《P61-P62》
一つはっきりしていたことは、彼が私に対して腹を立てているということだった。彼はどんどん早口になった。
「何がやりたいんですか! と言われると、さまざまなことをよくして、少しでもいい生活、安心できるような生活ができる世のなかにしたいなと思っています」
「少しでもよい生活というのは、国民目線で考えて……」
「国民目線?」
彼は上から言葉をかぶせ、いらだちを露にしながら、どういうことですか、それ、と言った。
「じゃなくてもいいですけれども、○○さんの目線で結構ですけれども、よい生活というのは、たとえばどんなものですか?」
「言葉で表すとすれば、少しでも不幸がなくなる生活だと思います」
私は、いくつかのポイントと質問事項が書かれたノートに目をやった。何を質問しても、もう確かな回答は得られない気がした。それと同時に、彼はおそらく永田町で出世していくだろうと感じた。