東京、大阪、名古屋から日本の躍進が始まる!
今、世界で活躍するビジネスマンたちが「東京」に注目しているという。
人口1000万人を超える大都市でありながら、治安は良く、コンビニエンスストアも多い。そして何よりも、東京の鉄道交通網の利便性に高い評価を下しているというのだ。
どんなに情報通信技術が発達しても、ビジネスにおいて生身の人間同士が会って話すのは重要なこと。その上で、23区内でなら1時間もあればだいたいのところに行けてしまう東京の鉄道網はとても使いやすいのだ。
そして、それらの特徴は名古屋や大阪といった大都市にも共通するものがある。
経済アナリストの増田悦佐氏は本書で、日本経済の最大の特徴である“エネルギー効率”の高さに触れ、この東京・名古屋・大阪という三大都市圏には日本経済を飛躍的に成長させる底力があることを説いている。
エネルギー効率とは、国民経済の規模を支えるのに必要なエネルギー消費量の効率の良さのことで、実は日本はこの効率が非常に良いのだという。日本の国内総生産(GDP)は世界の総生産の12.1%を占めているが、そこにかかったエネルギー量は世界の4.2%。なんと、世界平均からすると、同一額のGDPを3分の1のエネルギー消費量で生産できる強みがあるのだ。
この効率の良さを支えているのが、日本が誇る東京や大阪、名古屋といった大都市圏の交通ネットワークである。
例えば、毎日ほぼ確実に100万人前後の人が通り過ぎていく場所は世界中にたった4つしかないという。新宿、池袋、渋谷、そして大阪駅及び梅田駅の周辺地区だ。これだけ人の集まるところは世界中を探してもないのである。
さらに、これら東京、大阪に、名古屋を含めた日本の三大都市は、鉄道網をはじめとしたビジネスを活性化するために必要な要素がほとんど揃っている。しかも、この三大都市はわずか5~600km圏内でつながっている。東京~名古屋~大阪間は新幹線を使えば1時間半と1時間の距離だし、東京~大阪間でも2時間半だ。さらにリニアが走れば東京~名古屋間は40分、大阪間は60分になる。この3つの都市の連携が上手く進めば、世界に類のない活気溢れる日本が戻ってくるのは明らかではないだろうか。
しかし、増田氏はその発展を妨げるものがあると指摘する。それは、都市開発への政府の介入・おせっかいだ。
増田氏は、経済が活性化するためには、人が自由に集まり、モノやサービスを値段に応じて売ったり買ったりするという市場の仕組みに任せてしまうことが大事だと考える。その上で、「官僚が頭で考えたとおりに人間を配置すれば、そこに街が育つという発想自体が、とんでもない思い上がりなのだ」と、田中角栄の列島改造論以来2000年代初頭までの日本の政策を痛烈に批判するのだ。
都市経済を活性化することが、これからの日本の経済を活性化するための鍵であることは確かだろう。そのときに便利で、効率が良く、住みやすく、そしてビジネスがしやすいという強みを持つ、東京・名古屋・大阪の更なる成長が求められる。
いっときアベノミクスがもてはやされたが、ジャブジャブの過剰融資という金融政策と、公共土木事業の拡大という財政政策の古めかしい二本柱の上に、ちょこっと国家戦略特区という都市政策の帽子をかぶせただけのしろものだ。しかし、三大都市圏という世界に誇る強みを生かせるのは、民間の創意工夫だけだ。便利なところ、より良い仕事口があるところに住もうと集まってくる人々がなるべく自由に動き回れるようにするのが、政府の役割だ。あとは放っておいていい。それが経済復興を成し遂げるための起爆剤になると増田氏は強調する。
(新刊JP編集部)
増田 悦佐 (ますだ えつすけ)
1949年東京都生まれ。
一橋大学大学院経済学研究科修了後、ジョンズ・ホブキンス大学大学院で歴史学・経済学の博士課程修了。
ニューヨーク州立大学助教授を経て帰国、HSBC証券、JPモルガン等の外資系証券会社で建設・住宅・不動産担当アナリストを務める。現在、株式会社ジパング経営戦略本部シニアアナリ
スト。
『地価暴落はこれからが本番だ。』『高度経済成長は復活できる』『東京「進化」論』『世界は深淵をのぞきこみ、日本は屹立する』『デフレ救国論』『経済学七つの常識の化けの皮をはぐ』ほか著書多数。
■日本は経済活動のエネルギー効率ではぶっちぎりの世界一
第1章
21世紀のキーワードは都市化とエネルギー効率
■20世紀を通じて、都市化こそ経済成長の源泉だった
■90年代の日本経済の低迷も「均衡ある国土の発展」路線による政策不況だった
■路地が生きている大都市こそ、日本経済最大の潜在力
■伝統を大事に保存するだけではなく、伝統とともに発展する街の4条件
■まちがっても、アメリカ型居住地差別をマネしてはいけない!
■デトロイト市政はミシガン州政府に接収されてしまった
■なぜ欧米の大都市には、均質な大都市圏が育たないのか?
■サービス業経済は、大都市圏の規模が大きいほど多様な需要を顕在化させる
■都市居住こそ環境に優しい生き方だ
■日本の国債総額膨張は、政策の不在ではなく、政策の過剰を示している
■「列島強靭化」は角栄時代の金権政治に日本を逆戻りさせる愚策
■「借金王」国家による有効需要創出が成功しないのは、すでに実証済み
■リダンダンシーは、競争の激しい地域では自然に形成されている
■多様性に特化できる圏域人口1000万人以上の大都市こそ、経済成長の柱
■人口の純流入も人口密度も経済成長に貢献するためには、高い敷居がある
■それでは、日本の第一次産業地帯は人口が減少しっぱなしで衰退するのか?
■農業だけではなく、林業も漁業も展望は明るい
■少子高齢化で労働力人口も減少するからこそ、人口の大都市圏集中は歓迎すべき
第2章 都市化の背骨には、鉄道が必要不可欠
■日本経済だけが突出して高いエネルギー効率を維持してきた理由は何か
■そぞろ歩きさえ営利事業化するアメリカ
■日本経済の意外な得意分野、物流こそ不動産投資の次の焦点
■なぜ先進諸国の中で、日本だけ鉄道が営利事業として健在でいられるのか?
■かくも長き城壁の不在が、どんどん拡大する大都市をつくった
■鉄道網がネットワーク性を持っているのも、とても大きな強みだ
■日本経済のエネルギー効率は鉄道のたまもの
■鉄道の自動車に対する最大の優位は省エネ性能と、省スペース性能にある
■なぜ日本の鉄道だけが大都市旅客交通の大半を占めつづけたのか
■鉄道の高いエネルギー効率が真価を発揮できるのは、高密大都市においてのみ
■通過式総合駅の発達が、日本の鉄道網に高いネットワーク性を与えた
■変われば変わる大躍進、東急目黒線の四半世紀
■とうとうアメリカでさえ、クルマ社会がもたなくなってきた
■クルマ社会終わりの始まり
■クルマ社会後の日米欧で、都市生活はどうなっているのだろうか?
世界中の大都市は東京をまねるか、亡びるかの岐路に立たされる
■10~30年代に理想の大都市と描かれた高密大都市像を実現したのは日本だけ
■日本のもうひとつの強みは、貧乏くさいが広くて厚いプチ富裕層の存在
■都市の利点はどこにあるのか?
■世界最高のエネルギー変換効率ながら、大都市オフィス集積度は低開発国なみ
■そして、生活環境も良好とは言えない
■東京オフィス街最大の問題は、大規模ビル床面積の全体的な不足だ
■国際的に活躍するビジネスマンが、東京に注目しはじめたのはなぜか?
■国際金融ビジネスに適したオフィス環境とは何か?
■「今は良いが、働きやすさにやや疑問があり、将来が不安」という評価が出た六本木
■法人向けサービス業の感応度係数は突出して高い
■サービス業の労働生産性は、都市集中で20~50パーセントも高めることができる!
■企業家が喜んで払う税源をつくり出す―固定資産税を容積率スライド制に
■鉄道が衰退したアメリカの教訓を忘れないようにしよう
■内発的な経済成長のカギは何か? エネルギー効率と知的エリートが弱いことだ
■近代最初の覇権国家オランダは、手札をさらけ出してポーカーをやっていた
■ニューヨークが大発展を遂げたのも、周辺地域にめぼしい資源がなかったから
■気がついたら、日本が世界経済の覇権国家……かもしれない
■債務累積は、円安のようなバカげた政策を推進しなければ深刻な問題ではない
■アメリカにとって世界一手ごわい国のトホホな自画像
第4章
製造業も物流も、サービスも小売もこれからが本領発揮
■まだまだどころか、これから日本の製造業が本領を発揮しはじめる
■日本の東京・大阪圏では、通勤・通学客の約半数が鉄道を利用している
■なぜ、東京のオフィスワーカーの対全国シェアは低下しつづけたのか?
■工業(場)等制限法は、天下の悪法だった
■工業(場)等制限法撤廃は、着実に成果をもたらしている
■生産性で優位に立てる都府県は、やはり三大都市圏に絞られてきた
■団塊の世代の大量退職も、人口の三大都市圏集中で十分補える
■Jリーグが教えてくれる地方中規模都市の生き方
■高齢者層の需要喚起に、積極的な花見酒経済の振興―趣味の企業化を!
■日本の地域格差は世界最低水準
第5章
都市再生―何をなすべきか?
■優先順位は、以下の通り
■そのために必要な施策は?
■都市再生―不動産業は何をなすべきか?
■都市再生―高度成長復活の鍵は、大都市圏通勤鉄道網の拡充にあり
■都市再生―リニア新幹線で何が変わるか?
■日本の大都市圏の不動産価値は21世紀を通じて確実に高まっていく
■アベノミクス戦略第3弾が失望売りを呼んだワケ
■今さらインターナショナルスクールや外人医師が活性化?―国家戦略の怪
■日本は世界最強の経済
■クルマ社会は格差社会、鉄道社会は大衆社会
■日本型鉄道社会の貧相な景観こそ、守るべき平和で豊かな社会の核心をなす
■日本経済最大の問題は、邪悪な支配階級ではなく政策の失敗
■知的エリート主導型社会は、出口のない袋小路にはまりこんでいる
おわりに