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新刊JPトップ > 特集 > 新刊JP 奥野宣之 『だから、新書を読みなさい 情報を逆張りでインプットする技術』

著者プロフィール

奥野宣之 (おくの・のぶゆき)

1981年、大阪府生まれ。同志社大学文学部卒業後、専門紙記者を経て現在、専業作家。
2008年、独自の情報整理術をまとめたデビュー作『情報は1冊のノートにまとめなさい』 『読書は1冊のノートにまとめなさい』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)がベストセラーとなり、一躍脚光を浴びる。 大学生のときに新書の魅力に取りつかれて以来、単行本の3倍は新書を買うという 「新書オタク」の道を歩みはじめ、新書を仕事や日常生活に生かすための「新書ザッピング術」を考案する。

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■ 奥野宣之公式ウェブサイト

インタビュー

―本書は前作『読書は1冊のノートにまとめなさい』から9ヶ月ぶりということで、 読者にとっては待望の新刊になると思います。 この期間、「次はどんな本を書くんですか?」と聞かれたこともあったのではないですか?

「そうですね。実はかなり前からこの本は書くことは決まっていたんですが、 仕事が忙しかったりして作業的に進まない時期もあったので、結構遅くなったなという印象はありますね。 ただ、1年に5冊、6冊も書いていたら、それはそれですごいわけで(笑)。 自分にとって1年に2、3冊が良いペースだと思います」

―今回は、「新書を読んで多角的なインプットを行う」ということをテーマにしていらっしゃいます。 こうしたテーマにしたのは何故なのですか?

「もともとは編集の方とお話していたときに出たアイデアなんです。 僕は元から趣味で新書をよく読んでいたのですが、ふと、新書ってたくさん出版されているけれど 実は新書というものを俯瞰して理解している人はあまりいないのではないかと思ったんですね。 岩波新書のファンとかはいますが、基本的に書店の棚にはジャンルもバラバラで並んでいて探すのも難しかったりします。

でも、現実に新書はロングセラーで良い本も多いですし、もちろんビジネス書みたいなテーマの本もあるわけです。 だから、新書を効果的に使うことが、ビジネスマンにとっての大きな武器になるのではないかという ところから始まったんです。新書を上手く使うことで、物事を多角的に考えるための示唆を受けたりとか、 ほかの人とインプットを差別化したり、自分の頭で考える習慣がつけられると、 そういうことが可能になるよということを言いたかったんですよね」

―本書にも書いてありますが、新書はその分野の知識を得るための入門書としても非常に有用だと思います。

「そうですね。ただ、今は入門書だけではなくて、ルポや評論などのジャーナリズムだったり、 あるメッセージを発信するための提言本だったり、それこそビジネススキルだったり、 いろいろなテーマが新書として出ています。この新書の広がりをビジネスに生かすことは可能ですし、 必ずやビジネスマンにとって考える力や発想の違いを生むためのツールになると思います」

―新書を読む一番のメリット、魅力はどこにあると思いますか?

「一番のメリットは、やはり安いことですね。安いから何冊も買える。 あと、装丁も簡素だし、ページ数もそれほど多くないものが多いからとても読みやすくて、 新しいジャンルにも挑戦しやすい。そして、それによっていろんな物の見方を得ることができますよね。 それと、僕自身はビジネスマンとして他の人と差別化をはかるためには、 ビジネス書だけではなくて他の分野から知見を取り入れることも重要だと思うんですね。 この本では『インプットの逆張り』と言っていますが、誰も通らない小道を切り開いていくように、 自分だけの新しい知識やものの見方を取り入れていくという感じで。 だから、本書はビジネス書にもの足りなさを感じている方や、本に書いてあることを実践しても なかなか上手くいかない方にとっては、新しいソリューションになると思います」

―本書の中では「新書ザッピング術」という読書術を提唱されていますが、これを思いついたきっかけは何ですか?

「たくさん新書を買っていきますよね。すると、同じテーマの本が溜まってくるんですよ。 そして、ある程度溜まったところで本をひっくり返して読んでいるときに気づいたんですが、 同じテーマの本でも思想や主張が違っていて、それまでの物の見方が揺さぶられたりとか、 二次元だったものが三次元になったりとか、そういう軸が増えていく、テーマが立ち上がる感触を覚えたんですね。 それって、例えば新聞記者が複数の人に同じ質問したりしますよね。それと同様なんですよ。 記者の場合は情報の裏取りをするという意味合いもあるんですが、複数の人がいろいろなことを言うなかで、 本質に迫っていくことが可能になるんです。

だから、『AはBである』と書いてある本を読んで、『AはBなのか』と思うのではなく、 『AはCである』と主張している本も読んだりして、そういうところから問題を掘り下げて、 自分の考えを作り上げていくことが重要だと思いますね」

―確かに、「AはBだ」を盲目的に信じてしまうのは危険なことですよね。

「そうですね。僕自身、情報ソースが1つしかないということに対して警戒感があるんです。 もしかしたら、その人が勘違いしているだけかも知れないじゃないですか。 だから、『自分の頭で判断するために、実用品として新書を使っていこうぜ』というふうに言いたいんですね。 それと、売れているビジネス書を読んだり、勉強会とかでみんなで同じ本を読んで同じ内容を吸収していたりしますが、 同じことをしていてもなかなか差別化できないですよね。だから、自分のニーズに基づいてやっていきましょう、と。 自分にとって本当に必要なことであったり、本当に興味のあることを探して、そのニーズにあった本を読むことが重要だと思います。 あと、これはビジネスでは当たり前の考え方だと思うんですが、 皆で同じ道に進んでいくと1人あたりの取り分がすくなくなるんですよ(笑)。 だから、皆が右向いたら自分は左向いて逆に賭けておこう、という精神を持つということですね」

―最近、新書は多くのレーベルができていて、 質の低下が叫ばれていると思います。良い新書と悪い新書の見分け方はありますか?

「まずよく言われる意味での「質の低下」なんですが、僕はそんなに悪いことだとは思っていません。 質の低下というよりも、ジャンルに幅が出てきて大衆化が進んだということだと思います。 ただ、その分、どの本を選べばいいのか分かりにくくなったとは思いますね。 本書には、その選び方のソリューションを書いています。 で、具体的な良い新書の選び方の話ですが、基本的にはロングセラーを選ぶことですね。 本書の中で奥付を見るなどと書いていますが、いつ出版されて、 今、何刷かというところで判断すると良いと思います。 あとは岩波ジュニア新書のように「入門」に重きをおいて作っているところもあるので、 そういう視点で買っても良いと思います。あと、僕は『はじめに』や目次の部分をよく見るのですが、 そこで著者が読者に歩み寄っているか、著者が自分のテリトリーを出ていないかが分かります。 やはり良い新書は「わかってもらうためなら何でもします」という具合に読者に歩み寄っていますよね。 僕自身は客観的な新書の良し悪しって実は考えても意味がないものだと思っていて、 やはり読み手がその新書に合っているかどうか、それが基準だと思います」

―それは自分の思想と新書がマッチしているかどうか、ということですか?

「そうです。自分のニーズに応えてくれる本であれば、どんなに世間の評判が低い本でも、 その人にとって一番良い本なんです。だから、まずはとにかく主観的に買って読んでみることが良いと思います」

―本書をどういった方々に読んで欲しいと思っていますか?

「まずはビジネス書を実践しても上手くいかなかったり、物足りなさや違和感を覚えたりする方ですね。 あとは、セミナーや勉強会に行きたいんだけど、お金も時間もないという方ですね。 3000円もあれば何冊も買えるので、コストもあまりかかりません。 そういう意味では地方のビジネスマンの方にもお勧めです。 小さな書店ですと、新刊もすぐ棚が変わってしまいますが、新書は長く置かれていると思います。 あとは『新書が好きだ!』という人にも読んでもらいたいかな。というのも、 先ほど話したように新書もジャンルが幅広くなってすぐ「レベルが下がった」といった議論に なりがちなんですが、そうは言っても新書が高尚だった時代は返ってきませんから、 今ある新書をどう使っていけばいいのか、それを考えるための一冊になればいいなと思いますね」

―では、最後に新刊JPの読者にメッセージをお願いできればと思います。

「新書ってつかみどころがないと思われがちなんですが、実はそうではなくて、 少し見方のコツをつかめば、ビジネスシーンにおいて、 自分を他人と差別化していくための強力な武器になると思うんですね。 そういうことを本書で言いたかったので、是非読んで頂ければと思います」

―ありがとうございました。

(記事・取材/金井元貴)