部下や目下の人に対して、「褒めて伸ばす」のが主流になっている今、「叱る」ことに二の足を踏んでしまう上司、指導者の方も多いのではないかと思います。
もちろん、「褒める」ことは、人を育てるうえで欠かすことはできません。
しかし、部下の成長を考えるなら「叱る」ことも同時に不可欠なのです。
本書の著者で、人材育成・組織活性化コンサルタントの中昌子さんは、上司として「より真剣に」なってほしいのは、褒めることよりも叱ることだとして、部下を上手に叱ることの重要性とその方法を紹介しています。
■叱っている部下に期待していることを伝える魔法の言葉
叱る時は、ただ叱るよりも「あなたの力はそんなものじゃないはずだ」「あなたならできるはず」という期待感を相手に伝えながら叱る方が効果的です。
その期待感をさりげなく伝えるために、中さんは「もったいない」という言葉を使うことを勧めています。
「あとここを直せば最高なのに。もったいない」
「こういうところはがんばってるのに、もったいない」
というような言い回しを使って叱ることで、上司の期待に応えたいという部下の気持ちを呼び起すことができるのです。
■叱るときは、その場で、すぐに
次は叱る場と時について。
「鉄は熱いうちに打て」ではないですが、叱る必要を感じたら「その場ですぐに」叱ることが一番効き目があるそう。時間を空けてから叱ると、部下の方は「何で今さら」と、終わったことを蒸し返されたように感じてしまい、上司の言葉に耳を傾ける気になりません。
ただし、その場で叱るといっても同僚やお客さんの前は避け、一対一になれる場に行って叱るようにしましょう。
■仏の顔は何度まで?
熱心に指導しているにも関わらず、何度も同じ失敗をしてしまったり、あるいは改善しようとしない部下がいたとします。
普通なら3回くらい叱ってダメなら諦めてしまうところですが、中さんいわく、「最低7回は指導」すること。
会社は人を成長させる場でもあります。部下を成長させるだけでなく、自分も成長するつもりで、根気強く指導を続けましょう。
■人格否定は厳禁
これは叱る時の大原則なので、誰もがわかっていることだと思いますが、人格でなく「行為」に対して叱ることが重要です。
「だから君はダメなんだ」
「そんな性格だからうまくいかないんだ」
などは人格を指摘するものなので、叱り方としてはNG。
こういう叱り方をされた部下は自信を失ってしまいますし、上司との信頼関係にも悪影響を与えてしまいます。
誰だって自分の部下に厳しいことは言いたくありません。
しかし、本気で彼らに接しているのなら、どうしても叱らなければならない場面もあるはずです。
本書には、今回取り上げた「叱り方」だけでなく、部下を育て、自分も成長しながら職場を活性化していくための考え方ややり方が解説されていますので、部下を持つ上司の方や、人を教える立場の人は参考にしてみてはいかがでしょうか。
株式会社マリン代表取締役、社会保険労務士。1959年福岡県生まれ。
千葉県在住。新卒で新日鐵に入社して輸出業務に携わるも、専業主婦にあこがれて3年で退社。3人の男の子を育て上げ、39歳のとき、近所のスーパーマーケットでパートとして働きはじめる。当時の時給は760円だった。
持ち前の明るさと行動力から3年後に店長となり、「働く喜び」を軸にした人材育成を行うことで、来客数を3倍、売上げも3倍にする。当時はその成長ぶりとユニークな試みが話題となり、テレビ局の取材を多数受けた。研修依頼が増えたことから、2年後の平成15年に人材育成・組織活性化のコンサルタントとして独立。
クライアントは中小企業、店舗、レストラン、医療機関、介護施設など多岐にわたり、全国を飛び回る生活。年間180回以上、のべ3万人以上の研修実績を持つ。東京理科大学、工学院大学などで、就職対策講座やコミュニケーション講座の講師も務める。また、会社に「笑顔の花」をたくさん咲かせることを使命として掲げており、笑顔体操のCD・DVDをリリースするなど、スマイルコンサルタントとしても活動を広げている。
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