インタビュー
他の投資にはない「不動産投資のメリット」とは?
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投資というと株や証券などさまざまありますが、他の投資と比べて不動産投資のメリットとして挙げられるものはなんでしょうか?
関田:一般的に言われる不動産投資のメリットはいくつかあるのですが、まず、大家さんが毎月お金をもらうイメージがあるように、安定的な現金収入が毎月得られるということがあります。そこで得たお金をさらに別の投資に回すなど、入ってきた資金をすぐに活用できるのは、メリットとして大きいところです。
あとは、レバレッジを利かせられるのもメリットのひとつです。100万円の自己資金があったら、それを元手に融資を受けて、本来よりも大きな投資ができます。
融資については、年収と持っている自己資金によってケースバイケースなのです。また、何かしらの資産があれば、金融機関は共同担保という形で見てくれるケースもあります。たとえば、親から相続した抵当権のない戸建てを持っている、住宅ローンを払い終わった区分マンションがあるなどのケースでは担保として余力があったりします。それプラス、購入する物件にもある程度の担保力があるので、合計で見てもらって融資が受けられるというパターンもあります。
そうなると本人の属性があまり関係なく「自己資金がなくても共同担保で」という形もあるので、一概に「年収や自己資金がいくらなくてはダメ」ということはありません。
また、不動産投資は、株式投資のように次の日に倍になるようなことは望めませんが、目で見える土地や建物そのものを購入するので、価値や資料の上下はあるものの大災害などで崩れたりしない限りは、価値がまったくのゼロになることは考えにくい投資です。その点も間違いなくメリットです。
そして、最大のメリットは、自分自身でマネジメントできる点です。
ハイリスク・ハイリターンな株式投資も、ローリスク・ローリターンな国債も、「買ったあとは祈る」ことしかできませんが、不動産の場合は、修繕を施したり保険を活用したりするなど、自らの裁量でリスクをコントロールできる部分が大きいです。これが他の投資と大きく違うところです。
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不動産投資に向いている人、不向きな人の傾向はありますか?
関田:地道な努力や勉強が好きな人。「マメな人」が向いています。
株の動向ほどダイレクトではありませんが、不動産相場は日経平均に引っ張られる傾向はありますし、融資という金融の絡みからも経済動向に影響を受ける投資対象です。
マクロ的な世界と日本の経済の動き、ミクロ的な大学や企業の転移、交通網の拡大など、投資対象地域の新着情報をインプットする。それを地道に継続してできる人は、他の人が見逃している埋もれた優良物件に気が付けるので、チャンスが広がります。
また、不動産投資は一人で完結する投資ではないので、人付き合いが得意とまではいかなくても、ある程度苦にならない人の方が向いています。
不動産は購入時なら売り主や不動産業者、仲介業者との意思の疎通が必要ですし、運営中も管理会社や修繕業者、申告などを委託するなら税理士さんとのやりとりも入ってきます。融資を受けるのであれば、銀行員との連携も発生します。
つまり、「買って」「持って」「売って」という流れの中すべてに「人」が絡んでくるので、あまりにもコミュニケーションが不得手だと辛いかもしれません。
ただ、別に仲良くなることが目的ではないので、投資の成功に向け、相手に対して必要なタイミングで誠実に対応する。話を聞き、言うべきことはしっかり伝えるという最低限のコミュニケーションさえできれば十分です。
不動産投資初心者は「慎重に相手を疑う」姿勢を持とう
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資金や条件面での「向き不向き」というのはありますか?
関田:さすがに何も持っていないという人はやめた方がいいかもしれませんが、50万円、100万円という資金で物件が買えないというわけでもありません。田舎の方にいけば、5万円、10万円で買える戸建てもあったりします。その物件を300万円かけてリノベーションして、家賃5万円で住んでくれる人が出てきたら、年間で60万円の家賃収入になるので、5年あれば回収できます。もしくは「表面利回りが何%です」と収益目的で売ることもできるかもしれません。
そうやって収益を積み重ねて、徐々に資金と物件を拡大していくというやり方もあります。
手持ちの資金から始めて拡大をしていくと、無担保の不動産がいっぱいできてくるので、それを共同担保に入れて、大きな物件にしていくという手もあります。
本当にいろいろな道があるので、労力をかけて、物件の見極めさえできれば、意外に小さいところからでも始めることができます。
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不動産投資の初心者が特にやってしまいがちなミスはなんでしょうか?
関田:大きく3つあって、1つ目は、「俺は客だという横柄な態度を取る」ことです。
平身低頭、下手に出る必要はありませんが、不動産投資はビジネスなので、相手に嫌われて得なことは何もありません。どちらが上、ではなく、フラットな関係、お互いの利益のために誠実な対応に努めたほうが、よりよい物件や情報、ネットワークを築くことができます。
物件はすべてが一点ものなので、「買わせてください」と誠実な対応をする人と、「買ってやるよ」という横柄な態度の人が、同じ条件で購入を検討していたら、業者も誠実な人のほうを選ぶのは当然ですよね。
2つ目は、「物件のポテンシャルを見誤って高過ぎる買い物をする」ということです。
これは今回の書籍でもメインのところになるのですが、物件の持つ収益性・資産性を自分で見極めることをせずに、他人の提示する情報――たとえば「絶対に儲かりますよ」という話を鵜呑みにして失敗してしまう人がとても多いです。
紹介者がロクでもない人間でも、物件のポテンシャルに適した形で取得できれば、不動産投資は大きなリターンを生みます。
逆に、とても丁寧でしっかり対応してくれる誠実な営業担当から購入したとしても、価値のないモノについて大きな融資を組んでしまって、ひとつも儲からないのであれば、それは投資とは言えません。実際にそういうケースは多くあります。
3つ目は、「特定の相手を信用しすぎる」ことです。
先ほどの話にもつながりますが、「どんなによく見える営業担当」でも、「大家の会の偉い人」でも、「金融機関の担当者」でも、この業界に絡む人たちは、いつ裏切ってもおかしくありません。
「買える」と言われていた物件を反故にされたり、親身に相談に乗ってくれていたのに、酷い物件を売りつけてきたり、金融機関の担当者でも「出る」と言っていた融資が直前になって「やっぱり出せません」という話になったり――こんな話は日常茶飯事なので、「性悪説」から入らないといけません。
悪意を持って裏切る人間も少なからずいますし、業者として経験が浅くて無知だから変な物件を持ってくる人もいますし、急な上層部の方針変更で融資がストップすることもあります。
けれども、相手を恨んでも何も始まりません。慎重に相手を疑ってかかりながら、自己の利益の最大化することに努めていくことが必要です。
不動産投資の「プロ」と「アマチュア」はここが違う
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不動産投資のプロとアマチュアで、もっとも大きく差が出るポイントはどこでしょうか?
関田:一言でいえば、「自分のモノサシ」を持っているかどうかです。
「こう言った条件に合致する物件であれば購入します」という部分がある程度固まっていると、いざ物件が出てきたときに買うかどうかの取捨選択がスムーズになります。
不動産投資のポータルサイトから自分で探すにしても、不動産業者やブローカーから紹介を受けるにしても、物件のポテンシャルの見極めをするのに「これにハマっていれば買いだ」もしくは「買いじゃない」ということがわかっていると失敗しなくなります。適正な金額で購入できていれば、ほぼ勝てるのが不動産投資です。
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本書ではプロならではの「Googleマップの活用術」が紹介されていましたが、インターネット時代になってから活用され始めたガジェットやツールはありますか?
関田:今であれば「LINE」ですね。
近頃は業者間のやり取りでも、得に仲の良い担当者同士であれば、物件資料から「今、現地を見てきたよ」という写真のやりとりまでLINEでやってしまいます。
情報の機密性など、気になる部分がなくはないのですが、それに勝るスピード感と手軽さ、浸透度は目を見張るものがあります。
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有益な情報を得ていくためには、どれだけLINEグループに食い込めるかというのもポイントになりそうですね。
関田:大きいと思います。LINEの交換はある程度、人間関係ができている人とでないとしないですからね。
他には、物件資料や金融機関提出用の確定申告書などのデータをまとめて送る際には「宅ふぁいる便」などのデータ転送サービス、ドロップボックスなどのクラウドサービスは重宝しています。メールだと容量の限界がありますから。
私が新卒でこの業界に入ったときは、FAXが主流だったのですが、深夜に延々と紙が出続けて途中で詰まってしまう、なんてこともありました(笑)それを考えると時代が変わって非常に効率的になりましたね。
ただ、この商売は高齢になってもできるので、業界内でもネットやデジタルツールに対応できていないご高齢な業者の方もいらっしゃいます。その意味では、デジタルツールだけでなく、紙の資料や今では面倒になった手法にも対応できる人は強いかもしれませんね。
不動産投資の成否を分ける「金融動向」に注目せよ!
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本書では、一般的に懸念されている「オリンピック後の動向」よりも「金融機関の動向」を見ることの大切さが書かれていましたが、この先の金融動向をどのように予測されていますか。
関田:投資用収益不動産のマーケットについては、銀行融資が出るか出ないかにかかっています。
融資が緩くなれば、買える人が増えて価格は上がり、利回りは下がります。逆に、融資が厳しくなると買える人が少なくなり、価格が下がって、利回りは上がります。そういった点から、金融動向は把握しておくべきです。
今現在(2018年11月下旬)は、スルガ銀行をはじめ、投資用不動産界隈での金融機関の不正な取り組みが頻出し、融資が全体的に絞られています。
それに伴って、特に地方、郊外の中古一棟アパート、一棟マンションの価格は下落して、利回りが上昇しているという雰囲気が露骨に出できている状況です。
本来であれば、まだ日銀の大胆な金融政策は継続され、金余りな現状であることから、マネーは行き先を探しているはずなのですが、肝心な末端の蛇口が閉まっているわけです。
あくまで個人的な予測ですが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産構成割合で日本株の割合を増やしたり、日銀も株式を買い入れたりする動きをしているため、国内だけを見れば消費税増税の時期までは、株価は支えられるかとイメージしています。
しかしながら、2019年10月に本当の消費税増税があると、これは楽観視できないと思っています。
過去二回の増税時にはガクンと経済が落ち込みました。直前に駆け込み需要はあるでしょうが、それは単純に需要の先食いでしかないので、その後の落ち込みは相当なものになるのではないかと思います。
不動産のマーケットは日経平均を三ヶ月から半年ほど遅れて追う傾向がありますから、株価全体が落ち込むと、不動産も落ちてしまうのではないか、と予想されます。
また、消費税増税については、大家業にとって悪でしかありません。家賃収入は非課税なのに対して、修繕費や電気代などコストには消費税がすべて上乗せされます。他の商売であれば、増税された分を商品に転嫁することもできますが、家賃収入は非課税なため転嫁もできません。この点は非常にマイナスですね。
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逆に考えると、銀行の融資が厳しくなった結果、投資をやめて物件を手放していく不動産投資家がいるとしたら物件の牌は増えていくので、勝ち残りの確率も高くなっていくという可能性もありますね。
関田:そうですね。特にそういう状況になった場合、融資がつかずに、物件がダブつくことになるので、現金を持っている人が強くなるでしょうね。
現金を持っていなければ買えないというわけではありませんが、フルローン、オーバーローンでなければ買えない人が大半の中で「半分だったら現金を出せます」となれば、銀行からの融資が下りるケースもあると思います。
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そうした状況の中、現在、不動産投資で盛り上がりを見せている地域などはありますか?
関田:先ほどもお話しした通り、相場観としては踊り場にある状況です。
ただ、東京の中心地のような良いエリアはいまだに高値で止まっています。たとえば、銀座や港区の一部地域などは不動産としても手堅いです。
あとは2020年の東京オリンピック選手村の跡地は「HARUMI FLAG」という名前で5000戸の分譲になります。5000戸というと街ができるレベルですが、需要よりも供給が多いと金額が下がるので、これはどちらに振れるかはわからないですね。
他には、開発の勢いがあるのは渋谷です。「100年に一度の再開発」と言われているくらいなので、盛り上がりを見せています。渋谷は拠点になる街なので周辺エリアも含めて、あの界隈は価格が上がっても不思議ではないですね。ただ、どこまでを「渋谷の周辺エリア」とみなすかは難しいところですが。
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最後に、不動産投資を真剣に考えている方々にメッセージをお願いします。
関田:押さえるべきポイントがわかってくれば、ものすごく「負けにくい」のが不動産投資です。
物件の持つポテンシャルの見極めに、今回の書籍を最大限活用いただければ幸いです。