「腰痛が治るのはどっち?」

書評

 マッサージをしても、整体に通っても、ストレッチをしても、何を試してもいっこうに良くならない、辛い腰痛。なかには慢性化してしまって、「うまく付き合っていくしかない」と、治療を諦めてしまっている人もいるのではないだろうか。

 「病院でよくならなかった人のための整体院」として誕生した川井筋系帯療法治療センターで、20年以上腰痛患者の治療にあたる川井太郎さんは、著書『腰痛が治るのはどっち?』(学研パブリッシング/刊)で、腰痛に効果があるとされている生活習慣や運動が、実は症状を悪化させるリスクがあることを指摘している。

腰痛になった時、まず行くべきは病院か整体か?

 腰痛の治療において、大前提となるのは「自分の腰痛の原因を知ること」だ。
おそらくほとんどの人はこのことをわかっているはずだが、インターネットで様々な情報が手に入る今、それらの情報に基づいて自己診断した結果、症状を悪化させることも多い。
 最も怖いのは、「腰痛=筋肉や骨格の問題」という思い込みから、内臓系の病気を見逃してしまうことだ。割合としては少ないが、内臓疾患や感染症、がんなどが原因で腰痛が出ることもある。これを踏まえて、腰痛が出たからといって無条件に整体やマッサージを受けにいくのではなく、まず病院に行ってその腰痛の原因を特定すべきだということは再確認しておきたい。

「正しいウォーキングのフォーム」が腰痛をひきよせる

 運動不足による筋力低下を心配して、時間を見つけては運動をしようとウォーキングに努める人は多いだろう。
 その際にインターネットや書籍で調べるのが「正しいウォーキングのフォーム」なのだが、これはどこで調べても似通っていて「腕をしっかり振って、歩幅は広くとって、かかとから接地する」というものだ。
 確かに、この歩き方は運動量が大きく、筋肉をつけたりダイエットをするためには適している。しかし「腰への負担」という観点からみると、実はまずい歩き方なのだ。
 歩幅を広くとると、片足で体重を支える時間が長くなって股関節に負担がかかるのに加え、骨盤がゆがみやすく、接地した時の衝撃も大きい。また、腕を大きく振ることで上半身の揺れが大きくなり、それを受け止める腰にはさらに負担がかかる。運動量を増やしたいばかりに実践すると、効果が出る前に腰痛を発症してしまうリスクは認識しておくべきだろう。
 腰痛の不安を抱える人に適した歩き方は、これと基本的には逆になる。腕は軽く振り、歩幅は小さく、かかとを軽く後ろに上げてから踏み出すのが理想だ。股関節をあまり動かさず、骨盤を安定させたまま歩くことを意識すると、上半身の揺れが少なくなり、腰への負担は減るという。

「腰痛になるのは腰が弱いから」は本当?

 また、腰痛についての「常識」の一つに「腰痛が出るのは腰が弱いから」というものがある。これを鵜呑みにすると、前述の「内臓系の病気」を別にしても、まちがった対処法をしてしまうことがあるので注意が必要だ。
 「腰が弱いから腰痛になる」のであれば、筋力トレーニングで筋肉をつければ腰痛は改善するということになる。実際に整形外科などでは腰痛への対応として筋力トレーニングを勧められることも多いが、実は「筋トレ」は腰痛への効果は薄いどころか悪化させることもあるという。
 川井さんによると、腰痛の根本原因は、筋力の弱さでも、骨の細さでもなく、骨盤や背骨が不自然な位置に常態化してしまう「体のゆがみ」にある。
 この「体のゆがみ」を正すためには「筋トレ」のように筋肉に力を込める運動ではなく、力を抜いて「筋肉をゆるめる」ことが必要なのだ。

 では、「筋肉をゆるめる」にはどうしたらいいのか?また、腰痛に悪い生活習慣とはどのようなものなのか?
いずれについても、本書では詳しく解説されている。病院を転々としたり、腰痛にいいとされていることをあれこれ試しても良くならないという人は、現状を変えるためにも一読してみてはいかがだろうか。

(新刊JP編集部)

著者プロフィ―ル

川井 太郎(かわい・たろう)

川井筋系帯療法治療センター院長。あん摩マッサージ指圧師。「病院でよくならなかった人のための整体院」として、20年以上にわたり病状、疾病と「身体のゆがみ」との相関性を臨床研究。身体力学、身体運動学に基づいた独自の「川井筋系帯療法」で、腰痛をはじめ、頭痛や首・肩のこり、慢性疲労などの筋骨格系病状、アトピー、喘息などのアレルギー体質的症状を改善に導いている。保健医療学修士、米国アンチエイジング医学会(A4M)認定 ヘルスケアプラクティショナー、日本抗加齢医学会認定 抗加齢医学指導士などの資格も有する。最近では、『腰痛解消!「神の手」を持つ15人:2014年最新版』(現代書林)で紹介されるほか、雑誌やTV、NHKカルチャー教室での講師など幅広く活躍。著書に『腰痛・股関節痛・足のしびれが消える「骨盤ゆらし」』(マキノ出版)、『スマホうつ』(秀和システム)がある。

目次

第1章 あなたが信じている腰痛の常識ウソ? ホント?
  • 質問1 腰痛になったとき、まず行くべきは、病院・整形外科?それとも、整体・マッサージ?
  • 質問2 病院で原因がわかる腰痛、わからない腰痛、どっちが多い?
  • 質問3 腰痛の出る場所は誰でも同じ? それとも、人によって違う?
  • 質問4 「椎間板ヘルニア」と「脊柱管狭窄症」、最近、増えたのはどっち?
  • 質問5 春、夏、秋、冬、最も腰痛になりやすい季節は?
  • 質問6 腰痛になりやすいのは、男性? それとも、女性?
  • 質問7 腰痛ベルトは、したほうがいい? しないほうがいい?
第2章 腰痛の原因は「体のゆがみ」にある。ウソ? ホント?
  • 質問8 サルには腰痛がない。ウソ? ホント?
  • 質問9 腰痛になるのは、腰が弱いから。ウソ? ホント?
  • 質問10 「体のゆがみ」は親から遺伝する? しない?
  • 質問11 「体のゆがみ」は自覚できる? 自覚できない?
  • 質問12 「体のゆがみ」はレントゲン写真に写る? 写らない?
  • 質問13 筋トレで「体のゆがみ」を正せば、腰痛は治る? 治らない?
  • 質問14 ストレッチでインナーマッスルはゆるめられる? ゆるめられない?
  • 骨盤ゆらゆら体操
第3章 腰に負担をかけない生活習慣、正しいのはどっち?
  • 質問15 腰痛が起こりやすい時間帯は、朝? それとも、夜?
  • 質問16 休日は、しっかり寝て休息をとる、それとも、いつも通り起きる、腰のためにいいのはどっち?
  • 質問17 朝食をしっかりとる、朝食を抜く、腰に負担となるのはどっち?
  • 質問18 腰痛の人におすすめの食べ物があるって、ホント? ウソ?
  • 質問19 電車の中で立っているのと座っているの、腰への負担が少ないのはどっち?
  • 質問20 歩きっぱなしの営業職、立ちっぱなしの販売職、座りっぱなしの事務職、腰に一番負担がかかる職業は?
  • 質問21 腰までつかる半身浴、肩までつかる全身浴、腰にいいのはどっち?
  • 質問22 よくスポーツをする、あまりしない、腰にいいのはどっち?
  • 質問23 繊細な性格の人、大雑把な性格の人、腰痛になりやすいのはどっち?
第4章 日常動作、腰痛予防に役立つのはどっち?
  • 質問24 広い歩幅で歩く、狭い歩幅で歩く、腰への負担が少ないのはどっち?
  • 質問25 椅子に座るとき、浅く座る、深く座る、腰への負担が少ないのはどっち?
  • 質問26 椅子から立ち上がるとき、目線を上に向ける、下に向ける、腰痛予防に有効なのはどっち?
  • 質問27 うつぶせ、仰向け、横向き、睡眠時に腰に一番負担がかからない体勢は?
  • 質問28 下にある物を持ち上げるとき、足は前後に開く、左右に開く、腰への負担が少ないのはどっち?
  • 質問29 リュック、ショルダーバッグ、キャリーバッグ、腰への負担が一番少ないのは?
  • 質問30 腰痛予防のため、運動前にしておきたいのは、腰をまわす運動、ひざの屈伸運動、どっち?
第5章 あなたの腰痛、本当はどっち?
  • その腰痛の診断結果、本当に正しいですか?
  • 川井式 腰痛簡易判別表
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 腰椎すべり症
  • 仙腸関節機能障害(仙腸関節痛)
  • 梨状筋症候群
  • 急性腰痛症(ぎっくり腰)
  • 坐骨神経痛
おわりに
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