「時間がない」「お金がない」などなど、私たちは様々な理由で「やりたいこと」や「やるべきこと」を諦めてしまいます。
なかでも「自分にセンスがないのがわかったから」というのは、何かを挫折してしまった人のセリフとして耳にしたことがあるという人は多いのではないでしょうか。
しかし、本書の著者、安澤武郎さんは「センスは訓練で補うことができる」といいます。
■「スキル」を磨くことを習慣に
「センス」を「天性の才能」だとすると、「スキル」は「訓練によって獲得できる技術」です。
「能力」というものが「センス」と「スキル」で成り立っているなら、訓練や反復によって自分次第で高めていくことができる「スキル」は常に磨いておかなくてはいけません。
大事なことは「センスがない」と自分の限界を決めつけず、訓練を習慣にすること。たとえ生まれ持った才能に恵まれなかったとしても、打つ手がないわけではないのです。
■自分に合った目標を見つける
しかし、「スキル」はやみくもに反復練習したからといって身につくものでもありません。自分が成長していきたい方向性を決めたうえでないと、ムダの多い訓練になってしまいます。
もし、その方向性がはっきりしないのであれば、「目標とする人物」を設定しましょう。
「この人のようになりたい」と決めることで、より高いレベルに基準を設定できるとともに、逆境に陥っても「あの人ならどう切り抜けるだろう」という発想で解決法を探ることができます。
ただし、自分とあまりにかけ離れている人、たとえばセンスだけでやっているような先輩などを目標にしてもなかなかうまくいかないので、自分と似た個性を持っている人を見つけるのがポイント。
また、その人の行動だけを追っていても、ただのモノマネに終わってしまいます。「あの人はなぜこんなことをしたんだろう」と、行動の背後にある考え方や行動原理にまで踏み込んで考えることが大切です。
■「型」を守る
センスのある人は最初からオリジナリティを持っているのかもしれませんが、そうでない人が彼らのマネをしてもうまくいくはずがありません。まずは「型」から入りましょう。
どんなことにも「基本」や「型」があります。
芸事や武道でいうところの「守」「破」「離」のように、まずは基本の型にしたがって(「守」)、それがきちんとできるようになったら自分なりの工夫を加え(「破」)、独自の道を進むのは最後(「離」)。
遠回りと思うかもしれませんが、これが着実に自分のスキルを伸ばしていく最も確実なやり方なのです。
安澤さんが在籍した京都大学アメフト部は、かつて大学日本一にも輝いたこともある名門。スポーツ推薦がなく、
運動センスがある選手が入りにくいこのチームが好成績を残し続けられるのは「センス」の差は工夫と訓練で埋めることができることを物語っています。
本書には、今回取り上げた「センス」に限らず、私たちの目の前に立ちはだかる様々な「壁」の乗り越え方が明かされており、その内容は向上心を持ちながらもなかなかうまく行かない人に転機を与えてくれるはずです。
第1章 常識の壁に挑む
第2章 アクションの壁に挑む
第3章 スキルの壁に挑む
第4章 「仕事のやり方」の壁に挑む
第5章 コミュニケーションの壁に挑む
第6章 情熱の壁に挑む
●ペネトラ・コンサルティング株式会社 代表取締役
●久遠義塾(中高生向けの人間育成塾)塾長
●一級建築士
1974年滋賀県生まれ。京都大学工学部卒業後、鹿島建設に勤務。大学時代はアメリカンフットボールで学生日本一を2回経験。うち1回は、社会人王者を破り日本チャンピオンを勝ち取っている。個人としても、鹿島建設時代までを含め、オールジャパンに4度選出されている。
その後、チームの「実行力支援」に特化した国際的コンサルティングファームで組織変革手法を習得し、創業100年超・社員数1000人規模のクライアント企業への出向も経験。アメリカンフットボール部の組織づくりのノウハウを活かし、「挑戦し続ける組織」への進化を推進している。2012年に独立し、ペネトラ・コンサルティング株式会社を設立。組織変革コンサルタントとして、中高生向けの人間教育から新規事業の立ち上げ支援を含め、「壁を破らせるプロフェッショナル」として、さまざまな活動を展開中。