『今すぐ会社をやめても困らないお金の管理術』
「お金の本質が見えた」家計を経営することが大事
矢島:
井形さんが考えるお金の管理・家計は、「節約」ではなくて、「利益を生み出す」ように考えてみましょうというアプローチですね。
人生を「会社の運営」と捉えれば、夢や目標は「経営計画」だし、家計というのは「経理部門」だし、と。そうすると、お金は残すものではなくて、儲けるものに代わってきますね。本書では、こういった経営者視点のお金管理のノウハウを紹介されていますね。
20代くらいからこの感覚はあったと思います。会社を立ち上げたのが28歳ですから、会社の財務をやるようになって「お金」っていうものの本質が何か見えたような気がしますね。
矢島: 「お金の本質」が見えた?
大局的に色々と捉えると、日々必要なお金の科目が多すぎるんですよね。普通の人って、入ってくるお金は毎月の給料一本だと思いますけど、自分が得た給料を、どうやって分類して、そこをどう抑えていくか、というところに腐心してしまっているんです。
もっとこう、入ってきたお金が一体いつ、どの段階で、どこにいけばいいのかっていうことを考えていけばいいんですけど・・・これって経営者的な視点なんですよね。経営計画とか資金繰りに似ているのかなと思います。
矢島: ああ、なるほど!特に経営者の方って、個人では稼げない額のお金を動かすことが多いわけですから、「じゃあここは銀行に借りよう」とか、「このときまでにお金を用意しよう」とか、金策をするわけですよね。でも、一般家庭でサラリーマンの給料一本なら、先月の給料を今月にあてなければいけないから、人間心理として、溜まってないと怖いっていう風に考えるんですね。
そうですね、残ってないとすごい自分がリスクを抱えているっていうように思ってしまいます。お金を動かす意識が弱いわけです。
年収300万の方が、1000万稼ぐ人よりお金が貯まる理由
矢島: 年収300万円の人が、1000万円稼ぐ人よりお金を貯められるようになる、これってどういうことなんでしょうか? いや、1000万円の方が貯まるでしょう!(笑)なんて思っちゃいそうですけど。
この中には、臨時収入で入ってくる賞与なんてあてにしていませんし、ギリギリの生活だと思っているので、たとえば何か臨時収入が入った時にも、今まで通り250万円でつつがなく生活していこうと考える人が多いんです。
その感覚を持って、年収が500万、600万と上がっていっても、生活レベルは維持したまま貯めておこうという堅実な考えが身についているわけですね。
矢島: なるほど・・。
ところが年収1000万円の方っていうのは、感覚的に年収2000万円もらっているような、「オレはスゴいんだぜ!」っていうふうになる人が多いんですよ。年収が高いと、周りからの見る目も変わってきますから。そうすると、人間は見栄やプライドというものがあって、交際費も増えるし、住む場所、車ひとつとっても、ちょっとランクの高いものに手を出しがちです。そうすると、維持費もあがってきちゃって、ますます出ていくお金は増えていくわけです。
家計は「節約」ではなく「儲ける」ことが大事
矢島: でもそうすると、「あれ節約が大事なの?」って勘違いしてしまいそうですが、井形さんのアプローチは、「節約ではなく儲けること」「利益を出すこと」が大切だということなんですよね。これはどう考えればいいんでしょうか?
詳しく聞いていると、こづかいを3万円から1万円に減らしたり、スーパーに行かないで安い八百屋を回ってみるとかして、生活費を削減していく。家計簿だって一生懸命付けている。ところがお金がぜんぜん貯まらない・・。そういう人は、節約にフォーカスしちゃってるんですね。
矢島: 行動を、節約することに対してフォーカスしてしまっている、と。お金を貯めるにはこれじゃいけいなんですよね。
企業の社長さんって、お金があろうがなかろうが、毎月社員に給料を払わないといけないじゃないですか。家賃だって必要です。そうすると自分の会社が、どうすれば儲けが出るのかを考えますね。「収入」ではなくて、「利益」です。
「収入」を家庭にスライドさせると、つまり「月給」のことです。「利益」っていうのは、月給から家庭の中の必要な「経費」を引いて、さあどれだけの、残りが出るでしょうかみたいな感覚です。
矢島: なるほど。節約っていうのは、経費を抑えることを考えるものだけど、そうじゃなくて儲けるっていうのは経費を抑えた結果、いくら使えるようになるのかということですから。そこにフォーカスするのがよいということですね。確かに、「経費削減」だけを言ってる会社はダメですね(笑)
経費を抑える「節約」は、儲けを出すためのひとつの策ですよね。この考え方を家庭に取り入れたとき、どうすればいいか、ということなんですけど・・・