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腰・ひざ 痛みとり「体芯力」体操

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解説

早い人だと、20代で発症してしまう腰痛。

慢性的な痛みに悩まされ、巷にあふれる情報をもとに、体幹トレーニング、筋トレ、ストレッチ、マッサージなど様々な方法を取り入れてみたという人も少なくないのではないか。

だが、かけた時間やお金のわりに、効果をいまひとつ実感できずにいるのなら、知っておいてほしい言葉がある。それは「体芯」だ。

「体幹」とは違う「体芯」とは何か

そもそも腰痛の原因とは何なのだろう。

腰・ひざ 痛みとり「体芯力」体操』(青春出版社刊)の著者で、これまで高齢者を中心に3万人以上のパーソナルトレーナーを務めてきた鈴木亮司氏は、「腰痛の原因は、まだはっきり解明されていない」としながらも、「体芯に凝りがあると腰痛になりやすい」と指摘している。

体芯とは、みぞおちの裏側あたりの背骨から股関節につながっている「大腰筋」のこと。上半身と下半身をつないでいる唯一の筋肉であり、足と腰を動かす上で欠かせない部分だ。

大腰筋・股関節の図

なぜ体芯が凝ると、腰痛になってしまうのか

なぜ、体芯の凝りが腰痛につながってしまうのか。
その説明に入る前に、私たちの筋肉の仕組みについて簡単におさらいしておこう。

どんな筋肉も、その表面は筋膜に覆われている。この筋膜が運動不足や血行不良、疲労などによって硬くなったりよじれたり、引っ張られたりすることで痛みが発生してしまう。

特に大腰筋は股関節を通して足を動かすさまざまな筋肉とつながっているため、ここに不具合が出ると、その周辺の腰まわりの筋肉にも悪影響が出てしまう。逆にいえば、この大腰筋の凝りを解消することができれば、腰痛改善への効果が期待できるというわけだ。

体芯の凝りを取るには、体芯を鍛えるべし

ではどうすれば、体芯の凝りを取ることができるのか。
本書で紹介されている、「痛みとり『体芯力』体操」を取り入れてみるのは、ひとつ有効な方法だろう。

この体操は、背骨を動かす「前後、左右、ひねる」の三つの動作に、股関節を動かす動作を積極的に組み合わせたもの。日本人が古くからおこなってきた身体の動かし方を踏まえて考案されたものだという。

ちなみに鈴木氏によると、日本人は西洋人にくらべて大腰筋が細い。そのため日本人は昔から、大腰筋を鍛えるための動きを日常生活に多く取り入れてきたのだそうだ。たとえば、そのひとつが「すり足」だった。

すり足は、足をあまり上げず、腰とひざを前へ出すことで進む歩き方。こうした歩き方をしていると骨盤がしっかり動き、背骨にねじりの動きが加わるため、大腰筋が鍛えられるのだ。

本書では他にも、相撲や歌舞伎の世界のトレーニング法にヒントを得た、大腰筋を鍛えるための体操が多数、紹介されている。しかも、どれも30秒ほどでできるものでトータル10分もあれば実践可能だ。

腰痛はもちろん、ひざ痛にも効果のあるメソッドなので、長年悩まされてきたという人は、参考にしてみてはいかがだろうか。
(新刊JP編集部)

インタビュー

歳をとるとともに、身体のあちこちに感じるようになる不調。
不調の出方は人によって様々だろうが、腰やひざに痛みや違和感をおぼえるようになる、というのはよくあるケースだろう。

そうしたとき、痛みを感じる部位そのものをケアしようとしてしまいがちだが、ケアすべき部位は身体の「もっと奥」にある。

そう主張するのは、『腰・ひざ 痛みとり「体芯力」体操』(青春出版社刊)の著者で、これまで高齢者を中心に3万人以上のパーソナルトレーナーを務めてきた鈴木亮司さん。

そこで今回は、鈴木さんがこう主張する理由、さらに腰痛やひざ痛の発生メカニズムなどについてお話をうかがった。

腰痛・ひざ痛の大元の原因は「大腰筋」にあり

著者・鈴木亮司さん写真

―― まずは本書の執筆経緯を教えていただけますか。

鈴木:私は普段、パーソナルトレーナーとして活動しています。具体的には、腰やひざの痛みを和らげようと、病院へ行ったり、筋トレをする等の努力をしているにもかかわらず、症状が改善しないという方の身体を見ているんです。

そうした活動を通じ、「身体の原理原則」に従うことの大切さを実感したことが執筆のひとつのきっかけになっていると思いますね。

元々、「大腰筋が疲労と硬くなると腰やひざに痛みが出る」という理論を説いていた鶴田昇先生のところで整体を、東大名誉教授の小林寛道先生からは科学の根拠に基づいた身体理論を学ばせていただいたことも大きかったです。

こうした実践や理論を背景に、身体の原理原則に従った運動をしさえすれば、努力しているという感覚をさほど持たずに、腰痛やひざ痛を和らげることができるということをお伝えしたくて本書を執筆しました。

―― 「身体の原理原則に従う」ということを具体的な形に落とし込んだのが、本書で紹介されている体芯力体操ですね。

鈴木:その通りです。腰痛やひざ痛の原因は、医学的にはまだはっきり解明されていません。しかし、これまで約16年間にわたって様々な方の身体を見てきたなかで、「体芯に凝りがあると腰痛・ひざ痛になりやすい」という実感が強くなっています。

体芯とは、みぞおちの裏側あたりの背骨から股関節につながっている「大腰筋」のことを指しています。これは、上半身と下半身をつないでいる唯一の筋肉であり、足と腰を動かす上で欠かせない部分といえます。

そこで、体芯の筋肉を動かし、体芯の凝りをゆるめるための体操を、ということでつくったのが体芯力体操でした。

―― 体芯が凝ると、なぜ腰痛やひざ痛になってしまうのでしょうか。

鈴木:どんな筋肉も、その表面は筋膜に覆われています。この筋膜が運動不足や血行不良、疲労などによって硬くなったり、よじれたり、引っ張られたりすることで痛みが発生してしまうんです。

とりわけ大腰筋は股関節を通して足を動かすさまざまな筋肉とつながっているため、ここに不具合が出ると、腰やひざの筋肉にも悪影響が出てしまいます。

逆にいうと、この大腰筋の凝りを解消することができれば、腰痛やひざ痛の改善に効果が期待できます。

―― ちなみに体芯力体操とは、具体的にどのようなものでしょうか。また、どれくらいの頻度で行なえばよいですか。

鈴木:体芯力体操は、背骨を動かす「前後、左右、ひねる」の三つの動作に、股関節を動かす動作を積極的に組み合わせたもので、全部で20種類ほどあります。ですが、どれも30秒ほどでできるものなので、1日あたりトータル10分もあれば充分です。

頻度については、できれば毎日、それが難しければ、最低でも週に2回おこなうだけでも効果を実感できると思います。

―― では体芯力体操の効果を実感できるまでに、どれくらい時間がかかると思っておけばよいですか。

鈴木:早い方であれば1回、感覚の良い方だと2~3回、多くの方は1ヶ月ほどで効果を実感できたとの声をいただいています。

―― 体操をおこなった本人は、何をもって「体芯の凝りがとれた」と判断すればよいのでしょう?

鈴木:「座る」、「立つ」といった行為をする際に、自然と肩の力が抜けるようになれば、それが体芯の凝りがとれた証拠です。

結局、体芯の凝りがとれる、すなわち体芯力がつくということは何を意味するのかというと、姿勢が良くなることなんです。

姿勢が良くなれば、身体の色々なところの余計な力が抜ける。余計な力が抜ければ、身体の動きも良くなる。結果、疲れにくくなる。腰痛やひざ痛がとれるといったことにとどまらず、こういったことが、体芯力体操の効果といえるでしょう。

身体への負担具合では、どんな歩き方が理想的?

著者・鈴木亮司さん写真

―― インタビュー前半では、大腰筋と腰痛・ひざ痛とのつながりについてお話いただきましたが、後半では大腰筋について、さらに詳しくうかがわせてください。本書で「日本人は西洋人に比べて大腰筋が細い」と書かれていましたが、大腰筋の「太い・細い」が、腰痛・ひざ痛の発症率にも影響を与えるものなのでしょうか。

鈴木:与えますね。黒人は日本人や白人よりも腰痛の発症率が低いと言われています。裏を返せば、日本人は身体のつくりからして、腰痛・ひざ痛になりやすい。

でも悲観することはありません。日本人は古くから、無意識のうちに大腰筋を鍛えるトレーニングをしていたんですよ。

―― それは、具体的にどのようなものなのでしょう?

鈴木:たとえば、「すり足」などはまさにその典型例です。これは、普通の歩き方よりも大腰筋を使うことになるため、体芯力の向上に役立ちます。

すり足は、ほとんど足を上げずに腰から前へ出る歩き方です。草履や下駄を履いて生活することが当たり前だった時代には、多くの日本人が自然に行なっていた歩き方ということになります。

―― 本書では、この「すり足」にヒントを得た体芯力体操も紹介されています。これは、予防的な使い方だけでなく、すでに腰痛・ひざ痛を抱えている人も行なって問題ないものでしょうか。

鈴木:まったく問題ありません。というのも、そもそも腰痛・ひざ痛を持っている人の歩き方というのは、放っておいてもすり足気味になるものなんです。

それは、足を上げずに歩くのが一番痛くないから。つまり、すり足は、腰やひざにとって最も負担の少ない歩き方ともいえるのです。

―― この体操を行なう際の「ペース」については、どのようなイメージを持っておけばよいでしょう?

鈴木:急いだり、大股にする必要はありません。むしろ、ゆっくり、そっと歩くのが望ましいですね。

一般的に、胸を張って大股で歩くのがいいと考えられていますが、実はこうした歩き方は腰やひざにかなりの負荷がかかるので、健康な方にもおすすめできません。「大股でしゃきしゃき歩くのは良いこと」という思い込みは捨てたほうがいいでしょう。

―― 最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。

鈴木:この本でお伝えしたいのは「我慢すること、辛い運動に耐えることが全てではない」ということです。というのも、多くの人が「頑張らないと成果は出ない」、「努力というものの先に健康がある」といったような思い込みにとらわれているように感じるためです。

でも体芯力体操を実践し、身体の変化を感じることができれば、そうではないことが分かっていただけるはずです。体芯を思い通りに使えるようになることで自分の身体に可能性を感じることができる。そのことによって、人生に希望を持っていただきたいですね。
(新刊JP編集部)

体操する男性のイラスト

書籍情報

著者プロフィール

鈴木 亮司

1977年千要県館山市生まれ。東京健康科学専門学校卒。
がんばらないトレーニング「体芯力」のパーソナルトレーナー。日本体芯力協会会長。認知動作型トレーニング指導者。全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会認定トレーナー。ゴルフコンディショニングスペシャリスト。
高校卒業後、トレーナーの専門学校・東京健康科学専門学校に入学。同時に格闘技を始め、総合格闘技やK‐1などで活躍。
選手引退後の2010年より、トレーナー活動に専念する

目次情報

  1. 1 痛みとり「体芯力」体操で、腰痛・ひざ痛が消える!

    (腰痛やひざ痛は、腹筋や背筋を鍛えても絶対に治らない 「体芯」に問題があると、からだのあちこちに影響が現れる ほか)
  2. 2 腰痛に効く!「体芯力」体操

    (前屈ができない腰痛の「体芯力」体操 反れない腰痛の「体芯力」体操)
  3. 3 ひざ痛に効く!「体芯力」体操

    (内側のひざ痛の「体芯力」体操 外側のひざ痛の「体芯力」体操 ほか)
  4. 4 「体芯力」をゆるめる日常動作

    (正しい立ち姿勢 正しい座り姿勢 ほか)
  5. 5 再発を防ぐ「体芯力」体操

    (「痛みとり『体芯力』体操」は、こうして生まれた 「体芯力」を鍛えて、一生腰痛・ひざ痛にならない! ほか)