『天草エアラインの奇跡。赤字企業を5年連続の黒字にさせた変革力!』
天草エアラインが世間から注目を浴びた理由とは?
矢島: 僕はこの「天草エアライン」という航空会社を、本書を読むまで存じあげていなかったんですけども、この会社が業界の中で有名になったのはいつ頃からなんでしょうか?
会社自体は2000年から存在していたのですが、当時は福岡空港をよく利用される方が「ときどき水色の飛行機が飛んでるな~」と気が付くくらいで、あまり知れ渡ってはいませんでした。知名度が上がったひとつのきっかけは、2013年に機体を新しいデザインに塗り替えた事ですね。親子イルカが一緒に泳いでいるような可愛らしいデザインで「みぞか号」というんです。それから頻繁にメディアに取り上げられるようになりました。
矢島: そのように機体が有名になって航空ファンが飛びついてくるような航空会社って結構あるんですか?
あまりないと思いますね。そしてその機体なんですが、実は天草エアラインは飛行機を「1機」しか持っていないんです。普通、大手航空会社であれば100機、それ以外のところも10機以上は持っているのですが。
矢島: そうですよね!? 電車とかバス会社に比べたら当然機数は少なくなるとは思うんですけど、それにしても1機って……。
定期便を運行している航空会社では非常に稀なケースですね(笑)世界的に見ても。
天草エアラインを躍進させた奥島前社長のパフォーマンス
矢島: 本の中で奥島透前社長の功績が度々クローズアップされていますけど、彼のマネジメントで素晴らしかった点というのは?
社員のやる気を高めた事ですね。奥島さんは元々日本航空の整備士出身の方で、当時勤めていた整備工場の社員一人一人を必ず名前で呼ぶようにしていたんです。
矢島: それは良い試みですね!
その習慣が天草エアラインの社長就任後に役立ったんです。自ら積極的に動き、声を掛けてくれる社長の姿に刺激を受けた社員たちは、モチベーションが上がり、彼についていこうという気になったわけですね。
矢島: ふむふむ。なるほど。
で、社長というのは最初だけそういうパフォーマンスをする方って多いんですよ。けれど3日坊主でやめてしまう方も多いんです。でも奥島さんはそれを継続してこられたんですね。「あ、この人は本当に会社を変えようとしているんだ」という社員の意識改革を行った事が、躍進のための大きな一歩でした。
メディアとしての飛行機
矢島: 飛行機って移動手段としてのイメージが強いんですけど、本の中で「天草エアライン自体がメディアである」なんて書かれ方がされていました。これについては?
たとえば天草エアラインはFecebookでも情報発信しておりますけど、この規模の航空会社なのに「いいね!」を押している人が1万1000人を超えているんです。
矢島: おーすごいですね!
そしてもうひとつ、一般の方も巻き込めるという意味もあるんです。今はメディアの人間だけではなく、誰もがSNSを用いて世界中に情報を発信出来ますよね。乗った人たちが「天草エアラインなう」とか「かわいいイルカの飛行機に乗ってます!」とか「おいしいもの食べてます^^」とか(笑)。そういう一般の観光客の方も、実は情報発信者なんですよね。
矢島: 自社がPRするだけじゃなくて、観光に来たお客様もSNSで宣伝してくれるということか……。つまり「天草エアラインに乗ったよ」という報告がメディアに流れる情報として価値を持つんですね!