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『オレが君の人生を変えてやる!~整体師という職業を超えて~』
整体のイメージを変える
―まずはじめに、整体師という職業についてお聞きしますが、この業種の現状と、今後の展望を教えていただけますか?
子安 「整体師個々人ということですと、まだまだ旧態依然としたものが残っていると思いますね。
整体師という仕事は縁の下の力持ちといいますか、人の体を陰からサポートする仕事です。その考えがベースにある必要はありますが、私はそれ以外の部分、たとえばパフォーマンスや見た目も意識しています。
整体業全体としても昔と比べてそんなに大きな変化はありませんが、私たちが行っている活動やそのPRを見てくださったりした整体業界の方々は、10年前と比べると明るくなりましたし、垢ぬけたのかなとは思っています。整体業そのものが少しずつボトムアップしているのではないでしょうか」
―「整体師」という言葉にどこか地味で暗いイメージがあるのかもしれませんね。そういう意味では本書に書かれている『ボディーデザイナー』という言葉は適しているのではないでしょうか。
子安 「そうかもしれません。イメージってすごく大事じゃないですか。マッサージ師とか、鍼灸師、整体師というのは、やはりどこか暗いイメージがある。しかし、インテリアコーディネーターとか空間プロデューサーには、実際の業務は内装屋だったとしてもクリエイティブなイメージがありますよね。私たちの業界もそういった言葉のイメージも含めて仕掛けていかないといけないと思っています。言葉の力は大きいですよ」
―「整体に行く」というのと「ボディデザインをする」というのでは全然違いますね。整体業界全体のイメージを変えていく上で、関連するそれぞれの言葉も変わっていくのでしょうか。
子安
「そうですね。『ボディデザイン』以外にも『ボディメンテナンス』という名前を出していったこともありますし、『小顔デザイン』という言葉を使ったこともあります。ネーミングイメージは大きなポイントになるのではないかということで、この10年はいろいろな名前を付けてきましたし、それによってそれぞれ(施術・サービス)の価値(モチベーション)も上がってきたのではないかと思っています。サービスや商品の中身を工夫するだけでなく、見た目やスタイル、ネーミングなど、すべてを変えていかないことには、新しいものを創り出すことは難しいのではないでしょうか」
―整体というものを『整体』という言葉を使わずに新しい文化として定着させていく努力をされているのかと思いますが、『ボディデザイナー』というお仕事では過去にどんなものがありましたか?
子安 「『ボディデザイナー』という言葉を聞いてどんな連想をするかというと、ファッションですとか美容とか、そういったことだと思うんです。でも過去に整体業がそちらのカテゴリーに食い込めたことは、私の知る限りありません。
一昨年の東京ガールズコレクションをはじめ、私たちはいろいろなコレクションからオファーをいただいておりますが、ファッション業界の方々からしたら、それは『ボディデザイナー』であれば期待、夢が持てる」ということだと思うんです。『整体師』だったらNOだったかもしれません。
また『トレーナー』という言葉はスポーツ界に根深いものがありますから、『ボディトレーナー』というネーミングならプロスポーツ選手から引きがあるのかもしれませんし、逆に『整体師』という名前なら、地域に根付いた町の治療院としては適しているのかもしれません。このように、さまざまなニーズに合わせて言葉を作り出していけばいいのだと思います」
―そういったネーミングでしたら、整体という仕事に若者が憧れたり、職業自体の人気も上がるのかもしれませんね。
子安
「実際に整体の業種はすごく幅広いんですよ。本にも書きましたけど、食事一つでも体のバランスが悪く、代謝や血液循環も良くない状態ですと、栄養の吸収率が悪かったりおいしくいただけなかったりします。ところが食前にマッサージを30分受けると、食欲はおそらく5倍くらいになるのではないかと思います。それは胃の蠕動運動がおこるという医学的な影響もありますし、すっきりするという気持ちの面もあります。整体をやったあとの食事は栄養分解率もいいし、おいしく食べられる。
洋服を着ることに関しましても、骨盤矯正でお尻を上向きにしてから着たタイトスカートと、骨盤がゆがんだまま着たタイトスカートでは見栄えが全く違います。
私たちの業種はあらゆることに食い込んでいけると思うんですよね。だからこそ、治療院という枠を超えて、さまざまな活躍の場を作っていかなければならないし、そこでの成功事例を作っていかなければいけないと思っています」
経営者として
―次に、経営者としての子安さんについてお聞きしたいのですが、今まで会社経営をされてきてつらかった経験や楽しかった経験がありましたら教えてください。
子安
「『こうなるべきだ』という絵を描いてから、それに向かって歩んでいくというのが私のやり方。その絵と現実の間にズレがでた時はつらいです。妥協ができない性格なので、ズレは無理矢理にでも修正して自分の絵どおりにもっていくことを今まではやってきましたが、小さなズレはともかく、プラスマイナス5%以上のズレがある場合もあるわけです。もちろんすべてを私がやっているわけではないのですが、自分がやっていないだけにどこにあたっていいのかわからないし、どこをどうしていいのかがわからない。そういう時はいたたまれない気持ちになりますね。
楽しかった瞬間はまさに逆で、戦術・戦略が描いたとおりに進んだ時。それと、ここ数年は人間が成長していくのを見るのが快感です。以前は自分と自分の会社のことだけでしたが、今は部下ですとか、周囲の人の満足した顔を見ることが楽しいですね。部下が成長してお金を稼ぐようになったり、部下を持つようになったりする。その部下から信頼されたりしようものなら、自分のことの100倍くらいうれしいですよ」
―本を読んで、人の成長を信じ抜く姿勢が素晴らしいと思いましたが、社員を実力を伸ばすために注力している点はどんなところですか?
子安
「僕の教育理論は、最後まで面倒を見抜くこと。部下に何か仕事を任せるとしたら、任せた本人以上にその仕事を細かくチェックしたり、気を配ります。その過程で与えた注意なり指導なりがあるからこそ、成功したときに一緒に喜べるんです。だから放置はしないし、立場を与えるだけ、ということもしません」
―人によっては、監視されているように感じて『放っておいてほしい』などということを思う人もいるのではないでしょうか。
子安
「僕に向かって面と向かってはいえないでしょうから、それは社員たちに聞かないとわからないです(笑)
でも“監視されているみたいでうざい”と思われても仕方ないかな、とは思いますね。だからそう思っている人間はいるかもしれません」
―任せた仕事にどれくらい干渉するか、というさじ加減はすごく難しいのではないですか?
子安
「あまり見ていると『俺のことを信用してくれていないの?』と思われるかもしれませんが、やはり親心といいますか、どうしても心配になって見てしまうんですよね。ただ、それをあまり言わずに我慢するようにはしています。だからあるタイミングで注意したりする時にはかなりフラストレーションが溜まっていたりしますよ(笑)」
―子安さんから見て、成長していく社員に共通している特徴はなんですか?
子安
「今起こっていることや与えられたミッションに対してがむしゃらにアタックしていく人間ではないでしょうか。よく、目先のことばかり考えている人間は計画性がないと言われますが、若い人に関して言えば、目の前のミッションに向かって死ぬ気で突き進んでいくエネルギーがある人間は伸びると思います」
―愚直なことが共通点、ということでしょうか。
子安 「そうですね。技術的なことについてはひとつずつ教えていこうと思っているので、必要なのは素直な気持ちです。とりあえず今を一生懸命何かに打ち込める人間なら、気づいたら2年後にはスキルはついていますよ」
―最後に、読者の方にこれだけは伝えたいということがあるなら
子安
「人間はえてして楽な方向に答えを持っていきがちですが、そちらの考えだけではなくて、『いや、もしかしたら』という考えを持ってほしいです。不景気の時に『不景気だから就職するのは難しい』と考えるだけではなくて『いや、これって実はチャンスなのかもしれない』と考えてみる。この『いや、もしかしたら』という言葉があるとなしで、可能性が全く変わるんですよね。一番悪いのは現状に甘んじることと妥協すること。自分の可能性を限定しないでほしいです」
(記事:山田洋介)
書籍名:オレが君の人生を変えてやる!
~整体師という職業を超えて~
著者名:子安 裕樹
出版社: ワニプラス
価格:1,000円
ISBN-10: 4847018796
ISBN-13: 978-4847018794
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