書名:ディズニー そうじの神様が教えてくれたこと
著者:鎌田 洋
定価:1,155円(税込み)
出版社:ソフトバンククリエイティブ
ISBN:479736193X
ISBN:978-4797361933
ディズニーランドで働く人たち(キャスト)のホスピタリティについては多くの人が絶賛をしていますが、どうしてなのでしょうか。
初代ナイトカストーディアル・トレーナー兼エリアスーパーバイザーとして1983年の東京ディズニーランド開園を迎え、その後、オリエンタルランド全スタッフの指導、育成を担当した鎌田洋さんが執筆した『ディズニー そうじの神様が教えてくれたこと』(ソフトバンククリエイティブ/刊)には、カストーディアルと呼ばれる清掃員たちの物語を通して、そのホスピタリティがどのように受け継がれているのかが描かれています。
今回はそんな鎌田さんにインタビューを行い、ディズニーランドのホスピタリティの高さの裏側について語っていただきました。
■ ディズニーランドのキャストたちの教育は入る前から始まっている?
―まず、本書を執筆した経緯から教えていただけますでしょうか。
ただ、昨年60歳を迎えて、今まで培ってきたディズニーでの教育方法を何かしらの形で伝えたいなと思ったんですね。そのとき、ノウハウという味気ない形では表現したくなくて、ディズニーには生々しい日常の感情の交錯みたいなものがあるわけですよ。だから、この本は小説形式、フィクションという形で書いているんです。
まあ、大きなきっかけはやはり60歳になったということでしたね。60歳になると自分の行く末が見えてくるんですよ。iPadのアプリケーションの中に『余命電卓』というアプリがあるのですが、あなたの命日まで17年って出てくるんですね。それは男性の平均寿命からするとあと17年ということで、今年は16年に減っているんです。自分はいつまでも元気だと思っていても、そうじゃない日が来る。それを感じたとき、他人様が知りたいなと思うような自分の経験を、このまま終わらせてしまったのでは申し訳ないという気持ちもあるし
―伝えていかないといけない、と。
そうです。それに、私自身、普通の人のように簡単にオリエンタルランドに入社できたわけではないので、想いは人一倍強いですね
―本書を読ませていただいて、そして、ディズニーランドに行ったときに感じることなのですが、ディズニーランドで働いているキャストの皆さんは、それぞれ自分の仕事に対してすごく誇りを持っているように思うんです。それはどうしてだと思いますか?
全員が自分の仕事に誇りを持っているとは思えませんが、キャスト全体の中にディズニーランドを好きな人が何%いるかと考えたときに、それはおそらく他の一般企業に比べて多いはずなんですね。数%でも。ただ、その数%の差がお客様から見ればものすごい差になって現れるんです。また、最初から誇りを持っていない人でも、働いているうちにそういったものが芽生えてくるんですよね。
それで、どうしてディズニーの仕事にプライドを持っているかというと、まずそもそもディズニーランドが大好きな人が多いということはあると思います。よくアルバイトを戦力化するノウハウ本が売られていますが、実はキャストたちはディズニーランドに入る前からディズニーランドの教育を受けているんですよ
―つまり、子どもの頃からディズニーランドに遊びに行って…。
それで楽しい思い出をたくさん作っているんです。ディズニースマイルなんかも、もう小さい頃にインプットされているんです。だから、(キャストの)教育がものすごく楽なんですよ
―理想のディズニーランドのキャスト像がすでに出来ている状態で入ってくるということですよね。
そうなんですよ。ディズニーの戦略ってファン作りなんです。だから私がセミナーでよく、まずはあなた方のファンを作ることが大切です、と言うのは、そういうことなんですね。
また、もう1つありまして、キャストたちはディズニーのこだわりにプライドを持っています。ディズニーランドには様々なこだわりがあって、例えば園内から外の世界を見えないように土手を築いて、木を植えて、ということをしていたりとか、ゴミ箱がディズニーランドに700個設置されているとか。お店に配属になると、お店の名前の由来、いわゆる『ビハインド・ザ・ストーリー』というのですがそういったことをちゃんと伝えて、教育するんです。また、単なる売り子とか清掃員と呼ばずに、ちゃんと意味づけしている。それが大きな違いかも知れませんね
―なるほど。
ゲストの方々に対するサービスもこだわりを持ってやっているから、ゲストの皆さんが感動すると『やった!』と自分のプライドに変わっていくんです。私たちは普通のサービスとは違うことをやっているんだという意識が芽生えてきますね
―それはディズニーランドに対して、特別な感情を抱いているからこそ芽生えるものですよね。