本書の解説
仕事の合間に時間をかけずに副収入を得たい。
ここ数年、多くの人が持っているこんな願いに応えてきたのが、Amazonを利用した個人ビジネスだ。具体的にいえば、量販店やネット通販で安く商品を入手し、Amazonで高値で売る、いわゆる「転売」や「せどり」である。
現在も参入する人が後を絶たないこのビジネス。しかし、最近状況が変わってきていることに警鐘を鳴らしているのが『Amazon国内メーカー直取引完全ガイド (せどり、転売はもう古い! 初めてでも、個人でもできる)』(standards刊)の著者、中村裕紀さんだ。
Amazon転売・Amazonせどりはどんどん稼げなくなっている
転売やせどりは、「安く買って、Amazonで高く売る」というシンプルなビジネス構造だけに、参入が簡単だ。売れる商品を見つけても、すぐにライバルが参入してレッドオーシャン化してしまう。
こうなると、ほぼ間違いなくその商品は値下げ競争に巻き込まれることになる。ライバルが増えることで利幅も売れる個数も減る。売り上げを保つには、常にリサーチを重ねて、売れる商品を開拓しつづけないといけない。これは手間と時間がかかり、副業でやっていくのはかなりの負担だろう。
参入する人が増えた今、転売やせどりは安定して売り上げをたてることが極めて難しくなっているのだ。
また、Amazon側の態度も変わってきている。
中村さんによると、現在Amazonは転売目的で仕入れた商品について出品規制を強めており、アカウント停止やアカウント閉鎖のリスクが高まってきているという。
Amazonの企業理念は 「地球上で最もお客様を大切にする企業になる」だ。商品を横流しするだけの転売やせどりは、顧客のためにならないと考えていてもおかしくはない。ちなみに転売品への出品規制はAmazonに限った話ではなく、楽天やヤフーショップなど他のプラットフォームでも同様だそう。
こうしたAmazonの姿勢は出品規約に表れている。
- ・個人(個人事業主を除く)から仕入れられた商品
- ・メーカーが提供する保証がある場合、保証期間その他の条件において、メーカーの正規販売店と同等のメーカー保証を購入者が受けられない商品
- ・Amazon.co.jp上(Amazonマーケットプレイスを含む)で仕入れられた商品
これらの商品は、現在Amazonに「新品」として出品できない(2019年11月12日現在。Amazonコンディションガイドラインより引用)。
特に2点目の「メーカー保証」については、厳密に言えばほとんどすべての転売商品出品者は「アウト」だろう。つまり、転売やせどり目的で出品している人は、いつ出品規約違反としてアカウント停止等の措置をうけてもおかしくないことになる。
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転売やせどりを巡る状況が厳しくなっている一方で、個人が商品を売るプラットフォームとして、Amazonが魅力的なことは変わらない。それならば、量販店やネット通販を通して買うのではなく、商品を製造している「メーカー」から直接商品を仕入れて、販売すればいいというのが中村さんの考えだ。本書では参入方法や利益を出すための方法などについて解説している。
製造者から直に商品を買えば安く仕入れができ、利益が出やすい。また、転売ではないためAmazonの規約におびえる必要はなく、品質の保証もしやすいというわけだ。
安全に、そして堅実かつ長期的に収入を得ていきたい人は、本書で明かされている中村さんのノウハウは役立つはず。参考にしてどこの会社のどんな商品を売るか考えてみてはいかがだろう。
(新刊JP編集部)
インタビュー
Amazon転売、せどりは稼げなくなっていく
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『Amazon国内メーカー直取引完全ガイド (せどり、転売はもう古い! 初めてでも、個人でもできる)』は、Amazonを利用した既存の個人ビジネスとは根本から違う方法論を提示しています。中村さんがこの方法を今提唱される理由について、Amazonを使う個人ビジネスの現状も含めて教えていただければと思います。
中村:Amazonを使った個人ビジネスといってまず思い浮かぶのが「せどり」や「転売」です。物販ビジネスということで不用品の転売のようなものから始められるので、副業としてやりやすいんです。
だから、Amazonを利用した転売やせどりをやっている人は多いのですが、最近Amazonの規約が変わって、転売やせどりに厳しくなったんです。
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昨年Amazonの規約が変わったそうですね。
中村:そうですね。それまでは明確な規約がなくて、たとえば「ヤフオク!」で買ったものをAmazonで「新品」として売るというようなことが普通に行われていたのですが、正規販売店と同等の保証がないと「新品」として認めないというような規約ができたので、せどりや転売はそこに引っかかってしまう。もちろん「中古品」として売るにはいいのですが、どうしても価格が下がりますよね。
Amazonを使った転売やせどりは、規約が厳しくなったことで長期的に利益を出すことが難しくなっているんです。
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そういった状況だからこそ、中村さんは同じようにAmazonを利用した物販ビジネスでも、転売やせどりではなくて商品を製造するメーカーと直接取引して商品を仕入れる方法を提案されています。
中村:一過性の利益ではなくて長期的に利益をあげていけるモデルだと思っています。僕自身、このやり方を始めてから物販ビジネスが楽しくなりましたし、メーカーの方々と人間関係もできました。
信頼関係ができてくれば、自分だけに商品を販売させてくれたりと、ライバルの参入に仕切りを作ることができるのも転売やせどりにはない魅力だと思います。
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メーカーが直接Amazonに出品してしまったりすることはないのでしょうか。
中村:オンライン販売の知識を持っているメーカーだとそういうこともあります。最近では、Amazonだけではなく楽天やヤフーに自社のネットショップを作っているメーカーは増えてきています。
一方で、販売に手が回っていないメーカーも多いんです。特にオンラインでの販売については知識がないところの方が多いように感じます。「いいものを作れば売れる」と、販売に力をいれていないメーカーもまだまだありますしね。その弱い部分をサポートするといいますか、お手伝いさせていただくのがこのビジネスなんです。
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メーカーと直取引というと、まずメーカーと関係を作らなければなりません。となると、たとえば会社に勤めながら副業としてやるのは難しいのではないかと思ったのですが、手軽さの面ではどうなのでしょうか。
中村:早朝から深夜まで働いている人は厳しいかもしれませんが、20時くらいに家に帰れて、2、3時間作業できるなら可能です。メーカーとの連絡にしても、夜中の1時とか2時にメールを送ると失礼になりますが、23時前くらいであれば翌日などに返信をいただけるところの方が多いですしね。
それと、時間という意味ではせどりや転売の方がかかる印象です。私も転売をやっていたことがあるのですが、利益が出る商品をリサーチするのにかなり時間がかかりますし、見つかり具合もセンスや経験値によって変わってくる。
メーカー直取引は基本的にはこの本で書いているような基準に合致するメーカーにメールを送るだけですから、リサーチの時間はさほどでもありません。また、メール送信をはじめ外注できるところも多いので、会社員をやりながらでも十分できると思います。
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メールだけで完結できるものなんですか?
中村:時間があるのであれば顔を合わせた方がいいのでしょうが、会えばいいというものでもないんです。メーカーによって利益が大きい商品を作っているメーカーもあれば、利益は出るものの利幅が薄いメーカーもあります。全てのメーカーと会っているのではキリがないので、メーカーを訪問するのはここぞという時だけでいいと思います。電話でコミュニケーションを図ったり、最終的には会いに行くということも必要ですが、メールだけで完結できるメーカーも多くあります。
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どんな商品をどんなメーカーから仕入れて販売したという実例がありましたらいくつか教えていただきたいです。
中村:結構なんでも売っていました。輸入の食品などだと検査がありますが、国内メーカーから買うのであればその辺は問題ないので、醤油だとか梅干しとか、あとは肥料とかおもちゃ類も扱いました。どちらかというと消耗品が売れる感覚があります。
何を売ればいいかわからないという人は、とりあえず今回の本でかいた選び方の基準にあったメーカーに片っ端からメールを送って、最初の方は「何が売れそう」とかは考えずに仕入れて売ってみるのがいいと思います。やっているうちに自分が関心がある商品や好きな商品が絞られてくるので。
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メールにはどれくらい返信がありますか?
中村:普通の人は3割くらいで、上手な人だと4割くらい戻ってくる人がいますね。やはりメーカー側も取引相手は選ぶので、同じメーカーにメールを送っても契約できる人と契約できない人が出てきてしまいます。あまり仕事だからといって過剰に事務的にならず、率直に自分の気持ちを伝える人の方がうまくいっている印象がありますね。
メーカーと直取引する新しいAmazonビジネス 利益を出すポイントは?
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この方法で利益を出すために「やるべきこと」と「やってはいけないこと」について教えていただきたいです。
中村:やるべきことは、まずは本に書いている3つの基準を満たしたメーカーに根気強くメールを送り続けることです。
ただ、たとえば1000件メールを頑張って送っても、初回のメール返信率が2割以下で、見積りをもらう確率も累計メール数に対して5%以下で、仕入れに至るメーカー数も0とかだと全然ダメです。
まずは少なくてもいいので1日10社、1ヵ月に300社メールを送って、初回の返信率は最低でも3割以上、メーカーさんから見積もりをもらう確率は最低でも累計メール数に対して5%以上、仕入れに至る割合は、返信がないところも含め30~50社メールを送って1社仕入れに至れると良いでしょう、経験するごとに精度は高まりますし、30~50社メールというと驚くかもですが、1社ずつ積み上がれば利益が大きくなりますし、メールを送るのは最初は時間が掛かるかもですが次第に慣れてきますので。
上記のように数字が安定してきて1000社メールを送ると、結果も3倍になったりと逆算して作業できるので、モチベーションアップにも繋がります。
やってはいけないことは、メール「だけ」に集中してしまうことだと思いますね。メールをたくさんのメーカーに送ったぶん、取引できる会社は増えるわけですが、それは一連の流れのうちの一部なので。
メールを送って、取引が成約して、利益が出るか計算して、商品を買ってamazonの倉庫に納品して販売開始するまでが大事です、でなければ売上が立たないので。
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直取引で初心者がやりがちな失敗や気をつけるべきことについて教えていただければと思います。
中村:最初のうちは「商品を仕入れ過ぎてしまう」とか「利益の出ないものを仕入れてしまった」などですかね…。
この本で書いた仕入判断に適うものを仕入れるわけですが、メーカー側に「ロット」があったりするんですよ。つまり「これだけの量や金額を買ってくれないと取引しません」というものです。
そういう時は「モノゾン」などのツールで算出された「売れている個数」の数字をあてにせずに、定点観測して月に何個売れているかを正確に把握することが大切なのですが、メーカーから言われるがままに、そのロット分を仕入れてしまう人もいるんです。そこはしっかりと交渉すべきですね、でなければ在庫に資金が圧迫されて次の商品を買えませんので。
初回は少量にしてくれないか、とか、売れたら仕入れを増やしますので今回はこれでお願いしますとか、交渉の余地はあるので、勢いで仕入れないようにしていただきたいです。
あとは、Amazonって販売価格が落ちやすいプラットフォームではあるので、メーカー側がいいイメージを持っていないケースもあります。はじめにメールした時にそのあたりを突っ込まれることがあって、心が折れてしまう人もいるのですが、そこは根気強くやっていくのが大切です。Amazonは嫌いでも、売ってくれる人のことは信用して取引してくれることはあるので。
また継続したメールを送ることで、Amazonだけの販売でも取引できるメーカーは必ず存在します。
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Amazonへのアカウント登録から配送周り、売り上げ管理までかなり細かくノウハウを紹介されています。目安として一連の業務にどれくらい時間がかかるかを教えていただきたいです。
中村:仕入れた商品をAmazonの倉庫に発送する納品作業はFBA納品代行業者を使ったり、メーカーへのメール送信作業なども、ランサーズなどで日中にメールする方を雇ったりと外注化できる部分は多いので、時間がない人はそういったところを大いに活用していただきたいです。
自分でやらなければいけないのは基準を満たしたメーカーを探して、自分でできるならメールして、取引を成約させて、利益が出るか出ないかのところまで確認して商品を買うことだけなので、1日2~3時間継続してできれば結果はついてくると思います。一応僕のコンサルを受けてくれている方々には、3カ月で月利10万円、半年で月利30万~60万を達成できれば、1年で月利100万円を達成することは可能です、という目安をお伝えしています。
お金周りについてアドバイスをすると、利益を増やしていく過程で融資は絶対に必要になるかと思います。よくネット販売の本には「資金がなくても稼げる」といったことが書かれていますが、物販をする限りそんなことはまずないというのは覚えておいていただきたいですね。
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最後になりますが、これまでAmazonで個人取引をやってきたものの利益が出ていない人や、これから直取引をはじめてみたいという人にメッセージをお願いいたします。
中村:僕も以前は会社員をやっていて、副業として物販ビジネスを始めました。副業を始めた時はネットワークビジネスをやったりアフィリエイトをやったり色々手を出したのですが、ネットワークビジネスでは友達を失いましたし、アフィリエイトは初心者が簡単に稼げるようなものではありませんでした。
その点、物販は自分の責任内でできて、一人でもできる、昔からあるシンプルなモデルです。特にこの本で書いている方法は特別な才能がなくても、地道にコツコツやることで利益が積みあがっていくやり方で、まじめな人ほど続けられると思うので、ぜひ始めてみていただきたいです。
(新刊JP編集部)