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本が好きっ! ブックナビゲーター矢島雅弘のインタビューラジオ

『矢島雅弘の「本が好きっ!」』は、ブックナビゲーター矢島雅弘が、話題の本の著者をゲストに招いてお送りするインタビュー番組です。本についてはもちろん、ゲスト著者の人となりや、成功体験、考え方、ビジネスのちょっとした気づきやなどを、矢島が自身の持ち味である軽妙な対談形式でお聞きし、リスナーの皆さまに「軽くて楽しい」けれども「知的」な時間をお届けします。

ゲスト: 井戸まさえさん

『無戸籍の日本人』

井戸まさえさん画像

矢島: 「無戸籍問題」は最近でこそ、テレビで取り上げられることが多くなりましたが、まだまだ一般に浸透していない問題だと思うんですね。井戸さんが無戸籍問題の支援活動を行ったり、本書を書こうと思ったきっかけを教えていただけますか?

井戸: まさに私の息子が「無戸籍」になってしまったんです(現在は取得)。私は、法に従って結婚して、離婚、再婚をして、子どもを産んだにもかかわらず、生んだ子どもが戸籍が得られない状況になってしまいました。最初は、自分の子どもが無戸籍なんていうのは、私だけしかいないと思っていたんですけど、実は年間3000人もいるということを知りました。これは法律がおかしいんじゃないかと思い始めたんです。そうして私は、この問題を経験した1人として支援活動を始めました。

矢島: 単純な疑問として、どうしてそういうことが起きてしまうんだろうと思うんですが、「無戸籍者」の人たちは、どういった理由でそうなってしまうんでしょうか?

井戸: いくつかありますが、ひとつは「民法772条問題」です。これは、「離婚して300日以内に生まれた子どもは前の夫の子どもと推定される」という規定です。実際には、離婚したあと再婚して、新しい夫との間でできた子どもであっても、法律上では前の夫の子どもになってしまうんです。これを避けるには前の夫に証明してもらう必要があるんですが、それができないと前の夫の子どもになってしまうので出生届を出せず、その結果「無戸籍」になってしまうんです。
それから、親に経済的な余裕がなくて出生届けを出さないというケースもあります。貧困でそこまで意識がまわらないというケースや、病院に出産費用を払えなくて証明書を病院に預けたまま、出生届けを出せないということもあります。

井戸まさえさん画像

矢島: 無戸籍であることのデメリットというか、無戸籍者自身が辛いと思っていることは主にどんなところにあるんでしょうか? 井戸さんは無戸籍者の方からの相談を受けていらっしゃると思うんですが、みなさんどういうきっかけで「戸籍を取りたい」と相談してくるのでしょうか?

井戸: 戸籍がないと学校に通えないとか、住民票が取れないとかあるんですけど、今は色んな方々のがんばりで改善はしてきています。たとえば、パスポートなんかは無戸籍でも取れるようになりました。だけど、ハードルは非常に高くて、取得のための調停、裁判を起こして、その証明がないといけなかったりします。

矢島: 徐々に改善されてきてはいるものの、本質的な改善には至っていないのですね。

井戸: たとえば、今日相談を受けた高校生のお子さんは、大学進学のためにTOEICの試験を受けるために必要な身分証が取れないというものでした。その子は留学を目指しているのですが、身分証がないとTOEICの試験すら受けられず、それでものすごく困っているんです。

著者プロフィール

井戸まさえ

1965年、宮城県仙台市出身。松下政経塾の九期生で、五児のお母さんでもあります。東洋経済新報社勤務を経て、経済ジャーナリストとして独立。兵庫県議会議員(二期)、衆議院議員(一期)も務められました。そして、現在NPO法人「親子法改正研究会」代表理事、「民法772条による無戸籍児家族の会」代表として、無戸籍問題、特別養子縁組など、法のはざまで苦しむ人々の支援を行っていらっしゃいます。

パーソナリティプロフィール

矢島雅弘

1982年埼玉県出身。2005年よりスタートしたPodcasting番組「新刊ラジオ」のパーソナリティとして、これまで約1800冊の書籍を紹介。ビジネス書から文芸、サブカルなどさまざまなジャンルの本を簡潔に分かりやすいナレーションで解説し、支持を得ている。また、インタビュアーとしても確かな腕を持っている。モットーは『難しいことを、面白く分かりやすく』。

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