■クラウドワークとはどのような仕事術なのでしょうか。
「“クラウド”というと、“クラウドコンピューティング”という言葉に代表されるようにITのイメージが強いと思いますが、本書では時間と場所を自分自身でコントロールすることにより、知的生産性の向上を図る仕事術として説明しています。
パソコンが自由に持ち運べるようになり、ウェブ上にはGoogleなどとても使い勝手が良いサービスがたくさん出てきました。常識や身の回りの制約から開放され、いつでも何処でも効率的に仕事ができるようになりました。」
■どのようにして“クラウドワーク”が実践できるようになったのでしょうか。
Profile
岡田 充弘
カナリア株式会社の代表取締役として、企業再生、 人材育成を中心に活動しています。
「私の場合、以前勤めていた外資系コンサルティング会社で、クラウドワークの原型となる仕事術を初めて知りました。その後、自分の経験の中で身につけたものを加えながら、より速く、身軽な仕事術に磨き上げていきました。
最初のうちは意識的にやる必要はありますが、何度も反復しているうちに、自然と体に良いクセが見につき、そのうち無意識のうちに出来るようになっていることでしょう。
私も昔に、本書のようなものがあれば、遠回りしないで、もっと早く習得できたと思います。(笑)」
■“クラウドワーク”を実践することでどのようなことが変わりますか?
「まずはなんといっても、仕事の自由度が高まることによって、生産性や創造性が飛躍的に向上することでしょう。
その他、場所や時間を自らコントロールすることによって、急な私用や家族のイベントにも対応しやすくなり、プライベートを含めた人生設計を上手く進めることができます。」
■岡田さん自身が“クラウドワーク”をはじめて、変わったと実感したことはなんですか?
「実感としては、タスクをこなすスピードだけでなく、アイデアを形にするスピードが随分上がったと感じています。
空いた時間を人との出会いに使えるようになったおかげか、今までに無かったような新しい企画やコラボの機会がかなり増えて、好循環を維持することができています。」
■「時間と場所に縛られない」となると、仕事と休みの境界が曖昧になってしまいそうなのですが、どのようにメリハリをつければ良いのですか?
「確かに「時間や場所に縛られない」と聞くと、常に仕事モードになってしまうのを心配される方もおられることでしょう。
そういうときは、逆に「時間と場所」で仕事のON・OFFの明確な線引きをするといいでしょう。例えば平日の19時以降と土日は仕事で使っているパソコンを開かないとか、仕事の場所を限定する、といったルールを自分で決めてしまうのです。
このルールを曖昧にしていると、仕事中も集中できなかったり、休息の時間でも仕事のことを思い出したりしまって、逆効果になってしまいます。私だって、そういった線引きが無ければ、観たいDVDについ手が伸びるなど誘惑に負けちゃいますよ(笑)」
■自分も“クラウドワーク”を始めたいと思ったときに、まず何をすべきだと思いますか?
「いきなりこの本の内容を全部身に付けようとしても、なかなか難しいと思います。だから、まずは“捨てる”ことから始めましょう。自分のデスク周りの要らないモノですとか、パソコン内の要らない情報などですね。
“これはいつか使うかも知れない”と思って残しておくけど、実はもう1年も使わずにそのままとか、そういったことはよくありますよね。そうやって残したモノや情報のほとんどは実際に使わないことはほとんどです。だから、本当に大切なものですとか、再利用の価値の高いもの以外は捨てる。それがスタートになると思います」
■自分は何事をするにも腰が重く「何ですぐ行動しないんだ!」と上司から怒られるのですが、どのような技術・心構えを身につければ改善ができるのでしょうか。
「繰り返しになりますが、重要なのは“クセ付け”をして、いかに無意識にそれが出来るようになるか、です。だから心構えを変えるよりは、日常の「環境」や「行動」、「台詞」を変えてしまうほうが簡単です。
「行動」なんかは極端な話、致命傷を負うようなもの以外はあと先考えずに行動するくらいで丁度いいんじゃないでしょうか。それこそ、好きな女の子がいたとき、アプローチをしないでモジモジしているよりはアプローチをかけた方が振り向いてくれる確率は高くなりますよね(笑)。それに、もしダメだったとしても命を落とすわけでもない。しかも勇気は“タダ”なんです。そういう風に考えるといいと思います。」
■本書をどのような方に読んで欲しいと思っていますか?
「3つのタイプの方を思い浮かべながら書きました。
まずはもうすぐ就職や転職を控えており、これから新天地でバリバリ仕事をしていきたいと思っている方。次に自己流で磨いてきた仕事術をいったん棚卸しし、新たな視点や方法論を採り入れることによって、更に生産性を高めたいと思っている向上心旺盛な方。そして最後に、自分を変えたい気持ちはあるが、途中何度も挫折してしまった経験から、キャリアや能力向上に対して、やや諦めモードになっている方です。
私たちは会社という組織の中にある、様々なルールやしがらみに囲まれて仕事をしなければいけません。だから本書の内容には実行するのが難しいものもあるかと思いますが、今皆さんが置かれている状況の中で、出来ることから少しずつトライしてみてもらえればと思いますね。」
■最後になりますが、読者にメッセージをお願い致します。
「実は、この本の原点にあるのは阪神淡路大震災で私の自宅が全壊したことなんです。そのとき、私は多くのモノを失いましたが、同時に「人生において真に大切なものは、実はそんなに多くない」ということに気付いたんです。
たくさん本を読む方なら分かると思うのですが、定期的に読み終えた本を処分していく中でも書棚にずっと残っている本って僅かながらありますよね。その本こそが自分にとって“最も大切な本”であり、自分を最も表していることに、気付かされるはずです。
クラウドワークを実行していくことは、多くの情報を得て、多くの情報を捨てていくことに他ならないのですが、その過程で、自分とは何なのか?、自分にとって大切なものとは?といったことと向き合われるかと思います。
あなたが特別であるための “素敵なクセづくり“に、本書がお役に立てれば幸いです。」