書籍名:ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣 コミュニケーション編
著者名:美月 あきこ
出版社:祥伝社
定価:1,470円(税込)
ISBN-10:4396613849
ISBN-13:978-4396613846
成功者のコミュニケーションはココが違う!
―本書『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣 コミュニケーション編』は美月さんがCAをされていた頃に出会ったファーストクラスのお客さんを例に、「人たらし」になるためのコミュニケーション方法を紹介しています。前作『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣』はベストセラーとなりましたが、今回「コミュニケーション」に特化した本を書かれた理由をお教えいただけますか。
「前回は“習慣”がメインで、“こういう人がファーストクラスに乗っていらっしゃるんですよ”ということをお伝えしました。今回は“では、どのようにしたら、ファーストクラスに乗るような成功者のコミュニケーション・スキルを手に入れることができるのか”という、「実践編」の意味で書きました」
―本書によると、ファーストクラスのお客さんの中でも、特に創業社長の方々に「お手本にしたい」方が多かったそうですが、こういった方々は一見して経営者だとわかるものなのでしょうか。
「事前にお客様の情報をいただいているので、どんなお客様が搭乗されるかはわかるんです。そのうえでドアサイドに立つのですが、ファーストクラス・ビジネスクラス・エコノミークラスのお客様がシャッフルされていても、ファーストクラスのお客様は見ただけでわかりますね。歩く姿勢がとても綺麗なんです。また、必ず私たちに視線を合わせて下さるのも、特徴の1つだと思います」
―創業社長の方々はどのように「人たらし」たるコミュニケーション・スキルを身につけていったとお考えですか?
「元々、人とのコミュニケーションが得意だった方もいるでしょうし、社会でもまれながら人間関係の繋がりの大切さに気付かれて、コミュニケーション・スキルを磨かれた方もいると思います。どなたがどちらという結論は出せませんが、やはりビジネスを拡大・発展させて行くには様々な人の力が不可欠だと思いますので、創業社長の方々がコミュニケーションに非常に気を使っていらっしゃるというのは接するだけでわかりますね」
―そのような方々とのコミュニケーションや、彼らの振る舞いの中で、美月さんが印象に残ったのはどのようなものでしたか。
詳しくは本書をご覧頂ければと思いますが(笑)、皆様とても気持ちの良いコミュニケーションをされます」
■ファーストクラスの乗客の「困った」エピソード
―長くCAとしてご活躍されていらっしゃると、そのような素晴らしい方々だけではなく、少し困った振る舞いをするお客様にも出会うと思います。美月さんご自身の中で、印象に残っている困ったお客様はいらっしゃいますか?
シートを後に倒している状態だったので足元が遠く、靴下を履くのが大変だったんです。聞き間違えたのかと思って私が思わず訊き返すと『靴下よ、靴下。わからない人ね。後ろの○○を呼んできてちょうだい』とおっしゃって、お付きの方を呼び出したんです。お付きの方はエコノミークラスだったのですが(笑)」
―その方が靴下を履かせた、と。
「そうです。二人いたんですけど、その二人が片足ずつ(笑)」
―ファーストクラスに乗る方々というのは、フライト中はどのようにして過ごされるのでしょうか。
こんなことを言うと怒られてしまいそうですが、エコノミー・ビジネス・ファーストで、カーテン一枚隔てて世界が違うんだなというのを感じましたね。エコノミークラスは観光でお乗りになる方が多いので、和気あいあいとして楽しい感じ。ビジネスクラスは仕事モードで、パソコンに向かっている方が多かったです」
―CA時代の一番困ったエピソードを教えていただけませんか?
「機内食にまつわるエピソードなのですが、機内食は製造してから時間が経っているのでパサパサだったりして、どうしても地上で食べるお食事にはかないません。それがお気に召さなかったお客様にテーブルクロスごとひっくり返されたことでしょうか。“こんなもの食べれるか”“よくこんなもの恥ずかしげもなく出せるね”とも言われました」
―その時はどんなご対応をされたのでしょうか。
「大変申し訳ございません、と謝ります。お客様はおいしいものを召し上がってこられてお口が肥えていらっしゃるのでお口に合わず申し訳ございません、ということを言うとお怒りが和らいだようでした。クレームをつけられたときは、お客様のおっしゃられたことを一旦受け入れるというのが大事です」
―CAというと、女性が多い職場というイメージがあります。そのような職場ならではの、人間関係の難しさはありましたか?
「上下関係がはっきりしている職場だったので上(先輩)の方を立てないと、というのはありましたね」
―女性が多い職場では、ミスをするとかなりきつい口調で怒られるというイメージがあります。
「そういう方もいらっしゃいましたね。客室内でお客様に聞こえるように怒る方もいましたし、ギャレー(飛行機内で食べ物の調理や準備をする場所)の中やお手洗いの陰で怒る先輩もいました。フライト中なのに、今すぐ飛行機から降りなさいと言われたこともありますし。お客さんの前で怒られるとプライドがズタズタになります。相手のプライドを傷つけたら反抗心しか芽生えないんだなというのは感じました」
―そういった、いわゆる“恐い先輩”に対して、美月さんはどう接していらっしゃったのでしょうか。
「社歴の浅い時はいろいろ失敗をして怒られたりしていました。だから、『今日は宜しくお願いします。ご一緒します○○です。前回はこんな失敗をしてしまいましたけども、あれから○年経って成長していると思いますので、よろしくお願いします』というカードを書いて、フライトの前に読んで頂くように、その先輩の目に必ずつくところにそっと置いておいたんです。そうすると、すごく恐くて有名だった先輩も、『今日は見ておいてあげるから』と言ってサポートしてくださるようになりました。こういうことは人間関係でとても大切なことなんだなと思いました」
―それはかわいい後輩だと思うでしょうね。
「思うでしょうね、きっと(笑)仕事はできないけど面倒見てやろうかな、という位に思ってくださっていたと思います。廊下ですれ違った時などに、『元気?』とか、『上司誰になった?』とか声をかけて下さるようになりましたから。そういうことは心強かったです」
―今、美月さんが、ご自身が経営されている会社のスタッフを叱る時に心がけていることはありますか?
これは口頭で伝えるのももちろんいいですが、カードやメモで伝えるとより効果的だということもCA時代に経験しました」
―ビジネスの場面では、あまり好きになれない人とでも業務上話さなければならないこともあります。そういった人とでもうまくコミュニケーションをとるコツがありましたら教えてください。
私は、『恐い先輩』のエピソードで申し上げたように、カードを使って自分の気持ちを伝えています。また、メールを送る際には事務的になりがちなので、あまりビジネスライクになり過ぎないようにしています」
■「“空のロマン”を再確認していただきたい」
―ところで美月さんがCAになろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
当時は空港で働いているお姉さんや、整備士やマーシャラー(着陸した航空機を駐機場へ誘導する職員)の方もカッコイイと思っていて、航空関係の仕事全般にすごく憧れていました。もちろん、CAも航空関係を支える仕事の1つですから、自然に憧れていました」
―他の職種には目がいきませんでしたか?
「デパートとかホテルとか、人と接する仕事はいいなと思っていましたね。実家が自営業だったこともあって、私も会社勤めはしても、最終的には事業をしたいなと思っていました。だから、何の仕事をするにしても人付き合いを学べる仕事が良かったんです」
―そうすると、CAというのは航空関係の仕事でなおかつ接客業であるわけですから、見事、夢がかなったというわけですね。
「そうですね。航空業界にも入ることができましたし、CAになることもできましたし、また成功者の方々にも会うことができましたので良かったと思います」
―本書をどんな方に読んでほしいとお考えですか?
(取材・記事/山田洋介) 「やはり、コミュニケーションに悩んでいらっしゃる方ですね。コミュニケーションはすごく難しいとか、人付き合いは大変という先入観をお持ちの方は多いと思いますが、案外ハードルは低くて、ちょっとした気づきや心がけでコミュニケーションはうまくいくということを知っていただきたいです。この本で取り上げたファーストクラスのお客様にしても、すごいことをやっているわけではなく、私達が普段忘れている基本のキをしっかりやっていらっしゃるのだということをお伝えしたいです」