■今、一番欲しい人材は「新規開拓営業ができる人」
―現在、経営コンサルタントとして活躍されている冨田さんですが、以前からは営業経験はあったのですか?この本に書かれた営業のノウハウはどこで身につけられたのですか?
「以前は、独立系のベンチャーキャピタルでベンチャーファンドの募集をしたり、投資先のベンチャー企業を発掘する営業したりしたことがありました。私の法人営業は、それがベースになっています。ただ、私はそれ以外のキャリアは、米国系銀行での米国株式の調査、国公立大学でのベンチャーファイナンス論の専任講師、大手銀行の本部での資金運用といったファイナンス分野の調査研究がメインでした。そのため、本の中にも書きましたが、コンサルティング会社の社長になるまでは、交流会にも参加したことない状態だったのですが、この数年間で、コンサルティング会社を立ち上げる中で、今の時代の新規開拓営業のやり方を必死に模索する中で見つけたメソッド、ノウハウをこの本で紹介させていただきました。かなり実践的ですし、誰でも実行すれば成果が出るものだと思っています」
―今、独立をされてコンサルタントをされていますが、会社勤めを続けるにしておも、独立・起業するにも営業能力は必要だと言われていますね。
「私が独立して会社を立ち上げたとき、さまざまな交流会をまわって人脈を作っていきました。それにより、約3年で100以上のコンサルティング契約を受託させていただきました。
ストレートに言えば、独立して自ら新規の顧客を開拓して、売上を立てられる力があれば何も怖いものはありませんよね。
例えば、税理士さんや弁護士さんなど、士業の方の数がものすごく増えています。そうなると競争が激しくなる。そんな中で、独立しても、新規のお客さんを捕まえられないという話はよく聞きます。やはり、新規営業の力が必要です。
また、勤めている会社で頑張っていくにしても、新規開拓営業ができれば会社での評価は高まります。どの会社も求めている能力ですから転職もしやすくなります。自分をアピールする営業力は就活や婚活でも使える。今、一番求められている力だと思います。これから5年、10年、20年生き残っていくために不可欠な能力なのではと思います」
―本書に「営業で売上を伸ばせば、会社の問題の8割は解決する」と書かれているように、新規営業が伸びてくることで企業の状況も好転してくる、と。
「そうです。要するに、最大の経営課題は売上が足りないということであり、その原因は営業が進まないということなんです。今、企業が一番求めていることは売上を伸ばすことです。だから、私どものコンサルティングのメニューでも営業先や提携先の紹介、新規事業立ち上げにしても、どれも売上をあげるための施策ですよね。経営者はトップラインの売上を上げることに苦労されているし、翻って言えば、売上さえ伸ばせれば、会社の問題の8割以上は解決します。
何をするにしてもお金がないとできません。社員のモチベーションを上げるための施策を打つにしても、売上があがらない限りは難しいですよね。トップラインの売上さえ上がれば、組織や人事の問題でも、そういったコンサルティングを、お金を払ってどこかに頼むなど、いろいろな問題を解決していけます」
―そういった中で、経営者の方々はどのようなことに悩まれているんですか?
「私は日々、多くの経営者の方と面談していますが、やはり新規開拓営業をどのように進めるかで悩んでおられるように感じます。社長さん自身や、社員の営業マンの皆さんも、一生懸命営業はしているけれど、最終的に契約をまとめられない。私の言葉で言えば、シュートを決めることができない。足しげくお客様のところへ通っても、最終的に契約を締結できなければ、お金が入ってこないので、意味はありません。あとは、既存のお客様のフォローは得意だけれども、新規のお客様と付き合っていくのが苦手というか、避けようとする営業職の社員も多い。どうやって新しい方面の会社と付き合っていけばよいのか、どう新しい顧客を掘り起こしていけばいいのかが、課題となっています。本書ではその解決策について具体的に書いています」
―本書で冨田さんは交流会に率先して参加することを勧めていらっしゃいます。先ほどおっしゃっていましたが、冨田さんご自身もご参加されているそうですね。
「繰り返しになりますが、私も独立してコンサルティング会社の社長になるまでは交流会に行ったことはありませんでした。それが、3年前にあるきっかけで、渋谷で行われた交流会に参加して、これはいいと思って、1ヶ月の20営業日中、17、18営業日交流会をまわりました。今でも、自分で決めている“営業強化月間”は、ほぼ毎日、交流会に参加して、毎月300枚くらい名刺交換をします。なんで、冨田社長がこんな会合に出ているんですか、と言われるくらい、お務めと思って、参加しています。やはり、『人と会うのが、ビジネスの基本』ですから!」
―そのノウハウが本書には詰まっている、と。
「交流会なんか参加しても確率が悪いとバカにする人も多いですが、交流会に出ても成果が出ないのは、交流会への参加の仕方が悪いということがあります。本書に掲載した「目からウロコの交流会の徹底活用術」は、私がこの数年間の交流会回りの奮闘の中で得た実践的なノウハウがぎゅっと、詰まっています」
―本書は企業というより個人向けに書かれた一冊ですが、それはどうしてなのでしょうか。
「私は、会社を良くするためのコンサルティングを企業向けに行っていて、普段は個人向けの対応はしていないのですが、この本は個人向けに書きました。それは、会社は一人ひとりの個人から成り立っているわけですので、会社が良くなるためには社員である個人一人ひとりがパワーアップする必要があります。一人ひとりが良くなれば、会社も良くなりますし、会社が良くなるとしいては日本も良くなる、そう思って、この本を個人の営業マン向けに書きました。もちろん、私の日頃の経営コンサルティングのノウハウを盛り込んでいますので、経営者の方や個人事業主、独立した士業の方などにとっても、役立つ内容が満載です。とても、お得な本だと思いますよ!」
―社員一人ひとりがレベルアップするために、社員教育も重要だと思いますが、様々な企業の経営者が言うように、なかなか教育ができていない部分が悩みとしてあると思います。
「もちろん、企業は、日々の業務の中や研修を通じて、営業マンの教育を行っています。けれども、上手くいかない。それは、これまで、経営者や上司の方の世代がやってこられた日本型の営業スタイルが通用しなくなってきているということなんです。にもかかわらず、上司や先輩は従来の営業スタイルで教えるしかない。それしかわからないですし、外部環境の変化をなかなか捉えるのは難しいですから。
グローバル化が進む中で、日本の企業もアメリカ的や中国的なやり方を少しは取り入れて、営業スタイルを変えてみてはどうでしょうか?というのが私の提案です。もし今、営業がうまくいっていないのであれば、やり方を変えてみることが大切で、“労多くして実り少なし”の努力をしてしまっているかも知れません」
―従来の営業スタイルの特徴について、足しげく通うということのほかにどのようなものがありますか?
「例えば、この本の冒頭にも書いていますが、謙虚すぎる点ですね。日本では「謙遜は美徳」という風土が強いため、契約書やお金のことは、なかなか話さず、最後に話すようにしてしまう。それこそ会社のパンフレットですら、申し訳なさそうに、面談の終わりのほうになって出す方がいますよね。お時間がある時にお読みいただけたら…と言われるのですが、面談が終わった後に、パンフレットを読む時間なんて、忙しい人だったら、ないですよね。
あと、士農工商の影響なのか、営業を悪いこと、いやしいことと卑下している風土もまだあります。そもそも営業活動はお客様にとって必要なサービスや商品をお届けする活動であり、その対価としてお金を払っていただいています。自社が提供しているサービスや商品が、社会やユーザーのためになるものであれば、営業って、ほんとうに尊い活動なんです。
今の時代、企業と企業の長期のお取引関係が崩れてきたため、一刻も早く売上を立てないといけない。だから、恥も失敗もかけ捨てて、ガンガン営業取りに行かないといけません。自分の思っている方向に話が進むように、あえて空気を読まず、時としてKY(空気を読まない)になることも必要です。品が良いだけの営業をやっていたら、営業成果をなかなか出せない時代になっているように思います」
■ビジネスでのソーシャルメディア利用は実名以外ありえない
―現代の営業マンの傾向について、どのようにお考えですか? 一概に言えることではないのかも知れませんが…。
「会社に依存する傾向が強くなってきているとは思いますね。景気が悪いのもあるでしょうけど、今の会社で過ごしていれば安泰だという考えもあるでしょう。でも、私からすれば、実は依存することによるリスクのほうが高まっているんですよ。年功序列や終身雇用はとっくの昔に崩れてしまっているのに、日本のビジネスマンはその妄想にまだすがったままです。正直言うと、そんなことでは10年、20年先はないですよ。これから10年活躍するためには、営業スタイルを環境に合わせて変えて、新規開拓の営業力をつけない限り難しいと思います」
―また、企業としても社員が営業力を身につけなければ、生き残っていけませんよね。
そうなのですが、会社に依存する傾向は特に大企業に見られるんです。そもそも安定志向を持っている人の方が大企業を志望されますし、入社後も、前向きにガンガンいかなくても、5年、10年過ごせてしまったりするんですね。そうなると、新規での売上の立て方が分からないまま上司の立場になってしまい、若手に教えることができなくなります。
本当は、経営層や経営幹部層がそういったことを下に教えていくべきなのでしょうけど、日本人は学校教育の影響もあって、みんな横並びになって平均的にやるという風潮がありますが、それは会社組織でも同じです。スティーブ・ジョブズ氏が“Do Different!”と言ったように、自分の強みを生かして人とは違うことをやる、特に自分しかできないことをやるというのが大事なんです」
―それは、米国系の投資銀行からキャリアをスタートして、独立系ベンチャーキャピタル、大学の専任講師、大手信託銀行を経て、現在ベンチャー企業の社長をされている冨田さんならでは見解ですよね。
「これまでいろいろなポジションを経験してきたので、今の状況がよく見えるんですよ」
―本書では、自己アピールのためにソーシャルメディアの活用をすすめていらっしゃいます。冨田さんご自身もソーシャルメディアを活用されているんですよね。
「活用しています。以前、銀行に勤めていたときは、あまりにも規制が厳しくて、ソーシャルメディアを全く使っていませんでした。率先して使い出したのは社長になってからなのですが、今、改めて思うのは、大企業はあまりソーシャルメディアの活用について厳しく言い過ぎるのは良くないということですね。もちろん情報漏えいのリスクはありますが、孫正義さんがツイッターで社員全員に一斉連絡する、あのくらいの感覚で使えばいいんじゃないかなと思います。
そもそも、自分から考えや情報を発信しないと、有益な情報を得ることはできないんですよね。また、独立している人にとっては、情報を出していくことで信頼される部分もあります。
営業活動はコンタクト数が大事ですから、いかにコンタクト数を増やすかということが重要なのですが、リアルで交流会をまわっても、限界があります。だから、それをウェブやソーシャルメディアを使って補完していくイメージですね。そうすると、リアルでのシュート成功率は高まるんですよ。また、SNS疲れにならないように、がっちり考えないほうがいいです。私はブログを書くとき、一つの記事をつくるのにに10分以上かけないようにしています。誤字脱字も気にしません。早く記事を出すことに意味があると思わないと」
―ただ、情報を発信する上でのデメリットとなる部分もあります。
「確かに会社勤めをしている方は、安易に発言して、公式見解と受け止められてしまうリスクがありますから、発信しにくいところはあると思います。
また、上司にプライベートを見られてしまうのが嫌という方も多いですね。そういったときは、友達限定で公開するものと、外部に伝えたいものを分けて発信すればいいのではないかと思います。
自分のブランディングを考えて、どう情報を発信していくか、マーケティング的な感覚を持ちながらやっていく必要があるのではないでしょうか」
―実際にソーシャルメディアを使って、試しながら情報発信をしていってみる、と。
「そうですね。私も最初は使い方が分かりませんでしたが、少し慣れてくるとFacebookは思ったよりは簡単で、マニュアル的なものを読まなくても、やってみれば、案外わかるものですよね。毛嫌いしないことだと思います。ちょっとやってみる!という感覚が大切です。
本の中にも書きましたが、会社の“格”を決めるのは、これまでだったら資本金の額や売上高、業歴でしたが、現在はウェブやソーシャルメディアをどのくらい使っているかということがかなり重要視されるようになっています。だから、会社も個人も利用しないともったいないですよ」
―ただ、やはりインターネットに実名を晒すのはあまり…という人も多いと思います。
「そういう声もあります。ただ、それは、私から見れば自意識過剰になっていると思います。ビジネスは実名でやるもの。名刺を配っているわけですから…。その上、ビジネスで使おうとしているんだから、実名じゃなければ意味はありませんし、会社名もちゃんと明記しないといけません。
ただ、どこまで個人の情報を出すかは、人によって感覚が違うため、へんに無理する必要はないと思います。フォローしたい人の情報を閲覧するだけに留めることでも、使い方として間違っているわけではないでしょうから」
―では、最後にこのインタビューの読者の皆様にメッセージをお願いします。
「自分のいる会社や、身の回りのことだけに捉われず、思い切って交流会などに参加して、今まで付き合ったことのない方面を切り拓くように活動してみてください。そうすることで、新たな事業展開のネタが得られるかも知れないし、自分の人生の岐路になるような人と出会えるかも知れません。躊躇せずに、一歩前に進んで欲しいですね。
また、営業はいやしいものではありません。営業は、相手の方が必要としているサービスやモノを届ける活動です。そして、営業を担っている者が頑張ることで会社がうまくまわるようになり問題は解決するということをよく認識すれば、営業が好きになれるのではないかと思います」