夏になって、やっと子どもが乳離れすると、親子は連れだって餌探しに出る。だから夏から秋にかけて、人家の庭先にタヌキの一家がやってくることにもなるのである。
山の中で少ない餌を探しまわるより、人の家で餌がもらえるなら、そのほうがよっぽどいい。動物にとっての最大の関心は食物と安全だ。それはタヌキにしても同じことで、たとえ餌がもらえなくても、人の住むところには畑もあるし、ごみとして捨てられた餌もたくさんある。はじめは極端に警戒しながらも、人家の近くにタヌキが出没するようになるのは当然である。
タヌキの子たちは、秋おそくには成長して大人になり、親に追われてそこらへ散らばっていく。夫婦もペアを解き、また新たな相手を求めてばらばらになるらしい。高速道路でのタヌキのロードキル、つまり交通事故が一挙にふえるのもこのころである。
タヌキの数はふえている?
それでも近年、タヌキの数はふえているらしい。昔からタヌキは、日本の中型獣の中では数が多いほうだった。里に住む人々はしばしばタヌキの姿を見かけていた。タヌキが人を化かすという話も、そんなところから生まれてきたのかもしれない。
いずれにせよ、人間のおかげで豊かになった餌に頼って、いろいろな野生動物が今、ものすごくふえているようだ。そしていろいろな問題もおこっている。庭先にかわいらしい姿を見せるタヌキたちも、その例外ではない。タヌキとほんとうに親しくつきあえるようになるには、どのようにしたらよいのだろうか?
■冬の越しかた
池の昆虫たちの冬越し作戦
昔の冬は今よりずっと寒かったような気がする。そんなころ、近くの池の冷たい水にいる虫たちが、冬はどうしているのか心配になった。
当時は本も少なかった。いわゆる自然探求に熱心な先生たちの本を見てみると、池の昆虫たちは陸上へ上がり、暖かい土の中で冬を越します、と書かれている。
さっそくぼくも探してみた。池の近くのよく日の当たる乾いた斜面を掘ってみると、ほんとだ! 土のごく浅いところに、小さな水生昆虫たちがたくさん集まって眠っていた。掘り出されて日に当たると、ゆっくり動きだす。かわいそうに、眠いのを起こしてしまった。ごめんよ、といってまた埋めもどした。