『ぼくは〈眠りの町〉から旅に出た』
著者:沢村 凛
出版社:KADOKAWA/角川書店
定価(税込):1,470円
ISBN-10:4041106508
ISBN-13:978-4041106501
『通り雨は〈世界〉をまたいで旅をする』
著者:沢村 凛
出版社:KADOKAWA/角川書店
定価(税込):1,470円
ISBN-10:44041106516
ISBN-13:978-4041106518
第54回目となる今回は、小説家・沢村凜さんです。
沢村さんといえば1月29日に『通り雨は<世界>をまたいで旅をする』と『ぼくは<眠りの町>から旅に出た』(ともに角川書店/刊)が2作同時発売されたばかり。
SFとファンタジーという別ジャンルの小説の同時発売は、小説の世界では異例です。そして、沢村さんにとってファンタジーは7年ぶり、SFは16年ぶりの刊行とあって、その内容も気になるところ。
この2作はどのように構想され、書きあげられたのでしょうか。作品の執筆過程や読書歴、作家を目指したきっかけまで、広くお話をうかがいました。
■ SFとファンタジー、対極の2作品が同時発売
―今回、発売されます『通り雨は<世界>をまたいで旅をする』と『ぼくは<眠りの町>から旅に出た』についてお話を伺えればと思います。この2作品は、それぞれまったく異なる小説なのですが、何か共通するものがあるようにも感じました。それが何かはうまく言えないのですが…。
―SFとファンタジーはどういった意味で対極なのでしょうか。
―では、ファンタジーの作品『ぼくは<眠りの町>から旅に出た』から先にお話をお聞かせ願えればと思います。この作品には「お金」や「食べ物」など、私たちの生活の中にある「生々しいもの」が全く出てこないまま、登場人物たちは目的地のわからない旅を続けるという、読んでいて不思議な心地よさを感じる作品でした。この物語の発想はどういったところから得たのでしょうか。
―執筆を始める時から完成図のイメージは見えているんですか?
―主人公の「僕」は、物語の冒頭では過去の記憶がなく、言葉も思考も貧しい状態です。それが旅を通して様々な体験を重ねるうちに言葉を得て、思考も充実していくわけですが、人が生まれて、人格が出来ていく過程が繰り返されているようですごくおもしろかったです。
―そういった設定も手伝ってか、寓話的な味わいがありました。
―『天路歴程』を読む子どもってなかなかいない気がします。
■ 「便利な物があれば使うが、進歩を望まない自分もいる」人間の二面性
―ファンタジックである種のゆるさを感じる『ぼくは<眠りの町>から旅に出た』と対照的に、『通り雨は<世界>をまたいで旅をする』はとても緻密に組み上げられた印象を受けました。
―ネタばれになってしまうのであまり深くは言えないのですが、こちらは作品世界を構築する設定というかアイデアがすばらしいなと思いました。人間社会の発達段階に対応して世界が4つに分かれているという。
―こちらも読んでいて様々なテーマが読み取れました。特に現代社会について少し皮肉めいたものが込められていた気がします。
―また「幸せとは何か」というテーマもあったように思います。
■ 唯一人並みにできると思ったのが「書くこと」だった
―先ほどおっしゃっていたようにSFとファンタジーという、それぞれ対極にある作品を書き上げられた沢村さんですが、ご自身の作風について、影響を受けた作家さんはいらっしゃいますか?
―子どもの頃から今にいたるまで、読書の傾向はどのように変わっていますか?
―SFのどんなところに惹かれたのでしょうか。
―では、ファンタジーの魅力についてもお聞きできればと思います。
―読み手としての好みと、書き手としての好みはある程度一致していますか?
―ご自身で小説を書いてみようと思われたきっかけがありましたら教えていただければと思います。
―それが、デビュー作となった『リフレイン』ですね。
―以前は記者さんをされていたそうですね。
―やはり、いざ書き始めてみると想像していなかった難しさを感じるものですか?
―つまづいた時はどうやって打開していますか?
―小説家の方にお話を聞くと、コツコツと毎日ライフワークとして書き続ける方と、ある時スイッチが入ったように集中的に大量に書く方といらっしゃるのですが、沢村さんはどちらのタイプでしょうか。
―これまでの人生で影響を受けた本がありましたら、3冊ほどご紹介いただければと思います。
―最後になりますが、読者の方々にメッセージをお願いできればと思います。
■ 取材後記
かなりの読書家だとうかがっていた沢村さん。雑談中におすすめの本をうかがうと、知らない作家や作品の名前をたくさん教えてくださり、とても勉強になりました。
ジャンル的に対極であると語ってくださった『ぼくは<眠りの町>から旅に出た』と『通り雨は<世界>をまたいで旅をする』は、長年にわたる分野をまたいだ膨大な読書が生んだのかもしれませんね。
(インタビュー・記事/山田洋介)
書店員からもすでに熱烈支持!
■沢村凛さん
1963年広島県生まれ。鳥取大学農学部卒業。山梨県、三重県を経て、現在、群馬県在住。91年に日本ファンタジーノベル大賞に応募した『リフレイン』が最終候補となり、作家デビュー。98年『ヤンのいた島』で第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。骨太な人間ドラマで魅せるファンタジーや、日常生活のひだを的確に切り取るミステリーなど、様々な世界を展開している。『瞳の中の大河』『ディーセント・ワーク・ガーディアン』『あやまち』など著書多数。
あらすじ
“ぼく”を忘れていた“ぼく”は、大切な言葉をすこうしずつ取り戻しながら、この箱庭の世界から飛び出すため<旅の仲間>を求める。世界に気づく、自分を知る、友を作る。“それ”は癒しか、傷となるのか――。『通り雨は<世界>をまたいで旅をする』
著者:沢村 凛出版社:KADOKAWA/角川書店
定価(税込):1,470円
ISBN-10:44041106516
ISBN-13:978-4041106518
あらすじ
広い世界を、己の足だけをもって渡る小さな<わたし>。その<わたし>だけが果たせる任務がある――。世界を変える、“それ”は死神か福音か。『黄金の王 白銀の王』の著者が贈る、新しい社会・懐かしい未来!!■インタビューアーカイブ■
第81回 住野よるさん
第80回 高野秀行さん
第79回 三崎亜記さん
第78回 青木淳悟さん
第77回 絲山秋子さん
第76回 月村了衛さん
第75回 川村元気さん
第74回 斎藤惇夫さん
第73回 姜尚中さん
第72回 葉室麟さん
第71回 上野誠さん
第70回 馳星周さん
第69回 小野正嗣さん
第68回 堤未果さん
第67回 田中慎弥さん
第66回 山田真哉さん
第65回 唯川恵さん
第64回 上田岳弘さん
第63回 平野啓一郎さん
第62回 坂口恭平さん
第61回 山田宗樹さん
第60回 中村航さん
第59回 和田竜さん
第58回 田中兆子さん
第57回 湊かなえさん
第56回 小山田浩子さん
第55回 藤岡陽子さん
第54回 沢村凛さん
第53回 京極夏彦さん
第52回 ヒクソン グレイシーさん
第51回 近藤史恵さん
第50回 三田紀房さん
第49回 窪美澄さん
第48回 宮内悠介さん
第47回 種村有菜さん
第46回 福岡伸一さん
第45回 池井戸潤さん
第44回 あざの耕平さん
第43回 綿矢りささん
第42回 穂村弘さん,山田航さん
第41回 夢枕 獏さん
第40回 古川 日出男さん
第39回 クリス 岡崎さん
第38回 西崎 憲さん
第37回 諏訪 哲史さん
第36回 三上 延さん
第35回 吉田 修一さん
第34回 仁木 英之さん
第33回 樋口 有介さん
第32回 乾 ルカさん
第31回 高野 和明さん
第30回 北村 薫さん
第29回 平山 夢明さん
第28回 美月 あきこさん
第27回 桜庭 一樹さん
第26回 宮下 奈都さん
第25回 藤田 宜永さん
第24回 佐々木 常夫さん
第23回 宮部 みゆきさん
第22回 道尾 秀介さん
第21回 渡辺 淳一さん
第20回 原田 マハさん
第19回 星野 智幸さん
第18回 中島京子さん
第17回 さいとう・たかをさん
第16回 武田双雲さん
第15回 斉藤英治さん
第14回 林望さん
第13回 三浦しをんさん
第12回 山本敏行さん
第11回 神永正博さん
第10回 岩崎夏海さん
第9回 明橋大二さん
第8回 白川博司さん
第7回 長谷川和廣さん
第6回 原紗央莉さん
第5回 本田直之さん
第4回 はまち。さん
第3回 川上徹也さん
第2回 石田衣良さん
第1回 池田千恵さん