『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣 コミュニケーション編』
著者:美月あきこ
出版社:祥伝社
定価(税込み):1,470円
ISBN-10:4396613849
ISBN-13:978-4396613846
第28回は、前作『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣』がベストセラーとなり、2011年2月1日に刊行された新刊、『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣 コミュニケーション編』も好評の人財育成コンサルタントで、元CAでもある美月あきこさんです。CAとしての16年のキャリアの中で、主にファーストクラスの乗客から数多くのことを学んだという美月さん。ファーストクラスの乗客とは、一体どのような人々なのでしょうか。
■ ファーストクラスの乗客は見た目でわかる?
―本書『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣 コミュニケーション編』は美月さんがCAをされていた頃に出会ったファーストクラスのお客さんを例に、「人たらし」になるためのコミュニケーション方法を紹介しています。前作『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣』はベストセラーとなりましたが、今回「コミュニケーション」に特化した本を書かれた理由をお教えいただけますか。
美月 「前回は“習慣”がメインで、“こういう人がファーストクラスに乗っていらっしゃるんですよ”ということをお伝えしました。今回は“では、どのようにしたら、ファーストクラスに乗るような成功者のコミュニケーション・スキルを手に入れることができるのか”という、「実践編」の意味で書きました」
―本書によると、ファーストクラスのお客さんの中でも、特に創業社長の方々に「お手本にしたい」方が多かったそうですが、こういった方々は一見して経営者だとわかるものなのでしょうか。
美月 「事前にお客様の情報をいただいているので、どんなお客様が搭乗されるかはわかるんです。そのうえでドアサイドに立つのですが、ファーストクラス・ビジネスクラス・エコノミークラスのお客様がシャッフルされていても、ファーストクラスのお客様は見ただけでわかりますね。歩く姿勢がとても綺麗なんです。また、必ず私たちに視線を合わせて下さるのも、特徴の1つだと思います」
―創業社長の方々はどのように「人たらし」たるコミュニケーション・スキルを身につけていったとお考えですか?
美月 「元々、人とのコミュニケーションが得意だった方もいるでしょうし、社会でもまれながら人間関係の繋がりの大切さに気付かれて、コミュニケーション・スキルを磨かれた方もいると思います。どなたがどちらという結論は出せませんが、やはりビジネスを拡大・発展させて行くには様々な人の力が不可欠だと思いますので、創業社長の方々がコミュニケーションに非常に気を使っていらっしゃるというのは接するだけでわかりますね」
―そのような方々とのコミュニケーションや、彼らの振る舞いの中で、美月さんが印象に残ったのはどのようなものでしたか。
美月 「飛行機にお乗りになる時に、こちらよりも先に挨拶をしてくださったり、コートをお預かりする時にこちらが持ちやすいように渡してくださったり、そういった配慮ですね。
詳しくは本書をご覧頂ければと思いますが(笑)、皆様とても気持ちの良いコミュニケーションをされます」
■ ファーストクラスの乗客の「困った」エピソード
―長くCAとしてご活躍されていらっしゃると、そのような素晴らしい方々だけではなく、少し困った振る舞いをするお客様にも出会うと思います。美月さんご自身の中で、印象に残っている困ったお客様はいらっしゃいますか?
美月
「そうですね…。『靴下を履かせてくれ』と言われた女性のお客様は、とても印象に残っていますね。
シートを後に倒している状態だったので足元が遠く、靴下を履くのが大変だったんです。聞き間違えたのかと思って私が思わず訊き返すと『靴下よ、靴下。わからない人ね。後ろの○○を呼んできてちょうだい』とおっしゃって、お付きの方を呼び出したんです。お付きの方はエコノミークラスだったのですが(笑)」
―その方が靴下を履かせた、と。
美月 「そうです。二人いたんですけど、その二人が片足ずつ(笑)」
―ファーストクラスに乗る方々というのは、フライト中はどのようにして過ごされるのでしょうか。
美月
「リラクシングウエア(機内でくつろぎやすい部屋着)に着替えてから、本を読まれる方が多かったです。インプットに時間を充てているんだなと感じました。
こんなことを言うと怒られてしまいそうですが、エコノミー・ビジネス・ファーストで、カーテン一枚隔てて世界が違うんだなというのを感じましたね。エコノミークラスは観光でお乗りになる方が多いので、和気あいあいとして楽しい感じ。ビジネスクラスは仕事モードで、パソコンに向かっている方が多かったです
」
―CA時代の一番困ったエピソードを教えていただけませんか?
美月 「機内食にまつわるエピソードなのですが、機内食は製造してから時間が経っているのでパサパサだったりして、どうしても地上で食べるお食事にはかないません。それがお気に召さなかったお客様にテーブルクロスごとひっくり返されたことでしょうか。“こんなもの食べれるか”“よくこんなもの恥ずかしげもなく出せるね”とも言われました」
―その時はどんなご対応をされたのでしょうか。
美月 「大変申し訳ございません、と謝ります。お客様はおいしいものを召し上がってこられてお口が肥えていらっしゃるのでお口に合わず申し訳ございません、ということを言うとお怒りが和らいだようでした。クレームをつけられたときは、お客様のおっしゃられたことを一旦受け入れるというのが大事です」
―CAというと、女性が多い職場というイメージがあります。そのような職場ならではの、人間関係の難しさはありましたか?
美月 「上下関係がはっきりしている職場だったので上(先輩)の方を立てないと、というのはありましたね」
―女性が多い職場では、ミスをするとかなりきつい口調で怒られるというイメージがあります。
美月
「そういう方もいらっしゃいましたね。客室内でお客様に聞こえるように怒る方もいましたし、ギャレー(飛行機内で食べ物の調理や準備をする場所)の中やお手洗いの陰で怒る先輩もいました。フライト中なのに、今すぐ飛行機から降りなさいと言われたこともありますし。
お客さんの前で怒られるとプライドがズタズタになります。相手のプライドを傷つけたら反抗心しか芽生えないんだなというのは感じました
」
―そういった、いわゆる“恐い先輩”に対して、美月さんはどう接していらっしゃったのでしょうか。
美月 「社歴の浅い時はいろいろ失敗をして怒られたりしていました。だから、『今日は宜しくお願いします。ご一緒します○○です。前回はこんな失敗をしてしまいましたけども、あれから○年経って成長していると思いますので、よろしくお願いします』というカードを書いて、フライトの前に読んで頂くように、その先輩の目に必ずつくところにそっと置いておいたんです。そうすると、すごく恐くて有名だった先輩も、『今日は見ておいてあげるから』と言ってサポートしてくださるようになりました。こういうことは人間関係でとても大切なことなんだなと思いました」
―それはかわいい後輩だと思うでしょうね。
美月 「思うでしょうね、きっと(笑)仕事はできないけど面倒見てやろうかな、という位に思ってくださっていたと思います。廊下ですれ違った時などに、『元気?』とか、『上司誰になった?』とか声をかけて下さるようになりましたから。そういうことは心強かったです」
―今、美月さんが、ご自身が経営されている会社のスタッフを叱る時に心がけていることはありますか?
美月
「いつも助かっているということは常に言うようにしています。私の業務上のフォローを彼女たちがしてくれているので、それはすごく助かっているということを普段から言うようにしています。
これは口頭で伝えるのももちろんいいですが、カードやメモで伝えるとより効果的だということもCA時代に経験しました
」
―ビジネスの場面では、あまり好きになれない人とでも業務上話さなければならないこともあります。そういった人とでもうまくコミュニケーションをとるコツがありましたら教えてください。
美月
「たまたま居合わせた人同士がお仕事するわけで、好きな人同士が徒党を組んでいるわけではないので、最初からうまくいくと思ったら大間違い、夫婦や親子でもケンカをするんですから。だから、コミュニケーションが取れなくて当たり前だと思っていた方がいいと思います。
私は、『恐い先輩』のエピソードで申し上げたように、カードを使って自分の気持ちを伝えています。また、メールを送る際には事務的になりがちなので、あまりビジネスライクになり過ぎないようにしています
」
―ところで美月さんがCAになろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
美月
「小学校3年生の時に初めて飛行機に乗ったのですが、機体の右側に整備士の方々が並んで、プッシュバック(出発する航空機を滑走路に向かわせるため、特殊車両を使い航空機を後ろへ押し出して移動させること)している飛行機に手を振るんですよ。それを見た時にすごく感動して空港の関係者になりたいと思ったのが最初です。
当時は空港で働いているお姉さんや、整備士やマーシャラー(着陸した航空機を駐機場へ誘導する職員)の方もカッコイイと思っていて、航空関係の仕事全般にすごく憧れていました。もちろん、CAも航空関係を支える仕事の1つですから、自然に憧れていました
」
―他の職種には目がいきませんでしたか?
美月 「デパートとかホテルとか、人と接する仕事はいいなと思っていましたね。実家が自営業だったこともあって、私も会社勤めはしても、最終的には事業をしたいなと思っていました。だから、何の仕事をするにしても人付き合いを学べる仕事が良かったんです」
―そうすると、CAというのは航空関係の仕事でなおかつ接客業であるわけですから、見事、夢がかなったというわけですね。
美月 「そうですね。航空業界にも入ることができましたし、CAになることもできましたし、また成功者の方々にも会うことができましたので良かったと思います」
―本書をどんな方に読んでほしいとお考えですか?
美月 「やはり、コミュニケーションに悩んでいらっしゃる方ですね。コミュニケーションはすごく難しいとか、人付き合いは大変という先入観をお持ちの方は多いと思いますが、案外ハードルは低くて、ちょっとした気づきや心がけでコミュニケーションはうまくいくということを知っていただきたいです。この本で取り上げたファーストクラスのお客様にしても、すごいことをやっているわけではなく、私達が普段忘れている基本のキをしっかりやっていらっしゃるのだということをお伝えしたいです」
■ 取材後記
ビジネスエリート達のコミュニケーションスキルを日々吸収し続けてきただけに、美月さんは話している相手をとてもすがすがしい気持ちにさせてくれる人だった。難しいものだと思われているコミュニケーションだが、本書を読むと決してそうではなく、日頃の小さな心がけこそが大事なのだと気づく。我々取材する者にとって勉強になる点の多い本&インタビューだった。
■美月 あきこさん
大学卒業後、日系・外資系双方の国際線キャビンアテンダント(CA)として活躍する。現在は女性のキャリアを支援するコンサルティング会社を経営。CA経験者のポテンシャルを活かした企業向けマーケティングサービス「空飛ぶマーケッター」、接遇研修などを行なうCA-STYLEを主宰する。自身も人財育成コンサルタントとして、全国各地で年間180回以上講演・研修を行なう。本書は、ビジネスエリートの「習慣」を詳しく紹介しベストセラーとなった『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣』、待望の第2弾。
著書に『愛されて売る 魅せる販売術』(阪急コミュニケーションズ)、『伸びる人、伸びない人が一瞬でわかる「見抜き力」』(ベストセラーズ)など。
●『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣』特集ページ
http://www.sinkan.jp/special/first_class/index.html
『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣 コミュニケーション編』
著者:美月 あきこ
出版社:祥伝社
定価(税込み):1,470円
ISBN-10:4396613849
ISBN-13:978-4396613846
解説
ベストセラーとなった『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣』、待望の第2弾!今回はコミュニケーションに特化し、ファーストクラスに乗るビジネスエリート達が使っているコミュニケーション術を余すところなく紹介しています。■インタビューアーカイブ■
第81回 住野よるさん
第80回 高野秀行さん
第79回 三崎亜記さん
第78回 青木淳悟さん
第77回 絲山秋子さん
第76回 月村了衛さん
第75回 川村元気さん
第74回 斎藤惇夫さん
第73回 姜尚中さん
第72回 葉室麟さん
第71回 上野誠さん
第70回 馳星周さん
第69回 小野正嗣さん
第68回 堤未果さん
第67回 田中慎弥さん
第66回 山田真哉さん
第65回 唯川恵さん
第64回 上田岳弘さん
第63回 平野啓一郎さん
第62回 坂口恭平さん
第61回 山田宗樹さん
第60回 中村航さん
第59回 和田竜さん
第58回 田中兆子さん
第57回 湊かなえさん
第56回 小山田浩子さん
第55回 藤岡陽子さん
第54回 沢村凛さん
第53回 京極夏彦さん
第52回 ヒクソン グレイシーさん
第51回 近藤史恵さん
第50回 三田紀房さん
第49回 窪美澄さん
第48回 宮内悠介さん
第47回 種村有菜さん
第46回 福岡伸一さん
第45回 池井戸潤さん
第44回 あざの耕平さん
第43回 綿矢りささん
第42回 穂村弘さん,山田航さん
第41回 夢枕 獏さん
第40回 古川 日出男さん
第39回 クリス 岡崎さん
第38回 西崎 憲さん
第37回 諏訪 哲史さん
第36回 三上 延さん
第35回 吉田 修一さん
第34回 仁木 英之さん
第33回 樋口 有介さん
第32回 乾 ルカさん
第31回 高野 和明さん
第30回 北村 薫さん
第29回 平山 夢明さん
第28回 美月 あきこさん
第27回 桜庭 一樹さん
第26回 宮下 奈都さん
第25回 藤田 宜永さん
第24回 佐々木 常夫さん
第23回 宮部 みゆきさん
第22回 道尾 秀介さん
第21回 渡辺 淳一さん
第20回 原田 マハさん
第19回 星野 智幸さん
第18回 中島京子さん
第17回 さいとう・たかをさん
第16回 武田双雲さん
第15回 斉藤英治さん
第14回 林望さん
第13回 三浦しをんさん
第12回 山本敏行さん
第11回 神永正博さん
第10回 岩崎夏海さん
第9回 明橋大二さん
第8回 白川博司さん
第7回 長谷川和廣さん
第6回 原紗央莉さん
第5回 本田直之さん
第4回 はまち。さん
第3回 川上徹也さん
第2回 石田衣良さん
第1回 池田千恵さん