プロローグ
「お前だけには、手を貸したくない!!」
もしあなたの上司が、あなたにこう思っているとしたらいかがでしょうか?
「そんなこと関係ないよ」で済みますでしょうか?
たぶん多くの場合は、済まないと思います。
例えばあなたが、自分の上司に、
「このやり方がわからないのですが、知恵を貸してください」
「これを期日までにやるために、人を出してください」
「こんなイベントをやりたいので、予算をつけてください」
「このことを協力してほしいので、他部門との調整をお願いします」
「こんな勉強会に2日間出たいので、許可をください」
「こんな機材が必要なので、購入してください」
とお願いしたとしましょう。
その時、毎回のように、「何でそんなものいるの?」「今は難しいよ」「まあ考えとくわ……」と渋られたとしたらどうでしょうか?
これでは仕事にはなりませんし、精神的にも相当な苦痛を感じることでしょう。
逆に、
「お前が何かやる時は、俺が必ず一肌脱いでやる」
と思っていたとしたら、いかがでしょうか?
先のようなお願いに対して、いつも即座に「わかった、すぐ対応する」「いいよ、応援するから頑張れ!」「よし、後は俺に任せとけ」と言ってもらえるような状態です。
これは最高ですね。
すべての仕事がやりやすくなるし、精神的にも本当に楽になるでしょう。
これくらい自分の仕事や精神状態にまで、大きな影響が起きるのが「上司との関係性」なのです。
しかし意外と「この上司との関係性について、本気で考えない部下側の人が多い」ことに、本当に驚かされます。
では何を考えることが、「上司との関係性を良くする」ことになるのでしょうか。
それは次の質問について考えることです。
「自分が上司だったら、どんな部下と働きたいか?」
本書は、その「上司から一緒に働きたい」と思ってもらえる力のことを、「部下力」と名づけ、それを高めるための参考書です。
もしあなたが「部下力が大切だ」と思われるならば、本書はきっと役に立つはずです。
申し遅れましたが、私は株式会社エンパワーリングの上村光弼と申します。
現在の肩書きはメンタル&コミュニケーション・コーチ、主に企業の人材教育の仕事をしています。
その中でも一番多いのが、幹部・管理職対象のリーダーシップ・コミュニケーション・モチベーション系の教育です。そんな仕事柄、この本を手に取ってくださった「皆さんの上司たち」を延べ何万人も見てきました。
また20代の頃は、ベンチャー企業の営業チームでエリアマネージャーをしていました。
さらに30代では、日本メンタルヘルス協会という心理カウンセラーの団体でカウンセリングや心理学講師も務めてきましたので、「人間心理の専門家」でもあります。
ですから「自分のマネージャー経験」「心理カウンセラー経験」「人材教育の専門家としての経験」という3つの視点から、「いかにすれば部下力を高めることができるのか」についてのヒントをご紹介できると思います。
またさらにいうと、私は長い間、この仕事を通じて、「ビジネスで成果を上げられる人と、そうでない人の違い」を見続けてきました。
そして、その最大の違いのひとつは、「人から協力してもらえる力」があるか否かであるということがわかりました。
そういう意味では、本書は「上司からだけではなく、多くの人に協力してもらえるようになるヒント集」ともいえます。
ぜひ本書を通じて、そのための姿勢・マインドセットから、仕事の仕方・コミュニケーションの取り方にいたるまでヒントを得ていただければと思います。
それによって、先のようなことを上司に依頼した時に、すぐに許可・支援・協力が得られる確率がドンドン上がることでしょう。
つまり、「あなたが会社の中でやりたいことをする自由を獲得する」ことになるのです。では早速始めていきましょう!