『経営者の手取り収入を3倍にする不動産戦略』
矢島: 沖さんは不動産コンサルタントとして活動されていますが、どういうお仕事をやってこられたのでしょうか?
もともとは不動産のビッグデータを使った調査・分析を法人向けに提供していたのですが、個人の(不動産売買)コンサルティングを始めたので、不動産コンサルタントと名乗っています。
矢島: 沖さんが経営するスタイルアクトでは、不動産売買を取り扱うことはないんですか?
私たち自身が不動産を持つことはないですね。自分が不動産を持ってしまったら、買っていただくお客さんと利益相反してしまうので。私たちが高く売ろうと思ったら、お客さんは損をすることになるので、一切持たないですね。
矢島: なるほど、しごく明快ですね!
コンサルタントというのは、最適解を選ぶのが仕事なので、「今売り出されているものから、一番儲かる選択肢を取る」ことをロジカルに選択できるようにしています。だから、コンサルティングができるわけですね。
矢島: 沖さんはもともと不動産業界にいたのではなく、コンサルティング業界のご出身でありますね。沖さんから見て、今の不動産業界の情勢ってどうなっているんでしょう?
業界としては・・・普通の不動産屋と、不動産コンサルタントの違いをお話しすると、フィー(報酬)のもらい方にありますね。実は当たり前のこととして存在するんですけど、不動産業界には「売り手」と「買い手」の両方からフィーをもらうビジネスモデルが慣習としてあるんです。つまり、両者にいい顔をして、両側から報酬をもらうわけなので、言ってしまえば結局は自分のフィーのために動くわけです。
矢島: 不動産業界ってそういうモデルなんですね。
私たちはコンサルタントなので、お客さん(買い手)のために動いて報酬をもらうということを明確に意識してやっています。買い手からすると「一番利益を生んでくれるもの」を買いたいわけですから、それを選んであげるのが私たちの仕事です。買い手側のお客さんからしか報酬をもらわないので、お客さんのためだけに働きます。
矢島: なるほど・・・。極論してしまうと、不動産の価値って全体的に見ると下落傾向にあるので、その中で明らかに儲からないものを、自分たちの利益のためだけに売りつけている会社もあるわけですか。そういう業界の闇も目の当たりにしていているんですね。
そうですね。私たちは業界のオピニオンリーダーでもあるので、いろんなところでコラムを書いたり、本を書いたり、コンサルタントの立場で情報発信をしていますから、不動産業界では嫌われることもありますよ(笑)
矢島: (笑い)
でも、お客さんからはすごく愛されますし、ファンもいます。スタンスの違いですね。
矢島: 商売人の息子としては、沖さんのほうが正しいと思うんですけどねえ~。
矢島: 本書の中で沖さんは、不動産投資の対象として「富山市」に注目していますね。これはなぜですか?
富山市は「スマートシティ」という政策を取っていまして、「町の中心部に、みなさんどんどん集まって住んで下さいね」っていう呼びかけを行っているんです。そうすると町がコンパクトになって、中心部の人口密度が上がるんですね。
矢島: 外側に散らばっていた人たちが街の中心部に移り住むようになっていく、と。
そうしてどうなったかというと、地価が上がったんですよ。人が住む場所が外側に広がっていると、行政は電気・水道・道路などのインフラを整備する範囲が広くなります。するとコストも増えるから、すべてをまかなえなくなってくるんですね。だからみんなに集まってもらったほうが行政コストも下がって、サービスもよくなりますよという立て付けです。
矢島: なるほど、人口が増えれば需要と共有のバランスで地価はあがっていきますからね。
そうです。今これがベンチマークとなって、他の都市でもどんどん増えています。国土交通省もこれをモデルケースにどんどん広げようとしているわけです。
矢島: 不動産投資をする上では、そういう「情報」が必要ということですね。
絶対必要ですね。
矢島: 本を読んでいてここは強みだなと感じたのが、「不動産投資」と「節税」を組み合わせた提案のところです。不動産投資と節税って愛称がいいんですか?
良いですね。逆に、節税を伴わない不動産投資はあまり勧めていないですね。不動産投資をするときって、日本の場合はとくに税金が重いんですよ。だから不動産投資で儲かっているように見えても、儲かるほどに税金がのしかかってくるので、思ったほど手元に残らない。そこで節税を味方につけておくと、不動産投資では実は倍くらいの効果を出すことができるんです。
矢島: そんなに・・!知っているのと知らないのとでは、こうも差が出てきますか・・・。やはり「情報」は非常に大切ですね。