解説
通勤電車の中や、食事の後、そして就寝前など、気がつくとついつい手にしてしまうのがスマートフォンだ。
自分ではちょっとした合間の時間にスマホを見ていると思いがちだが、そこはチリも積もればなんとやらで、平均1日3時間以上はスマホを見るのに費やしているというデータもあるほど。
特に、今は「ポケモン GO」のブームもあって、普段よりさらにスマホを見ている時間が増えている人は多いはず。もしあなたが、スマホを家に忘れると不安で仕方がなかったり、家族や友達と過ごしていてもスマホが気になるようなら、もはや「スマホ中毒」である。
あまりにも大きなスマホ中毒の弊害
本書の中で、著者の小山竜央さんは、
- 思考力と集中力の低下
- コミュニケーション能力の低下
- 目標や夢に向かう気力の減少
といった、スマホ中毒の弊害を挙げている。特に10代~20代を中心とした若者の中には自身の誕生日を忘れる人も出てきているという。
世界中の情報に瞬時にアクセスできるため、記憶力の必要性が薄れ、ことあるごとにスマホを触ることで、じっくり物事を考えることもなくなっていく。
また、コミュニケーションの中で文字情報の交換の比重が大きくなることで、実際に誰かと対面した時、五感をフルに使って相手の気持ちや状態を推し量る能力が鈍る。
さらに、スマホを見ることで脳は容易に刺激を得ることができるため、夢や目標の実現という、より大きな刺激を求めなくなくなる。
これらが重ることで生じる人生への悪影響がいかに大きいか、想像がつくのではないだろうか。
社会現象になった割に高くない「ポケモンGO」の依存性
では、なぜこうも度々スマホに触ってしまうのか。
「ゲーム」は私たちに逐一スマホを手に取らせる誘惑の一つだ。
人気スマホゲームの代表格といえば、社会現象になるほどのヒットとなった「ポケモンGO」だ。しかし、小山さんによると、このゲームの依存性はさほど高くないという。
その理由は、脳の快楽物質であるドーパミンだ。
人は、短いスパンでドーパミンが出るほど強い快感を覚えるが、ポケモンGOの場合は、街を歩きまわってポケモンを見つけ、捕獲するため、時間と労力がかかる。その割に、ポケモンを集め、戦わせることで得られるドーパミンは少ないのだという。
加えて、ユーザー同士のコミュニケーション要素もゲームの依存性を左右するが、この点でも現状のポケモンGOは弱い。これであれば、ゲームとしての回転速度が速い「パズドラ」や「ツムツム」の方が依存性が高く、危険が大きいようだ。
ただ、「ポケモン GO」の大きな特徴である、モンスターボールを指ではじいてポケモンに投げる動作は、これまでのゲームにはなかった動きだ。この動作が脳への新しい刺激となって、スマホ依存に繋がる可能性を小山さんは指摘している。
さらに、追加間近と言われるユーザー同士のポケモン交換機能が実現したら、このゲームのコミュニケーション要素は一気に上がることになる。そうなった時、ポケモンGOに強力な依存性が生まれるのかもしれない。
今1日3時間スマホを触っているなら、1カ月で90時間、1年で1080時間。これは、いい方にも悪い方にも、人生を変えるのに十分な時間である。
ただ何となくスマホを触って時間を浪費するのか、それともその時間を自分の夢や目標を追うために使うのか。本書は賢くスマホを使うための道しるべになってくれるはずだ。
インタビュー
通勤時間や寝る前、仕事の合間など、ちょっとした隙間時間は、とりあえずスマートフォンをチェックするという人は多いはず。
でもそんな細切れの時間が一か月、一年積み重なったら、かなりまとまった時間を無目的にスマホを眺めて過ごしていることになります。これって、結構怖いことですよね。
それだけじゃありません。『スマホの5分で人生は変わる』(KADOKAWA刊)を読むと、スマホに時間を取られ過ぎることは、人生を台無しにしかねない大問題だとわかります。
今回は著者の小山竜央さんに、その弊害についてお話をうかがいました。
コミュ力がなくなり、夢を追う気力もなくなる 怖すぎるスマホの弊害
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『スマホの5分で人生は変わる』についてお話をうかがえればと思います。小山さんといえば、以前にも『5分の使い方で人生は変わる』という、隙間時間の大切さを説く本を書かれていました。
小山: 今回の本は、その『5分の使い方で人生は変わる』と同じシリーズです。スマホはまさに隙間時間に5分くらいずつちょこちょこ見るもので、人によってはその5分が積み重なって、大きな時間になっている。
この時間をただ何となくスマホを見て過ごすのではあまりにももったいないので、何かしら有意義に過ごしてはどうですか、というコンセプトで書きました。
――
確かにスマホをだらだらと見ることで時間を失っていると考えると、もったいない気がします。スマホに時間を取られすぎることの弊害は他にもありますか?
小山: 健康面での弊害と、生活面への弊害があります。健康面での弊害は単純な話で、スマホを見る時は前かがみになりがちなので、首が前に傾く時間が長くなって、頚椎に負荷がかかるんです。
すると首や背中の痛みにつながりますし、猫背だとどうしても呼吸が浅くなりますから、体への酸素供給量も少なくなってしまう。
――
生活面にはどんな影響があるのでしょうか。
小山: コミュニケーション能力が低下します。どういうことかというと、対面でのコミュニケーションというのは、あまり意識することはないかもしれませんが、人間が持つ五感をフルに使うものです。
相手の動きが目に入りますし、相手に触れることも、呼吸の音を聞くこともありますよね。でも、スマホでのメッセージのやり取りで使うのは視覚だけです。この割合が増えていくとその他の感覚が鈍くなって、それまで感じ取れていたことが感じ取れなくなってしまう。
こうなると、やはり対面でのコミュニケーションはうまくいかなくなってしまいますよね。
もう一つ忘れてはいけないのが、夢を追う意欲を奪われることです。スマホは見ているだけで快楽物質であるドーパミンが出ますから、脳の方はドーパミンを得るためにわざわざ困難に打ち勝って夢を実現させようとはしなくなってしまうんです。
――
小山さんが考える「時間の無駄」なスマホの使い方はどんな使い方ですか?
小山: 自分の目標や夢の実現、そして自分の成長に関係がないすべての使い方です。
単なるヒマつぶしで見ているだけ、とか、何の目的もなくネットサーフィンやゲームをしているだけ、といった使い方ははっきりいって時間の無駄だと思いますね。
ことスマホは使おうと思えばいくらでも使えるものですから、「今は何のためにスマホを使っているのか」という目的意識を持ったほうがいいい。そうでないと際限なく時間を奪われてしまいます。
夢が遠のき、健康にも悪い スマホのダメな使い方
――
通勤時間などに電車に乗ると条件反射的にスマホを取り出して見始めてしまう人はよくいますね。
小山: 電車に乗ると習慣的にスマホを見ること自体が問題なのではなくて、そこで何をするかですよね。
何か自分のためになる使い方、自分の目標や夢に近づくための使い方をしていれば、それはいい使い方ですし、漫然とゲームをやっていたり、ニュースを流し見しているだけなら悪い使い方です。
――
ニュースをチェックするのは、情報収集ですからいい使い方だと思っていました。
小山: これも目的があるかどうかだと思います。何か自分に関係した情報を調べるのならいいのですが、だらだら見ているだけだと漫画を読んでいるのと一緒です。
それに、ニュースサイトのニュースから得られる情報ってレバレッジが効かないんですよ。
――
それはどういうことですか?
小山: いくら見ても、その時間が自分の人生をより良くしたり、自分にいい影響を与える方向には働かないということです。もちろん、それらの情報がお金に結びつくこともまずない。
だから、情報取集でニュースサイトを見るなら、10分も20分もかけないで、1分か2分でパパッとチェックするべきです。あそこにあるのは、基本的には自分の人生には関係がない情報ばかりですから。
――
レバレッジの効く情報とはどんな情報ですか?
小山: 自分が今必要としていて、自分に関係があって、目の前の仕事なり取り組んでいることの結果を変える力のある情報です。
これに対して、ニュースサイトにある情報というのは、せいぜい「いつか役立つかもしれない情報」です。「今必要」と「いつか役立つかもしれない」の違いは大きいですよ。
――
本書では、スマホは使い方次第で人生をいい方向に向かわせることもできると書かれています。そのためには、やはり「目的を持って使う」ということに尽きるのでしょうか。
小山: そうですね。スマホはその気になれば何でもできます。だからこそ目的が必要なんです。
――
ただ、スマホを無目的に使ってしまっている人というのは、そのこと自体に無自覚ですよね。
小山: そうだと思います。だからこういう言い方をしましょう。スマホに時間を使いすぎている人ではなく、スマホを使うすべての人にこの本を読んでほしいです。
ほとんどの人はスマホに時間を奪われすぎています。そのせいでコミュニケーション能力が失われて、想像力がなくなり、集中力は阻害され、夢を追わなくなり、さらに不健康になっていくなんて、人生の大問題じゃないですか。そのことに早く気づいてほしいんです。
通勤電車の中で漠然とスマホをいじってヒマつぶしをしているのって、自分で自分の寿命を縮めているのと一緒ですよ。その時間を他のことに振り向ければ、もっと自分を成長させられるし、幸せになれるはずです。
この本ではそういう、スマホに時間を取られ過ぎることへの警鐘と、自分の人生に本当に役立つスマホの使い方について書いているので、身に覚えのある方はぜひ読んでみていただきたいですね。