だれかに話したくなる本の話

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「ライトノベル作家」に夢はありますか? 投稿サイト出身作家に聞く

■兼業作家でい続ける理由

 
――だいたいどのくらい売れれば専業でやっていけるのでしょうか。
 
かすがまる:その人のお金に対する考え方もあるので、どこから専業としてやっていけるかの線引きはできません。でも、メディアミックス、例えばアニメ化してもそれだけでは専業としてやっていけないと思います。
 
 

――専業は憧れだと思うのですが、かすがまるさんはいずれ専業になろうという想いはないのですか?
 
かすがまる:私はもともと「小説家になろう!」に趣味で投稿していた身なので、作家だけで食べていくという気があまりないんですよ。今でこそプロになりたくて投稿している人もいるのかもしれませんけど…。
 
気軽に投稿できて比較的デビューしやすい分、よほど売れないと専業になるのは難しいと思いますね。プロになるという覚悟も定まらないままにデビューしちゃうこともあるでしょうし。
 
――ライトノベル作家の場合、収入は本の印税以外にどんなものがあるのでしょうか。
 
かすがまる:私の場合は専門学校のノベル科という作家を養成するコースで講師をしています。それもライトノベル関連の仕事ではありますね。
 
ただこれはかなり特殊な例です。作品そのものとなると1年間に4冊は出せないと専業でやっていくのは厳しいと聞きますし、育児をしている身からすれば、子ども2人育てるならば、4冊でも難しいです。コミカライズからアニメ化を経て、作品が大ヒットすればまた話は別なのでしょうけど、それは一握りなので、お金面からいえば、あまり夢はない世界ですよ。
 
嫌な言葉ですけれど、「記念出版」ってありますよね。デビュー作だけで後が出ない。とある小説の新人賞の挨拶で、受賞した作家さんが「新人賞の受賞は、ガンの告知に似ている」と言ったという話があって、私もそれはすごく感じています。
 
――「5年生存率が何%」という話ですよね。確かにそれは厳しい世界です。こうなってくるともともと仕事がある人は兼業作家で続けようという選択をしてしまいますよね。
 
かすがまる:兼業ならば自分を追い込む必要があまりなくなるわけですからね。小説投稿サイトが大きなブームになっている中で、そこから生まれる作家さんも多くなっていますが、もともとは「投稿することが楽しい」というモチベーションで書いている人が多いので、そういった人たちが商業出版に移ったときにちゃんと継続できるかどうかは分からないところがあります。
 
――確かにそういう部分はこれから出てくるでしょうね。
 
かすがまる:もう一つあるのは、投稿していると分かるのですが、投稿サイトは作家そのものを評価するというより、作品を評価する文化なんですよね。「この人だから読む」「この人だから買う」というのはかなりレアなケースになっているように思います。そういう背景もあるわけですね。
 
(第2回「小説家と編集者と投稿サイトユーザーの関係に大きな変化が!?」に続く)
 

■かすがまるさんプロフィール

 
東京都出身。2014年1月よりネット上で連載開始した『火刑戦旗を掲げよ!!』にて、小説家になろう大賞2014、MFブックス部門の優秀賞を受賞する。本職は学習塾の講師で担当は数学と国語。

■新潟アニメーション

 
新潟市に拠点を置くアニメーション制作会社。「ニイガタからアニメーションの新たな可能性を世界へ発信する」というビジョンを掲げ、2014年2月創立。現在、地元テレビ局の番組内アニメ制作、アニメCM制作、ゲームOPアニメ制作、遊戯機器アニメ制作、TVシリーズのデジタルペイントなどを手がける。近年ではとくに新潟におけるアニメのデジタル制作の体制構築に注力している。

火刑戦旗を掲げよ! 1 (MFブックス)

火刑戦旗を掲げよ! 1 (MFブックス)

ある一人の男が"聖炎の祝祭"により火刑に処された。かつて窮地の王国を救い大陸に安寧をもたらした英雄・サロモン。苛烈な戦術と強烈なカリスマ――彼を崇拝するものは死してなお多い。
時は流れ、王国の辺境の村に一人の不思議な少年が生を受ける。神童と言うべき力を備えたその少年の名はマルコ。
彼と出会った者達は皆魅入られてしまう。まるで彼の中に、かつての勇者・サロモンの面影でも見るように――。
これは運命に導かれるまま波乱の世を生きた男達の物語である。

この記事のライター

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金井元貴

1984年生。「新刊JP」の編集長です。カープが勝つと喜びます。
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audiobook:「鼠わらし物語」(共作)

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