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「黒幕」を知れば痛みは治る! ──あなたの痛みが治らない「本当の理由」

著者インタビュー

― 『「黒幕」を知れば痛みは治る!─あなたの痛みが治らない「本当の理由」』についてお話をうかがえればと思います。本書で書かれている「痛みの「黒幕」が痛い場所にあるとは限らない」という子さんのお考えはとても納得できるものでした。 たとえば「肩こり」の場合、黒幕となっていることの多い箇所はどこなのでしょうか。

子 : その人の生活状況にもよるのですが、たとえば座ってデスクワークをする人に多いのが、股関節や足の付け根の筋肉が固く縮こまってしまった結果、上半身が前傾してしまって肩に負担がかかるというパターンです。

― 心当たりがあるお話です。腰痛に関してはいかがでしょうか。

子 : デスクワークの方の腰痛はタイプが二つあって、背中が丸くなることによって腰痛を引き起こすパターンと、肩こりと同じく股関節が固くなって腰痛が起きるパターンがあります。
この本で書いている“痛みの「黒幕」”とは、簡単に言ってしまうと「普段の癖」なんですよ。誰にでも普段から意識しないでやっている姿勢の癖や動きの癖があると思うのですが、その癖を長期間続けることによって、借金が増えるように体の歪みが蓄積されていき、あるタイミングで痛みが出るようになる。
ただ、蓄積した結果痛くなるということで、本人が原因に気がつかないんですよ。話を聞くと「急に痛くなった」と言うんですけど、本当はそうじゃないことが多いんです。

― たとえば右手で頬杖をつく癖がある人が、今度は左手で頬杖をつくことで骨格的にバランスが取れたりといったことはあるのでしょうか。

子 : そこが微妙なところで、右手で頬杖をつく癖がついてしまっているものを逆の手に変えても、背骨が右側に曲がったまま左に傾いただけ、ということになる可能性もあります。癖と逆のことをやったからといって左右対称になるとは限らないんです。

― 慢性的な体の痛みは、肩こりでも腰痛でも痛みが起きるメカニズムとしては共通するところが大きいのでしょうか。

子 : 本にも書いたのですが、縮んだ筋肉が原因で周囲の筋肉が引っ張られるということでいうと、メカニズムは一緒といえるかもしれませんね。

― 痛みの「黒幕」は普段の癖だとおっしゃっていましたが、普段の癖によって使わない筋肉が縮こまってしまうわけですか?

子 : いえ、むしろ逆で、使いすぎて縮こまることが多いです。 あまり意識することはないかもしれませんが、椅子に座るだけでも腸腰筋という、股関節付近の筋肉を使っています。この筋肉が緊張していることによって、上半身が支えられているわけですが、緊張して縮みすぎると上半身は前かがみになって、そうなるとバランスを取るために今度は顎が上がります。どんどん無理な体勢になってくるわけです。

― 子さんは街中で人の態勢や体の動きを観察するのがお好きということですが、やはりどこかしら体が歪んでいたり、動きがおかしい人は多いのでしょうか。

子 : そうですね。やっぱり楽をしようとして、体重をどこかに預けてしまうんですよ。筋肉よりも骨や関節の方が支える力が強いので。立っている時も、両足に均等に体重をかけてまっすぐ立ち続けると筋肉を使いますが、膝をロックして片足に体重をかけると骨で体重を支える形になって、筋肉はあまり使わずに済みます。そちらの方が楽なんです。
でも、こういうのが長期間積み重なると、体が歪んでしまったりするわけです。若い子を見ていても、今はかわいい女の子だけど、この姿勢では将来膝が変形してくるな、とか思うことがありますよ。10年後、20年後に気づいても遅いので、若い人にも是非読んでほしいですね。

― 女性といえばヒールの高い靴を履くことが多いですが、体格のバランスが崩れやすいのではないですか?

子 : そうですね。ハイヒールを履くと、距骨という足の甲の骨が前にズレてきます。それが股関節や首の痛みに繋がりやすいんです。

― そういった体の痛みが出ないようにケアする方法はありますか?

子 : 足指の掴む力を鍛えることです。さっきもお話ししたように、ハイヒールを履くとどうしても距骨が前に出てしまうのですが、足指の掴む力が強ければブレーキになってくれます。普段からからこの力を強化しておくといいと思います。

また、女性は腰の形が男性と違っていて、普通に立っていても男性より少し前傾気味になります。それでハイヒールを履くものだから余計に前傾することになって、腰を痛めやすい。

ただ、これは下腹部に力を入れてグッと締めることで解決できます。足指と下腹部の二点を、ハイヒールを履く方は気をつけていただきたいですね。

― 本書では、痛みの「黒幕」を探る方法が書かれていますが、それ以前に体を痛めないためにどんなことをすべきなのでしょうか。

子 : 本の中にストレッチのやり方が載っているのですが、ポイントは左右差をチェックすることです。
なぜ体が歪むかというと、利き腕を使いやすくなるからという一面もあるので、ある程度の歪みはあってもいいのですが、あまり体の左右差が大きくなってしまうと痛みに繋がってしまいます。だから、普段から左右差を意識してなくすように体操や運動をしていると痛みは防げると思います。

― ストレッチ以外ということですと、散歩やジョギングなどがいいのでしょうか。

子 : ラジオ体操とか、シンプルなものでいいんですよ。簡単なことをいかに左右を意識してやるかというのが大事です。

― 私たちはどうしても体が痛いと「マッサージ」「湿布」という発想になりがちです。痛みの原因が他の場所にあるとすると、この方法では治りません。

子 : 炎症ですとか、その部分自体を痛めているのであれば湿布やマッサージは効果があります。ただ、それで治らない場合は痛みの原因となっている場所が別にあると考えていただきたいです。
通常、炎症は3日から4日で収まるとされているので、「3、4日湿布を貼っていても痛みが取れない」というのは、別の原因を考えてみるタイミングの一つの目安になると思います。

― 体の痛みの「根本的な解決」となると、どんなことが必要なのでしょうか?

子 : 「黒幕」になっている箇所、つまり筋肉が縮まってしまっている箇所をいかに見つけて緩めてあげるかということです。筋肉を緩める方法はいくつかあって、ストレッチで伸ばしてあげるのもいいですし、運動をするのもいいです。温めるというやり方も筋肉を緩めて弾力を取り戻すのに有効です。

― 固くなっているところをストレッチなどで伸ばしてしまうと、今度はその部分が痛くなってしまうのではないかと思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

子 : そこは刺激の入れ具合次第といいますか、力の入れ方次第ですね。たしかに、あまりぐいぐい強く伸ばしてしまうと、「伸張反射」というのが起こって、筋肉がかえって縮んでしまいますから、あまり強く伸ばさずに気持ちいいくらいで止めておくのがいいのではないかと思います。

― 慢性的な痛みを抱えやすい人、抱えにくい人に特徴はありますか?

子 : 同じ作業を長時間続ける人は、やはり慢性的な痛みが出やすいです。それと、これは経験から感じていることなのですが、性格的には真面目な人は痛みを抱えやすい。なぜかはわかりませんが。真面目な人ほど、力の抜き方はうまくないというのは言えると思います。そういう人ほど左右差を意識して体操をしていただきたいですね。

― 仕事中など、手が離せない時にどうしても体が辛くなってしまったら、どんなことをすればいいですか?応急処置的にできることがあれば教えていただきたいです。

子 : これは難しい質問ですね。痛い場所にもよるのですが、たとえば腰痛であれば冷やすのは一つの方法です。冷やすことで痛覚刺激が麻痺するので、一時的に痛みが和らぐことがあります。ただ高齢者の場合は、冷やすと患部が固まりやすいので、逆に温める方が効果的です。

― 最後になりますが、肩や腰などの痛みに悩む方々に向けてメッセージやアドバイスがありましたらお願いします。

子 : 余裕がないと、体の「痛い部分」だけにしか目が行かないものなのですが、もしその痛みが長引いているなら、その痛みの原因は別の場所にあるのではないかという視点を持ってみてほしいと思います。

人間の体っておもしろいもので、何もしていないのに痛みが取れることもあるんですよ。でもそれって治ったわけではなくて、脳の働きで一時的に痛みがなくなっているだけで、状況はどんどん悪くなっていきます。

本当にひどい状態になる前に、痛みの「黒幕」を見つけて、根本から治していただきたいです。自分だけでなく親の世代にも使える内容ですので、周りに体の痛みに悩んでいる人がいるなら、この本を手渡していただけたらうれしいですね。
(新刊JP編集部)