《P71-P72》
行政の仕組みを変えたい。だけど行政は内部からは変われない。だから、政治家として行政を変える道を彼は選んだ。
山内さんが政治の道へ進むことになったもう一つの直接的な理由は、NGO時代のロビー活動にあった。議員会館を回り、やっと会ってもらえた国会議員に五分で問題を説明して動いてもらう。そんなやり方で、外務省や法務省を変える活動をしてきた。
「だけど人にやってもらうより、もう自分でやったほうが早いと思って。国会議員になるのも一つの手だなと」
山内さんは、政治とNGOという二つの領域の間にはあまり壁を感じなかった、と言った。アジアの国々では、NGO経験のある政治家が数多く活躍している。彼らは学生運動からNGOへ入り、高い政治意識を持ったまま大人になり、大臣になって自分たちの国を動かしている。社会運動をしている人が政治に関かかわっていくこと。それが当たり前という認識が、山内さんにはあった。
「最初から政治家になりたいっていうのは、僕は邪道だと思います。大卒で政経塾行って国を動かしたいとか、議員目指して秘書から始めてというように、政治家になることが目的になっている人が、永田町にはたくさんいる感じがします。『世間を知ってから言えよ』って思いますね。問題を解決したい。そのためには政治家っていうオプションも一つにはあります、というほうが健全です」
「民間でもできることはたくさんあるわけで……」
「そうそう、だからNPO(非営利組織)に行ってもいいし、学者やメディアになって問題を追及する方法もある。僕は人生のある時期にはNGOで問題解決に努力して、ある時期は政治家でもいいし、いろんなアプローチがあっていいと思う。それで、たまたま今僕は政治家としてやっているわけです」