今も昔も、「資産運用」「投資で利益を出す」「不労所得」は、庶民にとって夢のキーワードです。
特に今は、投資先として国内だけでなく「海外」に目を向ける人も増えていますが、勘違いしてはいけないのは、海外に口座を開いて預金するだけではダメだということ。預貯金の利子が低いのは日本も海外も同じなのです。
しかし、ファンドへの投資となると話は別。海外には、リスクを抑えつつも日本よりいい配当を得られる商品がひしめいているといいます。
『厳選10本のお宝ファンドを紹介!初めての海外投資でしっかり儲ける本』(日本実業出版社/刊)はそんな海外ファンドへの投資ノウハウを、初心者が参入しやすいようわかりやすく解説した一冊。
今回は、著者の森智紀さんにインタビュー!海外投資のポイントや落とし穴を教えていただきました。
―まずは基本的なご質問なのですが、なぜ今「海外投資」なのでしょうか。
森:日本では、昔から「資産三分散」と言って、資産は預貯金と不動産、株の三つに分散して投資するのがいいとされてきました。
しかし、今の日本の1年定期預金金利はご存じの通りとても低く、0.03%ほど。これだと、1000万円を20年預けたとしても約6万円しか金利がつきません。
不動産への投資は、少子化の影響もあって今後都心の地価やアパート、マンションの家賃が下落する可能性が高いので、リスクが大きい割にリターンが見込めない。
また株価も、円安とアベノミクスの影響で昨年は15000円台まで回復しましたが、2014年に入ってからは14000円台を行ったりきたりで、今後の上昇も期待できそうにないのが現状です。
つまり、従来の「資産三分散」では、資産を増やしていくことが難しくなっているのです。
ただ、そんな中でも、海外に目を移すと、元本保護型のファンドや、高いリターンが期待できる金融商品が多々あるというのが海外投資をお勧めする理由です。
―それまでにも様々な投資を経験してきたという森さんですが、海外投資を始めた理由はどんなことだったのでしょうか。
森:これは二つありまして、一つは先ほどご説明したように、日本で運用してもお金は増えないと思ったことです。
私は以前、国内で日本株や不動産投資、ゴルフ会員権、先物取引など、様々な投資をやってきたのですが、失敗してばかりだったんですよ。
新入社員として会社に勤め始めたばかりの時期にやった先物取引では騙されて元金の10%が戻ってきただけでしたし、ゴルフの会員権はバブル崩壊で紙くず同然になりました。不動産も、ワンルームマンション価格が暴落して多額の借金を抱えましたしね。
唯一利益が出たのが株で、運良く史上最高値を出す直前に売却することができたのですが、今後も同じように株価が上昇することはもうないだろう、再度日本株を買って運用しても下がる一方だろうというのも感じていました。不動産も預貯金も同じですね。日本で投資しても増えないと思いました。
―もう一つの理由はどんなことでしょうか。
森:日本という国のリスクが非常に高くなっていることです。
2014年3月末の時点で、国の借金は約1025兆円もあります。これに政府保証債務や地方の借金も含めると、約1270兆円にもなります。
じゃあ収入はどうかということで2014年度の国家予算を見ると、見込まれる税収は50兆円ほど。でも支出が約96兆円ありますから、40兆円以上のマイナスです。これが続いたら日本の借金は毎年40兆円以上の借金が雪だるまのごとく増えていく。
今は日本人の個人金融資産が約1640兆円と、借金の額以上あるので国債を消化できているのですが、住宅ローン等の負債も約350兆円あるので、差し引いて考えると約1290兆円で、国の借金と同じくらいです。つまり、もう日本はこれ以上借金ができない状況になってきているんです。
この状況が行き着く「最悪のシナリオ」は国家破産であり、預金封鎖です。1990年代にはロシアが、2000年代にはアルゼンチンが国家破産しましたが、双方ともに預金封鎖を行い、国民の金融資産の多くが国に没収されてしまった。同じことが日本で起こらないとは限りません。
このような理由で、海外の金融自由化の時期から海外投資を始めるようになったんです。
―これまでに体験した、海外投資での失敗談がありましたら教えていただければと思います。
森:山ほどあります。
始めたばかりの時は欲が出てしまい、ハイリスク・ハイリターンのファンドを購入して大きな儲けを狙ったのですが、下落してしまいましたし、別の海外ファンドは購入した時がピークで、そこから下落して今でもマイナスのままになっています。
また、海外の方が両替手数料が安いということを知らずに日本で外貨両替をしていたりと、大小たくさん失敗してきましたね。
―反対に、最大の成功談はどんなことですか?
森:大儲け、と呼べるような成功談はありませんが、長期運用をすれば、堅いファンドは確実に上昇しています。短期投資で大儲けという考えでなく、長期運用でじっくり増やすという考え方は必要だと思いますね。
―投資初心者にはハードルが高いイメージのある海外投資ですが、素人にでもできるものなのでしょうか。
森:ハードルが高いイメージがあるのは、言葉の問題があるからでしょうね。どうしても海外に投資するとなると英語が話せなくてはいけないと思いがちですが、投資自体は年齢制限さえクリアすれば、あとはパスポートがあれば誰にでもできますし、投資助言業の会社に相談するという手もあります。
不安があるならば、まずは国内外のいろいろなセミナーに参加してみるのもいいと思います。
―海外銀行に口座を開設する際に注意すべき点がありましたら教えていただけませんか?
森:銀行ひとつとっても、日本とは違うところがたくさんあるので、そういったところは注意しておいた方がいいでしょうね。
たとえば、海外は単独名義だけでなく、奥さんや子どもと一緒に二人の共同名義で口座を作ることができます。銀行によっては四人まで大丈夫なところもありますね。
また、ATMカードも日本の銀行のものとは違い、世界各国で使えるものが多いです。これは海外旅行の時に便利だったりします。
あとは、印鑑が不要でサインだけだったり、通帳がない代わりに毎月取引の明細書が送られてくること、毎月最低預金金額を確保していないと口座維持費を取られることなども大きな違いです。
日本人の多くはゆうちょ銀行や都市銀行、信用金庫しか信じていません。でも、一旦海外に行ってみれば、向こうの金融機関が問題なく、むしろ取引するには合理的で安全なことがわかるはずです。
―投資についてはいかがでしょうか?
森:基本的なことですが、為替の変動は考えておかなければいけません。
1000万円を1米ドル100円でドルに両替して投資した後、為替が円高に振れて1米ドル80円になったら200万円損することになりますし、円安に振れたら得をします。
また、ハイリスク・ハイリターンのファンドに投資しすぎないことも大切です。こういったファンドは運用がうまくいかずに大幅に下落したり、最悪の場合、ファンドが解散して投資額の30%くらいしか戻ってこないことだってあります。
だから長期投資を基本線に固いファンドを選んで投資した方が、いい結果は得られやすいと思います。
そして、投資の際に忘れがちなのがチェンジ手数料です。日本で円を米ドルに両替するのには、1ドルにつき1円、ドルから円にするのにも1円ずつ手数料がかかります。往復だと1ドルにつき2円の手数料がかかります。約2%の手数料ということで、海外で資産運用する場合は最低でもこれ以上のリターンがある商品に投資したいものです。
ちなみにチェンジは海外でするほうが安いですよ。
―投資において、もっとも大切にすべきことはどんなことだとお考えですか?
森:私は海外ファンドに投資する時は、5年単位くらいで考えるべきだと思っています。安定した堅いファンドに投資して、5年くらいでいい結果を出すイメージです。
繰り返しになりますが、短期間に高いリターンを求めるとなると、やはり高いリスクが伴いますので、まずは堅いファンドを長期間保有運用するのをおすすめします。
―本書をどんな人に読んでほしいとお考えですか?
森:冒頭で申し上げたように、日本で運用してもお金はなかなか増えません。
そういったところで国内での運用に不満を持っている方や、老後の資金を貯めたい方、年金生活をしていて安定した配当が欲しい方、長期運用が可能な若い方、海外で暮らしたい方などは、読んでいただけるとお役に立つと思います。
―最後になりますが、読者の方々にメッセージをお願いします。
森:いい海外ファンドに巡り会えれば、着実にお金は増えます。お金が働いてくれます。
日本人は、汗水垂らして働いて稼いだお金だけに価値があると思っている方が多いのですが、お金に働かせて得たお金、つまり投資で稼いだお金だって価値は同じです。ぜひ、みなさんにお金持ちになっていただき、悠々としたゆとりのある生活を送っていただきたいです。
(新刊JP編集部)
1951年生まれ、大学卒業後、一部上場企業に就職。関連会社の役員などを定年まで勤め上げる。その間、数々の国家資格を取得。また、若い頃から投資に興味を持ち、株、アパート経営、ワンルーム・マンション投資、ゴルフ会員権投資、外貨預金など、さまざまな投資を体験する。その後、海外ファンドを中心とした海外投資と出会い、その魅力と可能性に気づき、まだ海外投資をする日本人がほとんどいない頃に試行錯誤を重ね、自力で「自分年金作り」のためのノウハウを身につける。実際に自分で試して成果をあげる過程で、プライベートバンクや世界最大級の米国系銀行、英国系銀行、大手ファンド運用会社、ファンド代理店と太い人脈を作り、現在の投資活動に活かしている。現在グローバルレポート顧問。
著書に『海外ファンド投資プラン』(すばる舎)、『ほったらかし海外ファンド成功法』(東洋経済新報社)などがある。
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