『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズがついに完結 作者に聞く、難産だった最終巻への想い
■読者が新たな本と出会える場になった『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズ
作者の三上さんはもともと古書店でアルバイト経験があり、その時の経験を下敷きにしながら『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズを書き続けてきた。
本は読まれてこそ価値のあるものだが、その一方で読み終えた本にも歴史的な価値があったり、もしくは個人の思い出が詰まっていたりと、異なる価値が付与されているときがある。
『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズは、そんな本の多面的な価値をクローズアップしながら物語が展開する。では、三上さんにとっての大事な本はどんな一冊なのだろうか。そして、この物語を通して伝えたい想いとは?
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――このシリーズに出てくる登場人物には、それぞれ手放したくない本があります。三上さんはそういった「もう読んでしまったけれど、手放したくない本」はありますか?
三上:10代の頃に買って、いまだに手放していない本の中で一番古いものだと、妹尾河童さんの『河童が覗いたニッポン』という本。日本の隅々までまわって、イラストで俯瞰図を書くんですよ。網走刑務所の俯瞰図まで書いていたりして、とても面白かったのですが、その本にはまだ10代当時に読んだ思い出が残っているんですよね。
――この『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズを通して、本の魅力についてどのような再発見がありましたか?
三上:シンプルに本は面白いということです。本のウンチクなり逸話なりって、「ふーん」で終わってしまうこともあるけれども、このシリーズの読者の皆さんはマニアックな話でもすごく楽しんでくれて、そこから新たな本との出会いの場にしてくださっていたんですよね。やはり本は面白いということに気付いていただけたのは、単純に嬉しかったです。
――読者の皆さまにメッセージをお願いできますか?
三上:本作を読んでいただいたら、ぜひシェイクスピアの本も読んでほしいです。シェイクスピアって読んでみると分かるのですが、すごく人間臭くて、変わった人たちばかり出てくるんですよね。面白いんですよ。
これは最終巻だけに限ったことではなくて、『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズが他の様々な本に通じるきっかけになってほしいと思っています。
■大輔と栞子、2人の関係は一体どうなるのか!?
最終巻の発売に先駆けて実写とアニメのダブル映画化が発表された。 きっとファンの皆さんは、五浦大輔と篠川栞子の2人の関係がどのように描かれるか、注目していることだろう。
『ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~』でも、この2人の関係から目が離せない。そして、ページをめくっていくと、そのシーンはあっさりとやってくるだろう。
三上:“あのシーン”は、栞子らしさを取った感じです。あそこで会話をしていれば、それはそれで盛り上がったと思いますけれど、“その後のシーン”で2人の関係性というのは表現できるかなと思ったので。
三上さんのこの言葉の真意は、最終巻をラストまで読んで初めて分かるだろう。ぜひ、『ビブリア古書堂』の世界観を最後まで楽しんでほしい。
(聞き手/金井元貴、大村佑介、編集/金井元貴)