- 書名:
- 出稼げば大富豪
- 著者:
- クロイワショウ
- 価格:
- ¥1,680(税込)
- 出版社:
- KKロングセラーズ
- 発行日:
- 2009年6月5日
- ISBN(13桁):
- 9784845421534
- ISBN(10桁):
- 4845421534
- 「一カ月弟子入りさせてください」「はよおいで」
- バリ島到着
- 大事なのは気づくこっちゃ
- 洗濯機の中の地球
- キウイとペンギン
- 株式投資なんか
- モノとカチの分離
- 睡眠は完全に悪
- 3倍速くやる方法
- 儲かることって何なんですか
- カルデラの豊かな水は河口まで幸せにする
- プレート・プルプル?
- 疑うことを怠ったことがないねん
- 子供はこの国の未来や
- 豊かというのは他人様を幸せにすることや
- デカセギ復活論
- 不動産の意味
- 置換積分
- 日本が失ったもの
- 神さまのいるところ
- さわやかに勝る快感なし
- 「失敗学」
- トリトンやないねんから
- ルーツ・オブ・兄貴
- 忙しい、できないを徹底的に排除しろ
- カメよ、寝てるウサギを起こしたれよ
- 人生はドラクエ
- 貧しさと豊かさ
- あいらしくほほえましくあること
- エネルギーのひ・み・つ
- だから八百屋の大将や
- ないもの=これから必要な可能性が高いもの
- 今でも切り込み隊長
- 着眼をもってして着岸点を間違えない
- ばらまくことで共通認識が生まれる
- 民族舞踏ジェゴク・インターン
- 世界ウルルンぶっちぎり
- 完全に縁や
- 即答できへん奴はウソつきや
- おばちゃんの豊かな老後
- 兄貴の感動
- つらぬこうとする意思が大事なんや
- タイムトラベラー
- インパクトでいけ
- 情がすべてや
- September Ends
キキキっ
兄貴は、ピカピカの黒塗り高級車をショッピングモールの駐車場に乗りつけた。
「さて」
2階建ての大きなビルディングを見上げて、不敵な笑みを浮かべた。
「ついてこい」
兄貴はツカツカと歩いて行く。
ぼくは、慌てて追いかける。
「おい、ここにないもん探してみい」
ぼくは立ち止まった。
薄暗い体育館のような空間に、
まるで始皇帝の兵馬俑のように衣類が並んでいる。
う~ん。しばらく考えていたが思いつかない。
兄貴は、もう見つけたんですか?
と聞いてみると、
「余裕やがな。もういっぱい見つけてるよ」
と言う。
あ、とぼくは一つ思い至った。
ぼくは、おそるおそる兄貴が叩いていた場所に向かって右足を伸ばした。
コツコツコツ
ん?
タイルが動くぞ。
「日本のスーパーマーケットこんなことなってるか?」
兄貴はジロっとぼくを見た。
「あのなあ。徹底的にないもん見んねや。観察し
たれ。そしたら、必要なもんが見えてくる。どやこれ?」
ないものを考えることで、あるものの価値がわかる。
ぼくは荘子の話を思い出した。
荘子は友人から、
「おまえの言うことは役にたたない、無用のものだ」
と言われて、こう答えたらしい。
「無用がわかって初めて有用がわかるのだ。たとえば大地は限りなく広いが、人間が
使うのは足をいれるところだけだ。だったら、他のところは無用であろう。では足を
ふみいれるところから先は使わないのだから、深く掘り下げて千尋の谷にしてしまっ
ても、残った土地は有用のはずだろう?」
ないもの=これから必要な可能性が高いもの
ということだろうか。
荘子、すげえ……
兄貴と同じこと言っちゃってるよ。
「結局、好奇心やねん。好奇心のない奴はアカンな。
好奇心=勉強や」
こないだテレビでノーベル賞科学者が語っていた。
わからないものに対する探究心を持つことで、世界観が一気に変わると。
たぶん、勉強とは、目からウロコ。つまり見方の変化なのだろう。
「好奇心持ってたら、観察するやろ」
事実、兄貴は観察の鬼である。
車の運転中もキョロキョロと周りを見回している。
先入観を排し、その場の状況や相手の態度を徹底的に「観察」しているかのように見える。
「何のために観察するか。時勢つかむためやがな。あぁ」
兄貴はニっと笑った。
子供たちが、ケラケラと笑いながら、駆け抜けていった。
「懐かしいなあ。おれもあんなんやってん。
鼻くそパリパリにしてな。昔の大阪ほんまこんな感じや。
あのなあ、昔のおれがここにおんねん」
21世紀最強のタイムトラベラーは、そう言って目を細めた。
トップに戻る