だれかに話したくなる本の話

アマゾンの読み放題サービス「Kindle Unlimited」に「知らない間に入れられている」と著者が告発

■古市氏「著者と出版社の信頼関係を壊しかねない行為」

しかし、「契約書上は問題ない」としても、著作者への連絡が不徹底である状態でスタートするのは倫理に欠ける行為であるとは言えないだろうか。

新刊JPの取材に対して、声をあげた著作者の一人である古市憲寿氏は次のように語る。

  ◇    ◇    ◇

――古市さんは無断でKindle Unlimitedに自分の本が並んでいるのを発見されて、どのような対応を取られたのでしょうか。

「まずは出版社に問い合わせました。すると、編集者の方も事態をよく把握されていない会社があったり、社内に一斉メールでKindle Unlimitedについての告知がなされただけで、著者への周知を徹底できていない出版社もありました。

僕は、担当の方々を責めるつもりはありません。これは出版社だけの問題ではなく、アマゾン側も十分な説明を出版社にしていなかったのではないか、ということも考えられます。

また、勝手にKindle Unlimitedに参加させられたことに関して、販売・プロモーション方法は出版社に一任するといった契約書の文言が根拠になっているようでした。しかし、僕の場合は、問い合わせをして初めて著者にいくら分の金額が分配されるなどの情報が明かされました。

胴元しかルールがわからないレベニュー・シェアというのは不公正だと思います。この件に関しても、アマゾン側の制度設計に問題点があるのではないかと感じました」

――今後、出版社側に求められることはどのようなことだと思いますか?

「僕はKindle Unlimitedの趣旨にすべて反対しているわけではありません。しかし、電子書籍で一部ずつ販売することと、読み放題の一冊に自分の本が加えられることは、まるで違う読書スタイルだと僕は思っています。そのようなサービスに、著者に無断で参加するというのは、著者と出版社の信頼関係を壊しかねないものです。

もし著者への連絡なしに出版社がKindle Unlimitedに参加するのであれば、著者側も、出版社を通さないで自分で電子書籍を出版したほうがいいという動きが広がりかねないのではないでしょうか」

  ◇    ◇    ◇

古市氏は自ら検索をかけて、自分の本がKindle Unlimitedに並んでいることを知ったという。おそらく、自分の著作物がラインナップに入っていることを知らない著作者も多いのではないか。

また、利益配分についても著作者は確認しておくべきだろう。数冊のビジネス書を執筆しているある著者は**「利益配分がどのように変わるのか、説明はまだ受けていない。著者側にとって不利にならなければいいが」**と困惑の色を見せる。

さらに、別のビジネス書作家は**「電子書籍のルールの裁量の大きさは以前から気になっていた。その点で、書店さんが売りづらくなるので、電子書籍は避けている。今後、電子書籍等をやるときも、著者側の意向をきちんと汲むところ以外とはやらない」**とコメントを寄せた。

こうした電子書籍に対する著作者側の意思表明は、自らの立ち位置を不利にしないためにも必要だろう。

この件の対応について、8月9日にアマゾン株式会社に質問を送ったが、8月12日正午現在返答は届いていない。

(新刊JP取材班)

*メイン画像は「Kindle Unlimited」のサインアップ画面をキャプチャしたもの
*2/「日本版「キンドル・アンリミテッド」は、電子書籍市場の転機となるか」(ニューズウィーク日本版)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/08/post-5609.php

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