新刊くん
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  • 著者:近藤誠
  • 出版社:梧桐書院
  • 定価(税込み):1,785円
  • ISBN-10:4340120022
  • ISBN-13:978-4340120024
「がんもどき理論」とは?放っておいても転移しないがんがある

「がんもどき理論」とは、がん(固形がん)を、ほうっておいても転移しない「がんもどき」と、治療しても転移してしまう「本物のがん」とに分類する考え方である。

すべての癌は、発見された時点で、別の臓器への転移(臓器転移)があるかないかのどちらかです。論理的に自明のことですが、問題はその先にあり、データを検討すると、臓器転移がない癌は、治療しないで放置しても転移しない、と考えられるのです。そこで私は、臓器転移がない癌は、今後も転移しないという意味をこめて、「がんもどき」と名づけました。これに対し、臓器転移がある癌を、治療しても治らないという意味で、「本物のがん」と呼んでいます。(『あなたの癌は、がんもどき』梧桐書院より抜粋)

この理論は、近藤誠医師により、「文藝春秋」など雑誌への論文掲載や『患者よ、がんと闘うな』(文藝春秋)をはじめとした著作で提唱され、医学界で大論争を巻き起こした。

転移するかしないかは、遺伝子のプログラムで決まっている

「本物のがん」と「がんもどき」との違いは、転移能力の有無にある。その違いは、どこからくるのか? そもそも、正常な細胞とがん細胞は、どこが違うのだろうか?

人体を構成するすべての細胞は、もとをたどれば一個の受精卵である。つまり、すべての細胞は共通の、約二万個からなる遺伝子を持っており、そこから臓器や体の部位によって、二万個のうちのどの遺伝子を働かせるかがプログラムされ、決まっている。そのプログラムによって生成される物質(タンパク)によって、各部位がそれぞれの機能を果たしている。

がん細胞も例外ではなく、正常細胞と同じ遺伝子を持っている。そして、そのプログラムの違いによって、正常細胞か、「本物のがん」か、転移能力のない「がんもどき」かが決まっているのである。

「早期発見・早期治療」の医療は有害である

がんで人が死に至る理由は、がんが器官を塞ぐなどして人体の機能を阻害するため。これは逆にいえば、がんは、人体の機能を阻害しない大きさであれば無害ということである。 日本の医療を取り巻く環境では、がんは「早期発見・早期治療」が至上とされており、がんが見つかったとたん、その治療のために効果に疑問のある抗がん剤の使用や、性急な手術がおこなわれる傾向がある。 しかし、がんもどき理論に従えば、このような早期治療は、害のない「がんもどき」や、発生したときから転移が起こっているためにそこだけ治療しても意味がない「本物のがん」に対して、手術や抗がん剤投与を行って、患者を無駄に消耗させていることになる。

それでは、患者は、無駄な治療で苦しまないようにするにはどうすればいいのか。 近藤医師は、がんを発見後、症状が出るまで放置してそれまでと変わらない日常生活を送り、症状が出たあとはそれを抑える治療をする、という選択肢を示している。実際にそのような選択をした患者は、これまでにも多く存在している。 今後患者は、医者のすすめるままに手術や治療を行うのではなく、専門家へ疑問をぶつけ、みずから考え、選択していかなければならない。