書評
世には「自己啓発書」というジャンルの書籍が星の数ほどある。
星の数ほど、は言いすぎかも知れないが、実際書店に行ってその棚を見て欲しい。
「こんなにあるのか」と、驚くことだろう。しかも書籍の入れ替わりが凄まじく早いのだ。
1ヶ月も経てば、平積みにされている本はほぼ変わっていたりする。
さて、本書である。
本書は仕事を効率化させるための心得や考えを述べた自己啓発書だ。
しかし…確かに「自己啓発書」といえば「自己啓発書」なのだが、うーん、なんと言えばいいのだろう。平均的なそれとは、少し(微かだが)色が違うように思える。
とてもジャーナリスティックな、と言えばいいだろうか。
とにかく、そういう雰囲気が漂ってくるのだ。
それもそのはず、著者の日垣隆氏は様々な職業を経験してきたジャーナリストである。
転職2回失業3回とはプロフィールに堂々と書いてある輝かしい(?)経歴だ。
そこから培われた多角的な視点と、物事の捉え方が、本書(日垣思考法)の大前提となっているのは間違いないだろう。
(そもそも、『ラクをしないと成果は出ない』という人を食ったような本書のタイトル自体が、それを体現しているのだが)
仕事の鉄則である100項目。
著者が風呂上りにこの100項目をメモ帳に7時間で起こしていったのが2006年7月のこと。
それから項目の中身である「本文」を練り上げていくのに、なんと2年の歳月を費やしている。それだけに、文章が洗練されており、とても読みやすい。
また、自己啓発書によく見られる、読者の心を和らげようとする文体はほとんど見られない。つまり、読者を突き放しているのだが、その突き放し具合も素晴らしい。
最後に、読み終わった者として、一言。
「ラクをして成果をあげることなんて、本当にできるのか?」に対する答えは、「成果をあげること出来ますよ」ではない。
「ラクをしないと今より高い成果をあげることはできません」の方がしっくりくる、と思う。
(新刊JP編集部)