情報

こころを育てる七田式えほんシリーズ
おへそのさき

著者: 入江冨美子
    のぶみ
定価: 1,000円
出版社: SHICHIDA BOOKS
ISBN-10: 4861483387
ISBN-13: 978-4861483387

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こころを育てる七田式えほんシリーズ おへそのさき 文:入江富美子/絵:のぶみ

インタビュー

―入江さんの著書『おへそのさき』について、まずはテーマを伺えればと思います。

入江「こういう感覚は日本ならではのものかもしれませんが、率直にいうと、“お天道様が見ているよ”ということを、この絵本を通して子どもたちに感じてほしかったというのがあります。

こういうことは、日本では昔からおばあちゃん、おじいちゃんが語り伝えてきたことだと思うんですけど、今はあまり語られなくなって、子どももそれを聞く機会がなくなってきています。

私自身、祖父母と一緒に暮らしていたので、そういった話を聞かされてきて、周りに誰も自分のことを見ている人がいなくても、お天道様はいつも自分のことを見守っていてくれているんだ、と感じて生きてこれたので、そういう感覚を今の子どもたちにも知ってもらえたらうれしいです」

―「お天道様とつながっている」と考えることで、気持ち的にどのように変わるのでしょうか。

入江「たとえば、親に“あんたはダメな子だ”って言われたらすごく傷つくと思うんです。でも、もっともっと大きなものとつながっていて、愛されていると感じられれば、自分が思っている以上に自分は大事な存在だと信じることができるはずです。そういう風に、いいも悪いも超えてただ存在しているということだけですごいことなんだ、という感覚が伝わってくれたらなと思っています」

―この絵本では、新しい家族ができてみんなの注目がその赤ちゃんに集まってしまったことですねてしまった「大ちゃん」への、お母さんの素敵な対応が描かれています。中でも、お母さんがTシャツのお腹の部分に「大ちゃん」を入れてあげる、というのが印象に残ったのですが、これは入江さんの実体験でもあるのでしょうか。

入江「そうですね。Tシャツの中に大ちゃんを入れるというのは、自分がやっていたことでもあります。

うちも下の子が生まれた時に、お姉ちゃんがちょっとひねくれるというか、それこそ「大ちゃん」みたいにいじけてしまったことがあったんです。そういう時に、今言ったTシャツに入れてあげるとか、赤ちゃんを寝かしつけてからもう一度起きて、今度はお姉ちゃんを抱っこしながら寝るとか、赤ちゃんを抱きながらもお姉ちゃんと手をつないでおくというようなスキンシップをしていました。そうすることでお姉ちゃんは明らかに気持ちが安定してきたんです。

どちらかが愛されていて、もう片方は愛されていないということで姉弟が揉めると、大人になってからも引きずるパターンがあります。そうはなってほしくなかったということでやったことなんですけど、うまくいったのかなと思っています」

―そういったスキンシップは本で読んだことを実践してみた、というのでなく、自然に頭に浮かんだことだったのでしょうか。

入江「Tシャツの中に入れたのは、子どもが自分から入ってきたんですね。その時に思い出したんです。お腹の中に赤ちゃんがいる間、お母さんはかわいいなあと思ってお腹をなでたりするじゃないですか。子どもをTシャツの中に入れて、お腹にいた時と同じようになでていると、子どもも幸せなのはもちろんですけど、親の自分もその時期のことを思い出せて、初心に帰れるんです」

―お父さんというか、男性には思いつかないやり方ですよね。

入江「そうかもしれないですね(笑)“Tシャツの中に入れるのは思いつかない”とこの絵本を読んでくださった方からも言われるので、ちょっと変わった対応だったのかもしれません」

―子どもと上手にスキンシップをとっていくために、どのようなことが必要だとお考えですか?

入江「“こういうのがいい”というのはそんなに考えていないんですけど、私が子どもの時、祖母が、なんでもないときに、ずーっと手をなでてくれたり、頭をなでてくれたりっていうのをよくしてくれていたんです。何かいい事をした時にだけ、そうするのではなく、祖母が孫の私に無条件に愛情を注いでくれたように、私も子どもを育ててることができたら、と思っています」

―子育てにおいて、スキンシップの大切さは言うまでもありませんが、ある年齢に達したら上手に親離れさせてあげるのも親の大事な仕事です。この「親離れ」について、何かされていることがあれば教えていただければと思います。

入江「今、上の子が中学2年生で、下の子が小学6年生なんですけど、自然にすっかり親離れしてきています。私は、子どもたちが幼い時期にしっかりスキンシップをしていると、向こうからお腹いっぱいになって、満足して離れていく。そして、人とスキンシップを取れる人になると思っているんです。うちの場合はどちらかというと私の方が子離れできないので、自分のことを心配しています(笑)」

―最近の子育てについて、何か訴えたいことはありますか?

入江「今は子育ての情報も多く、子どものためにも正しい子育てをしたいと思うがゆえに、その通りにできないと、自分を責めてしまったり、他の家庭と比べて、自分の子育ては間違っているんじゃないかと悩むこともあると思います。お父さん、お母さんにとって、子育て中は大変なことも多いので、何とかホッとできる時間を持って、“よくやってるな”と自分を褒める時間も大切にして欲しいです。自分にやさしくできると、子どもにも優しく接することができる、と思うので」

―子育てのなかでの絵本の役割についてお考えを伺えればと思います。

入江「私の父は、私が5歳の時に亡くなってしまったのですが、それまで毎晩絵本を読んでくれていて、私は今でもそれを一言一句覚えています。読んでくれていたものは『桃太郎』など、一般的な絵本なんですけど、絵本は親子が共通のものを通じて一緒に時間を過ごせる大事なものだと思います。

私も子どもが小さい頃は絵本を読み聞かせていたんですけど、将来あの子たちが悩んだり、反抗期になった時には、もう一度読んであげようと思っています。そうすれば忘れていた大事なことを思い出せるんじゃないかと思うので」

―入江さんはお子様に読み聞かせる絵本をどのように選んでいましたか?

入江「子どもに、言葉でいろいろ教えることも大切ですが、絵本は、楽しみながら、人生で大事なことを親子一緒に感じながら知ることができます。ですから一緒に楽しめる本を選んでいましたね。家をちょっとした図書館風にしたいと思っていたので、いろいろな本を買って置いていました」

―子育てにおいて、最も大切なことはどんなことだとお考えですか?

入江「どなたもおっしゃいますけども、子どもと一緒に親も育っていくということだと思います。子どもから教わることは本当に多くて“子どもは師匠だな”と思い始めてから、私は気持ちがずいぶん楽になりました。だから、一方的に自分の方が上だと思わないようにしています」

―これまで、子どもから教えられた場面としてどのようなものがありましたか?

入江「ある時、学校の先生が、「娘さんがいつもお友達の車いすを押してくれるんですよ」と教えてくれたので、つい“えらいね”と娘を褒めてしまいました。

すると、娘は“偉いなんて言わないで。褒められたいからやってるわけじゃなくて、友達だからやってるんだから”と。ハッとしましたね。娘からしたら当たり前のことをしているだけだったんです。

あとは、私が働いているので、周りの方が“子どもさんたちは寂しいんじゃないの”って気づかってくださるので、子どもたちに寂しくないか聞いたことがあったんです。そしたら“勝手に私らをかわいそうな子にせんといて”って言うんですよ。目が覚める思いでした。大人が子どもを“かわいそうな子”として扱うことは、その子を”かわいそうな子“にしてしまうんだなと思いました。
子どもに対して、一緒に生きる仲間という感覚を持つことはすごく大事だと思います。それは子どもから教えられたことですね」

―最後になりますが、子育て中の方々に向けて、メッセージをお願いできればと思います。

入江「この絵本を通じて、親の方は子どもがお腹の中にいた時の気持ちを思い出せて、その時期の思い出話を親子でできるきっかけにしていただけたらと思います。加えて、一緒に住んでいるかどうか、生きているかどうかに関わらず、おじいさん、おばあさんはこういう人だったんだよ、という風に、これまでつながってきたご先祖様の話にもつながればうれしいです。私としては“お天道様が見てる”という感覚を感じていただきたいですが、それが正しいことだから信じないといけない、のではなく、この本を通して、目に見えない世界の、一つの観点を増やすきっかけとして楽しんで捉えていただけたらと思います」
(インタビュー・記事/山田洋介)