インタビュー
新卒採用よりコスパが良く、コンサルより格段に安い
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『あなたのキャリアをお金に変える! 「顧問」という新しい働き方』では、サラリーマンのセカンドライフとして「顧問」という働き方を提案されています。一般的に、顧問というと役員の退任後のポストというイメージがありますが、この本でいう顧問とはどのような立場の人材なのかというところについてお話をうかがいたいです。
齋藤:一般的な顧問というと企業の「顔役」といいますか、たまに会社に来て社長とお茶飲み話をしているような人のイメージがありますが、この本における顧問はそういう顧問とは違って、顧問先企業が抱える様々な問題を一緒に解決する【実務顧問】をいいます。
相談を受けたりアドバイスをするだけではなく、実務にも携わるというのが大きな特徴です。
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齋藤さんがこの働き方を提案した理由はどんな点にありますか?
齋藤:やはり、一番は自分がそれまでに培ってきた知見や経験をさまざまな企業に還元できるという社会貢献として、意義のある仕事だという点です。
自分ひとりの夢を追うよりも、自分の経験を生かしてたくさんの人と一緒に夢を追いかけて達成した方が、より充実感があると思うんです。私自身、顧問としてこれまで140社以上に携わってきてそれを実感しているところがあります。
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顧問を入れることで企業側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
齋藤:企業にとっては非常にコストパフォーマンスのいいソリューションだと思います。企業が抱えている課題に対してそれを解決できる知見・経験を持っている人を採用して、アドバイスを受けながら一緒に手を動かしてもらって、解決できれば契約終了になりますから、正社員を雇うよりも効率的です。
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コンサルタントのようでもありますね。
齋藤:コンサルタントとよく比較されますが、コンサルタントは調査と課題、また課題の解決法を出すところが主な仕事で、そこから先の課題解決のための実務には基本的にタッチしません。そうなると実際に問題が解決されるまでに時間がかかりますし、現場がその解決法を実践できないこともある。
一方で、コンサルティング会社がやっていることというのは、その業界に長くいて知見を持っている人であればわかっていることも多々あるんですね。そういう人であれば、企業の課題に対して解決法を示すこともできますし、現場での経験もありますからハンズオンで携わってくれる。費用感も、動く人の数も違いますので、コンサルティング会社の10分の一程度になることもあるということで、今需要がすごく増えているんです。
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顧問の具体的ななり方としては、人材派遣会社に登録して紹介先の企業に派遣されるという形になるのでしょうか。
齋藤:入り口としてはそうなりますが、まずは顧問としての自分の強みを把握していただくことが先決です。
今回の本の中に「齋藤式環境分析ツール(Sツール)」という名前の企業分析ツールを入れているのですが、個人にも当てはめられるものなので、まずはこれで顧問として活動するうえでの自分の強みや差別化要素を見つけていただいてから人材派遣会社に登録していただくとスムーズだと思います。
結果としてまだ自分には強みがないということになれば、今いる会社での仕事を続けていただいて、その間に強みを磨くということもできますしね。
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顧問になる人は何歳くらいの方が多いですか?
齋藤:派遣会社に登録される方の平均年齢をとると63歳~64歳くらいになります。実際に定年退職をされた後の方は多いのですが、早い方だと20代後半で活躍されている方もいますし、最近では副業・兼業ができる会社も増えていますから、会社員やベンチャー企業の役員をやりながら他の会社の顧問をやっている方もいて、いろいろです。
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生々しいお話ですが、報酬はどれくらいもらえるのでしょうか。会社にもよるとは思いますが。
齋藤:活動の回数を月に2回として、派遣会社と報酬を折半する場合、10万円~20万円ほどになります。実際は派遣会社によって報酬形態が違って、折半するところもあれば7:3でこちらが3のところもあるので一概にはいえないのですが。
ただ、顧問として実績を積むと、企業から直接声がかかることも増えてきます。そうなると派遣会社を通しませんから、同じ活動時間でも報酬は20万円~50万円程になります。こちらは会社次第というところが大きいですね。
普通のサラリーマンこそ求められる!「顧問」というセカンドライフの過ごし方
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本の中で「普通のサラリーマン経験に価値がある」ということを書かれていました。一般論として「日本のサラリーマンはゼネラリストが多い」とされますが、ゼネラリストであっても顧問として価値のある人はいるのでしょうか。
齋藤:いくらゼネラリストでも、30年40年とやっていれば人に教えられる何らかの強みがあるものですし、逆にゼネラリストであること自体も強みになりえます。色々なことが一通りできて、その中で結果を残してきたということですから。
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業種、業界には問わずに需要はある。
齋藤:そうですね。需要は幅広くあります。
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特に顧問として需要が高い人はどんな人ですか?
齋藤:顧問が会社を定年退職した60代の方だとすると、顧問を必要としている企業の経営者やメンバーの方との間に20歳以上の年齢差があることは珍しくありません。そこには当然世代間ギャップが生じますから、大げさにいえば「異文化コミュニケーション」が必要になるんです。
これは上手にできる人もいればそうでない人もいます。顧問としての強みとなる専門分野があるかどうかはもちろん大事なのですが、スペック的な強みがある人は世の中にたくさんいます。そうした強みに加えて年齢も感覚も価値観も違う相手と同じ目線を持つことができる人は顧問としてすごく価値が高いんです。
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今のお話は「現場で好かれる顧問の特徴」と言い換えてもいいのではないかと思います。反対に「現場で嫌われる顧問の特徴」がありましたら教えていただきたいです。
齋藤:自慢話とかつかえない成功事例、自分の人脈をひけらかすタイプですね。顧問として必要とされているのは、企業の現場での困り事を解決したり、そのサポートをすることなので、自分から歩み寄って同じ目線を共有してくれる人が好かれます。
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最後になりますが、本書の読者として想定される40代~50代の方々にメッセージをお願いいたします。
齋藤:平均寿命を考えても100年近く生きる時代ですから、会社を定年退職してもその先はまだ長い。だからこそ「終わった人」にならずにもう一度バッターボックスに立ってチャンスやお金を掴みにいくことが、これからすごく大事になってくると思います。
今回の本で取り上げている顧問という職業は、これまで自分がやってきたことで企業や社会、あるいは人に貢献できるすばらしい職業だということ、そのためにはできるだけ早い段階で自分の強みを持つことが大切だということを伝えたいですね。
(新刊JP編集部)