。
原 「私も予想がつかない事態でした。うちのメーカー(ソフト・オン・デマンド)が堀江さんにお金を渡してブログに書いて、と頼んだのかな?と思っていたくらいです(笑)。でも全くそんな事実はなくて、ただ単に堀江さんがブログで取り上げてくれただけだったんです。あっどうもすみませんって感じでした(笑)。」
―面識はあるんですか?
原 「当時はなかったです。ブログで採り上げて下さったことがきっかけで、雑誌で対談とかラジオ番組やトークイベントで御一緒させて頂くようになりました。」
―人気を保つために努力していることはありますか?
原
「特にないですね。もう本当になんでこんなことになっているのかよくわからなくて(笑)。
しいて言えば、当たり前なんだけど、ちゃんと自分の仕事に責任を持つことですね。常識のある普通の大人の行動をちゃんと続けていくことかなと思います。
例えば今私は黒髪でロングですけど、事務所の許可なくショートにしたりできないし、明日行きたくないから行かない、なんてできないし。そういう我儘を言わないことです。」
―AVデビューをしてから、恋愛に関する感覚は変わりましたか?
原 「変わったと思います。セックスって普通なら愛し合っている男女がするものじゃないですか。AV女優はそれを職業としてする人なので。AV現場に行ったらもうセックスってほんとに「作業」みたいなんです(笑)。「気持ちいいですか?」ってインタビューでよく聞かれるんですけど。女の子って特に気持ちが大事で、心から気持ちよくなるんですよね。セックスが下手でも好きな人とするセックスと、男優さんのプロフェッショナルなテクニックを持ち合わせたセックスとの気持ち良さは、違うかな。セックスと恋愛感情は別なんだって思うようになりました。」
―恋愛感情がなくてもセックスできるということですか?
原 「はい。私はAVのセックスとプライベートのセックスは違うものだと思っているから。本当に私の考え方は男みたいだと思うけど、「いやAVは仕事だから」って言いたいですね(笑)。」
―ということは同じ仕事としてセックスをする男優さんが恋愛対象になることもあるんですか?
原 「体先行ならありかな(笑)。やっぱり体の相性って大事じゃないですか。男優さんで気持ちいい人がいたら、とは思っているんですけど。実際仕事の時は完全に仕事に集中しているから、それはないですね。でもあってもおかしくはないと思います。」
―全くの他人とセックスするということは一般の女性には抵抗があると思うんですけど。
原 「人間というのは慣れてくる生き物なんです(笑)。最初の頃は確かに、ヌードの仕事をするだけで、大人が私を憐れんで見てるんじゃないか、お金のためにしてるんだと思われるんじゃないかって気にしていました。自分自身がヌードの仕事や、AVにすごい偏見持っていたので。女の武器を出す、という「女が」って感じがすごく嫌だったんです。でも脱ぐことは結構簡単でした。私の中では重大決断だったけど、慣れていくんです。別に心からセックスが好きでとか、ヌード見てほしいという思いではなく、「仕事だから」と思えるんですよね。なんか悲しい言い方なんですけど、そういう風に思えるから出来てる、という部分はありますね。 」
―恋人が他の人とセックスをしてもそれを浮気とは思わないですか?
原 「思わないです。自分がこういう仕事をしているから言えることだと思いますけど(笑)。昔は「風俗とか、奥さんの妊娠中に浮気するとかありえない!」って思っていたけど、今はなんかわかる気がします。だから私の仕事のこともわかってほしい(笑)。」
―原さんにとってどこからが浮気ですか?
原 「うーん、難しいですね。でも体ではないなってことがわかりました。気持ちが私にあれば、いいかなって思います。でもまあバレないようにやってほしいですね。特に子供ができたら。子どもにバレないように、私に悟られないようにしてくれたら、全然外でセックスしてくださって構わない(笑)。最後に戻ってくればいいな。」
―売れてくると撮影の内容や条件を指定できるんですか?
原 「本当に売れっ子さんならできると思います。あの男優指名とか、こういうのは嫌、とか結構言っている売れっ子さんもいるって聞きますね。でも私はほとんど言わないです。結構Mなんで、なんでも受け入れられるというか(笑)。あんまり汚いのとか、虫や動物とか出てくると無理ですけど。一般的なAVの内容なら、大丈夫です。作品を撮る度に面接があって、事前にちゃんと監督さんと話しているので、無理やりやらされているわけではないですし。それに、「できる?」って聞かれたら、できる気がしてしまうんですよね。それですごい悲しい思いをしたこともありますけど(笑)。」
―AVにも脚本ってあるんですか?
原 「あります。AVでもドラマ物があって、それは細かく設定が決まっています。例えばナースだとすると…一人二役をやったことあるんですけど、仕事ができるバリバリのナース原先生とみんなのアイドルナース紗央莉ちゃんみたいな感じで。その二人が患者さんに迫られる、とか実は患者とできていて夜な夜な病院のベッドでセックスしてしまうとか、ストーリーが決まっているんです。ちゃんと脚本にはここでフェラをして、こういう行為があって最後は顔射、みたいな設定が詳細に書いてあります(笑)。でも始まっちゃうと体と体のぶつかりあいなのでアドリブも多いですね。男優さんもプロだし、自分も気持良かったら動いちゃうし。セックスはわりと自由にできます。」
―相性の良かった男優さんっているんですか?
原 「男優さんって体に自信がある人や、性器が大きい人、持ちがいい人なんですよ。だからだいたい皆さん気持ちいいです(笑)。それにしても男優さんってすごいと思います。売れっ子男優さんは一日に何現場もこなすらしくて、「今男優さんが前の現場で遅れてて押してるんで待って下さい」ということがあるんです。え?そんなに出すわけ?って感じですね(笑)。」
「気になる人は?」という質問に、「普段からキュンキュンはするようにしています」と原さん。
―過去には結婚を考えた男性がいたそうですね。今は結婚願望はありますか?
原 「今願望は全くないです。当分は仕事を頑張りたいです。また結婚を考えると、私生活と仕事と、どちらも中途半端になりそうで嫌なんです。結婚するんだったら引退してからかな。本名も公開しているし、AV女優だという事実をと隠さずに今後も生きていく予定なので、そういうことを理解してくれる男性がいたら、いつか結婚したいです。」
―気になる人はいるんですか?
原
「特定の人はいませんが、キュンキュンはするようにしています(笑)。最近だと、秋葉原で駅員さんに道を聞いた時に、「あっちです」ってさっと答えてくれて「めっちゃかっこいい」って思いました(笑)。仕事に徹している男の人に惚れやすいみたいで、そういう時に感じるキュンキュンを大切にしています(笑)。
「AV女優になる!」って決めた時は、本気で一人で生きていこうと思っていたので、男性を避けていた時期があったんです。でも結局一人で生きていくのは無理でした。家族が認めてくれたし、友達も理解してくれて楽になったので、意識が変わったかな。最近は普通に男女隔たりなく遊んでいます。」
―家族や友人の理解を得ていますよね。もし結婚して、娘が生まれたとして、その子がAV女優になりたいと言ったら認めますか?
原
「やりたいのならやればいいと思う。私の親が自分の夢を子供に託して芸能活動をして欲しい、というミーハーな母親だったので、逆に私は子供に、強制させることはしたくない。子供の将来って親が左右する部分があるじゃないですか。私も物心ついた時はダンスをやらされたり、歌をやらされてたりしていたので。
例えば石川遼くんだって親がゴルフをやらせてなかったら絶対あんなに天才になってないし、安藤美姫さんとかも同じだと思います。親が決めて、その子の人生がそんな風に開花すればいいけど、うまくいかない場合もたぶん多くて、私もその一人だと思うんです。だから私は自分の子供には自分で考えて生きて欲しいですね。AV女優になりたいんだったら「どうぞ」って言うと思います。でも…意外に子どもができたらデレデレに愛しちゃって干渉しちゃうかも(笑)。わかりませんね。 」
―AV女優になって失ったもの、得たものはありますか?
原
「失ったものは、「仕事」かな。普通に考えてAV女優はゴールデンタイムに地上波に出演することは難しいし、NHKはたぶん出られない。大きい企業の広告の仕事もできない。AV女優になったことで、昔よりは私のことを知ってくれる人が増えたけど、AV女優じゃない方ができる仕事は多いです。あとは彼氏を失ったかな。普段出会う男の人は別にいいけど、もし自分が本当に愛する人ができた時に、その人が「AV女優をしていた子なんて無理」という考えだったら、悲しい思いをするかもしれないですよね。
得たものは、昔より私を知ってくれる人が増えたこと。仕事の意味ではアイドル時代よりはるかに充実した毎日を送れていること。出会いが増えたことですね。」
―最終的な目標は何ですか?
原 「AV女優をしていたことを隠さずに、芸能活動で生きていけたらいいなと思います。お芝居のお仕事をやれる人になれたらいいなと思っています」
―今、連続ドラマ『嬢王』に出演されていますよね。
原 「はい。すごく楽しいです。共演者の子が堀越高校時代の同級生なんです。彼女は普通に女優さんなんですけど。私は脱ぎのお仕事がベースですが、そういう風に共演できたりするとうれしいですね。」
―AV女優になって後悔したことは一度もないですか?
原 「後悔先に立たずなんで、ないです。AV女優になると決めた時は、今後失うものはいっぱいあるだろうと思ったんですけど、それでも現状から脱出したかった。フリーター時代のクソみたいな人生よりはまし、と思ったからこの世界に入ったんです。」
―今後もAV女優としての活動をするのでしょうか?
原 「はい。AV女優として私を知って下さる人が多いから、そこを邪険にはしたくないですね。セックスシンボルだと認識されるくらいプロフェッショナルな活躍をしていきたいです。同時に芸能活動も頑張りたい。全く別の世界だから、ちゃんと両立して続けていきたいと思っています。」
―次々と新しい人が出てくる、出入りの激しい世界にいて不安はありますか?
原
「すごくあります。最初の頃、「奇跡のAVデビュー」と言われていて、おこがましいと感じていました。AV業界にデビューする女の子はたぶんアイドルより多いと思います。AVって4カ月くらい経つと新人って言えなくなるんですよ。私は今年いっぱいは新人って言ってるつもりだったんですけど(笑)。あっという間にデビューして一年経っちゃいました。
流行語大賞とかも一年の終わり頃流行った言葉が選ばれることが多いじゃないですか。みんな年の始めのことって忘れちゃうでしょ? 私は1月デビューだったから忘れられてしまうのが怖くて(笑)。「原紗央莉?いたっけそんな人?」って言われることを凄く恐れていました。でも、怯えてても仕方ないし。私にできることを全力でする、それだけです。」
―他の人の作品を見るなど、研究はするんですか?
原 「しないですね。最初の頃から研究ってしたことないんですよ。最初はセックスがそこまで好きじゃなかったんで、人の作品を見てもきっと真似できないなと思って。1人でオナニーする時は見ますけどね(笑)。巨乳のお姉さんが凌辱されている姿を見るのが好きなんです。そんな感じなので研究はしないですけど、AV 女優のブログを見て、このAV女優は今どんな活動しているのか、どういう気持ちでいるのかなとかブログで動向を探っています。ファンみたいな感じです。全部が全部、本音じゃないでしょうけど参考にはなります。」
―誰のブログですか?
原 「最初は同じメーカー(ソフト・オン・デマンド)で夏目ナナさんとかをチェックしていました。それからあいださくらちゃんと板垣あずさちゃんとかも。さらに蒼井そらさん、引退された及川奈央さん、あとは今『嬢王』で共演している麻美ゆまちゃんとか吉沢明歩さんですね。たくさん見ています(笑)。長い間活動を続けていて、第一線で活躍している人、芸能活動もしている人が特に気になっています。他にもAV女優のブログランキングで調べたり、雑誌のグラビアで隣のページに載っていた子のブログを見たり、AV女優を見つけてはブログをチェックしています(笑)。」
―最後に読者の方にメッセージをお願いします。
原 「この本を生きていく糧にして、「こんな人もいるんだからオレはまだ大丈夫」と思って頂きたいですね。携帯小説と違ってドラマチックな展開は何もありません。私の21年の泥くさいちっぽけは半生が描かれているだけですが、読んでもらえたら嬉しいです。」
■ 取材後記
文章を書くのは初めてなので、本当に大変でした!と完成したての著書を手に取り、うれしそうな様子だった原さん。本名を公表してから、ファンの人に「まいちゃん」と呼びかけられることがあり、知り合いが増えた感じがするそうです。まっすぐに目を見て、丁寧にインタビューに答えて下さり、書籍から感じたイメージ同様の意思の強い女性なんだなと思いました。仕事に全力で取り組む姿勢、見習いたいです。(取材・記事/川口絵里子)
■原紗央莉さん
1988年1月1日生まれ。広島県出身。
2004年4月 七海まいとして芸能活動を開始。
2009年1月 原紗央莉となりAV女優へ。
処女作『芸能人 原紗央莉 奇跡のAVデビュー』はランキングサイトで連続1位を樹立。
脅威の10万本を売り上げ、奇跡のAV女優となる。
2009年8月、篠山紀信が時代を代表する最も美しい女性を撮り下ろした写真展「KISHIN:BiJIN(キシン:ビジン)」に登場。音楽PVやドラマなど活動の場を広げている。
解説
2009年1月、アイドルからAV女優へと転身し、10万本を売り上げ奇跡のAV女優となった原紗央莉の半生とは?! AV女優になった理由、家族や生い立ち、セックスの話など、人気ナンバーワンAV女優が実名を告白し本音で語る「ハダカの履歴書」。■インタビューアーカイブ■
第81回 住野よるさん
第80回 高野秀行さん
第79回 三崎亜記さん
第78回 青木淳悟さん
第77回 絲山秋子さん
第76回 月村了衛さん
第75回 川村元気さん
第74回 斎藤惇夫さん
第73回 姜尚中さん
第72回 葉室麟さん
第71回 上野誠さん
第70回 馳星周さん
第69回 小野正嗣さん
第68回 堤未果さん
第67回 田中慎弥さん
第66回 山田真哉さん
第65回 唯川恵さん
第64回 上田岳弘さん
第63回 平野啓一郎さん
第62回 坂口恭平さん
第61回 山田宗樹さん
第60回 中村航さん
第59回 和田竜さん
第58回 田中兆子さん
第57回 湊かなえさん
第56回 小山田浩子さん
第55回 藤岡陽子さん
第54回 沢村凛さん
第53回 京極夏彦さん
第52回 ヒクソン グレイシーさん
第51回 近藤史恵さん
第50回 三田紀房さん
第49回 窪美澄さん
第48回 宮内悠介さん
第47回 種村有菜さん
第46回 福岡伸一さん
第45回 池井戸潤さん
第44回 あざの耕平さん
第43回 綿矢りささん
第42回 穂村弘さん,山田航さん
第41回 夢枕 獏さん
第40回 古川 日出男さん
第39回 クリス 岡崎さん
第38回 西崎 憲さん
第37回 諏訪 哲史さん
第36回 三上 延さん
第35回 吉田 修一さん
第34回 仁木 英之さん
第33回 樋口 有介さん
第32回 乾 ルカさん
第31回 高野 和明さん
第30回 北村 薫さん
第29回 平山 夢明さん
第28回 美月 あきこさん
第27回 桜庭 一樹さん
第26回 宮下 奈都さん
第25回 藤田 宜永さん
第24回 佐々木 常夫さん
第23回 宮部 みゆきさん
第22回 道尾 秀介さん
第21回 渡辺 淳一さん
第20回 原田 マハさん
第19回 星野 智幸さん
第18回 中島京子さん
第17回 さいとう・たかをさん
第16回 武田双雲さん
第15回 斉藤英治さん
第14回 林望さん
第13回 三浦しをんさん
第12回 山本敏行さん
第11回 神永正博さん
第10回 岩崎夏海さん
第9回 明橋大二さん
第8回 白川博司さん
第7回 長谷川和廣さん
第6回 原紗央莉さん
第5回 本田直之さん
第4回 はまち。さん
第3回 川上徹也さん
第2回 石田衣良さん
第1回 池田千恵さん