ページトップへ

本が好きっ! ブックナビゲーター矢島雅弘のインタビューラジオ

『矢島雅弘の「本が好きっ!」』は、ブックナビゲーター矢島雅弘が、話題の本の著者をゲストに招いてお送りするインタビュー番組です。本についてはもちろん、ゲスト著者の人となりや、成功体験、考え方、ビジネスのちょっとした気づきやなどを、矢島が自身の持ち味である軽妙な対談形式でお聞きし、リスナーの皆さまに「軽くて楽しい」けれども「知的」な時間をお届けします。

ゲスト: 法学者 谷口 真由美さん

『憲法って、どこにあるの? みんなの疑問から学ぶ日本国憲法』

谷口真由美さんと矢島雅弘ツーショット写真

そもそも「六法」ってなに?

矢島: まずはタイトルにあります「憲法ってどこにあるの?」という問い掛けについてなんですが、これは谷口さんが実際にお知り合いの方から聞かれた事なんですよね?ユニークな質問だな~と思ったんですけど、この質問にはどのような意図があったのでしょう?

谷口: その知人は憲法の「条文」を知りたがっていたんです。大きな書店で憲法のコーナーを見ても難しい本ばかり並んでいるし、ネットで憲法について解説されているページを読んでもよく分からなかったと言っていました。だから原文を読みたいという意味で「憲法ってどこにあるの?」って聞かれたんです。

矢島: ふむふむ、なるほど……。

谷口: そこで、六法の話をしようと思ったら、その知人に「六法ってなに?」って聞かれてしまったんです(笑)

矢島: ……僕も「六法ってなに?」って聞かれたら内訳は答えられないかもしれないです。

谷口: そうでしょう?簡単にお話しますと、まず六法というのは明治時代に日本が近代国家になるというタイミングで、一番最初に国で制定された6つの根本的な法律の事なんですよ。憲法・商法・民法・刑法・刑事訴訟法・民事訴訟法、これらがその6つにあたります。そこに新たな法がどんどん加えられていったので「全書」という言葉が付いたんです。

矢島: それで「六法全書」なんですね!日本には法が6つしかないわけではありませんもんね。

谷口: 6つだけではありませんよ!だけどみんなが「六法」って言うから、日本には法律が6つしかないと思っている人も中にはいるんですよ。

矢島: それほど法律を身近に感じていない人が多いという事なんですね……。

谷口真由美さん写真

憲法の趣旨は「前文」にある

矢島: 本書で「日本国憲法は何条あるでしょう?」というお話が出てきましたね。恥ずかしながら自分は正解を答えられず、憲法についてちゃんと理解出来ていないんだなぁと思いました。谷口さん、正解を教えてください……。

谷口: 103条です。だいたい100条くらいって答えられた方はちゃんと分かっていると思いますよ。

矢島: そうなんですか。となると、一般の国民がその103条すべてを暗記する必要はさすがにないと思いますけど、僕達国民は日本国憲法をどの程度理解すべきなんでしょうか?

谷口: おそらく義務教育を受けられた方は、中学生くらいのときに日本国憲法の「前文」を暗記した記憶があると思います。そこの内容は理解しておいた方がいいですね。前文には日本国憲法の存在意義が書いてあって、ポツダム宣言への返答だとも言われているんです。また、第9条にある「平和主義」についてはみなさんよくご存じかと思うんですけど、これも前文があって初めて成立する条文なんですよ。ですから、もしみなさんに法律を読む機会があって、条文の内容がよく分からない時は前文から読み返してみるといいですね。前文にはその条文内容の趣旨が書いてありますから。

矢島: なるほど。「この趣旨でこういう条文を作っているんだ」と理解することが大切なんですね。

谷口: そうですね。ポツダム宣言への返答であるという事を踏まえると、前文と第9条から「平和主義」というものを理解しやすくなると思います。他にも最近よく出てくるのが、プライバシーについて規定されている第13条の幸福追求権や、憲法改正などの議論で重要になってくる90条台の法律についてはある程度知っておくといいかもしれません。

谷口真由美さん、矢島雅弘写真

本来、憲法を守るべき人たちは?

矢島: 本を読んで驚いたんですけど、憲法って「誰が」守るべきものなのかがちゃんと明記されているんですね!つい「国民が守るもの」と思い込んでしまうのですが、実際のところは……?

谷口: 「私達の憲法」みたいな言い方をするから、守らなきゃいけないのも私達だと、多くの人が誤解してしまっているんです。けれど本来、憲法を守るべきは「権力者」と呼ばれる人たちですね。憲法に記されているのは天皇、摂政、裁判官、国会議員、国務大臣、その他の公務員です。

矢島: 学校の先生とかも公務員だから憲法を守るべき人に分類されるんですかね。

谷口: そうですね。地方公務員でも憲法尊重擁護義務がありますからね。だからこそ11月3日の憲法公布日や5月3日の施行日に開かれる「憲法集会」は実はとても大事な会なんです。この集会で、「権力者」たちが「自分たちは憲法を守る」という意識をみなさんに周知させる事ができるんです。

矢島: ふむふむ……。なんだか憲法というのは僕らの日常から縁遠い存在に感じられたのですが、僕ら生活を定義したり、自由にさせてくれているのは各法律だったりしますよね。この法律の根拠となるのが憲法という認識でいいんですか?

谷口: そうなりますね。もともと基本的人権というのが憲法にあって、侵すことのできない永久の権利としてこれを保証するという内容が条文に書いてあります。これのおかげで、国民の自由が確保されているんですよ。

矢島: なるほど。憲法にそういう内容が根拠としてあるんですけど、意外とそこを認識していない国民が多いんですね。

著者プロフィール

谷口真由美

1975年生まれ。大阪府大阪市出身。大阪国際大学准教授。国際人権法、ジェンダー法などが専門分野。大阪大学での「日本国憲法」講義が人気で、学生の投票で選ばれる 「ベストティーチャー賞」を4度受賞。新聞やTV、ラジオのコメンテーターとしても活躍。2012年にFacebook上のグループ「全日本おばちゃん党」を立ち上げ、代表代行を務める。

パーソナリティプロフィール

矢島雅弘

1982年埼玉県出身。2005年よりスタートしたPodcasting番組「新刊ラジオ」のパーソナリティとして、これまで約1800冊の書籍を紹介。ビジネス書から文芸、サブカルなどさまざまなジャンルの本を簡潔に分かりやすいナレーションで解説し、支持を得ている。また、インタビュアーとしても確かな腕を持っている。モットーは『難しいことを、面白く分かりやすく』。

これまでの配信一覧