昨年、上野千鶴子氏が執筆した『おひとりさまの老後』(法研)がベストセラーとなったのは記憶に新しい。ジェンダー論者であり、フェミニストとしても知られる上野氏が、痛快にして明快な切り口で女性にとっての「おひとりさま」の老後を論じた本書は、「老後」を考える女性たちを勇気づけたとして、価値ある一冊であっただろう。(但し、男性はこの本の最後の一文で恐怖のどん底に陥れられたのではなかろうか)
本書は “遺品整理屋”として知られる吉田太一氏が「孤独死」についてさまざまな分析を加えた一冊である。本書に掲載されている上野氏と吉田氏の対談によれば、孤独死は男性に多く、女性のおひとりさまの多くは「無年金・低年金・貧困」という問題を抱えているが、孤独死は少ないのだという。
これまで吉田氏が執筆してきた『遺品整理屋は見た!』シリーズは、著者が体験した孤独死の現場をリアルに描いてきた、ノンフィクションドキュメンタリーだったが、本書はそれらをまとめ、どのような人が孤独死に陥りやすいか、どのようにすれば孤独死から免れることができるか、ということが説明されている。
結論的に言えば、本音を話せる他人がいなかったり、自分を客観的に見ることができない男性は要注意だ。企業戦士としてひたすら働いてきた男性サラリーマンがそこから解放されたとき、やりたいことがなくなり、近所の友人もいないという状況が横たわっているかも知れない。
「孤独」に麻痺している世の男性たちに是非とも一読してもらいたい一冊だ。
1964年大阪市生まれ。引越運送業を経て、2002年、遺品整理のサポートの必要性を感じ、「天国のお引越し」をキャッチフレーズとした日本初の遺品整 理専門会社「キーパーズ」を設立。遺品整理業をビジネスモデルとして確立させたことでマスコミから大いに注目を浴びる。
創業から6年の間に、1000件あまりの孤独死の現場を経験。最近では、本業以外に、孤独死を防ぐためにDVDの作成配布や講演活動などを行っている。 既刊に「遺品整理屋は見た!」「遺品整理屋は見た!! 天国のお引越しのお手伝い」(ともに扶桑社)があるが、その反響はきわめて大きく、フジテレビ系でドラマ化が決定している。
創業から6年の間に、1000件あまりの孤独死の現場を経験。最近では、本業以外に、孤独死を防ぐためにDVDの作成配布や講演活動などを行っている。 既刊に「遺品整理屋は見た!」「遺品整理屋は見た!! 天国のお引越しのお手伝い」(ともに扶桑社)があるが、その反響はきわめて大きく、フジテレビ系でドラマ化が決定している。
- Q1.まず、本書はどのようなテーマで書かれたのでしょうか。また、本書の内容を簡潔に教えてください。
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現在自立して友人も多いが単身世帯であるおひとりさまが改めて気付く事により、本当の「ひとり」にならないためのアドバイス集とし書かせてもらいました。
様々なおひとりさまの孤独死の実例を知ってもらい、なぜそうなってしまうのか?どんな人がそうなりやすいのか?どうしたらそうならないのか?などを数千件の実例から見えてきた「孤独死した方」の生活スタイルから提案しています。 - Q2.一読させて頂きましたところ、本書はこれまで書かれた『遺品整理屋は見た!』シリーズの内容を、抽象化してまとめたという印象を受けました。何故、本書を書こうと思ったのでしょうか。またそのきっかけを教えてください。
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この仕事をして6年が過ぎ多くの孤独死の現場から沢山の事を学びました。
前作までは現場からのメッセージをレポートした内容を書いていたのですが、今回は、現場から見えてくる生き様を通じ、より良く生きるためにはどうしたらいいのかという事を皆様に伝えたいと思ったのです。 - Q3.本書では上野千鶴子さんとの対談が収録されています。社会学者の中でも最高峰の論客として知られる上野さんですが、対談してみての上野さんの印象を教えてください。
- 世間のイメージとはまた違うソフトな面が印象に残りましたね、上野さんも含め生涯何が起こるかは分かりませんが、「おひとりさま」として生きて行くとした場合のしっかりとした心構えや事前の備えをしっかりされている方だという印象を受けました。
- Q4.上野さんとの対談から新しい発見はございましたか?
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私は、コンビニの発展によって孤立した人が増えたとの考えを持っていますが、上野さんは孤立した人でもコンビニのおかげで生きていけるようになったとおっしゃっていました。
確かにその通りで、その意味ではコンビニの利用の仕方を考えるべきだと思いましたね。 - Q5.吉田さんが本書で最も伝えたいことはどのようなことですか?
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現在、増加している孤独死などは人間関係に不器用な方が増えている社会背景が原因しています。
人間関係が不器用なのはなぜか?
その一つは、依存しないと生活できない自立できない人が多いという事だと思うのです。
男女とも未婚の「おひとりさま」と呼ばれる単身世帯の人たちが増えていますが、「おひとりさま」の生活スタイルは、ある意味では自立した人間として社会との間にしっかりとした配慮が出来ている立派な生き方だと言えるのではないでしょうか。
単身世帯であっても、社会的な立場があり友達がたくさんいる「本当のひとり」ではない人も大勢います。
私は、そのおひとりさまの生き方に少しだけスパイスを効かせる事によって、人間関係の豊かな思いやりのある自立した生活が継続され、「孤独死」とは無縁な、「本当のひとり」ではない「おひとりさま」生活が送れるのではないかと思っています。
そして、自立できる人間が増えるための見本となってもらいたいと言いたいですね。 - Q6.どのような方に本書を読んで欲しいと思っておりますか?
- 全ての人間はいつか「おひとりさま」になる可能性を持っています。 その意味では現在、「おひとりさま」の方と「中高年の夫婦のみの世帯」の方々に是非読んで頂きたいと思っております。
- Q7.なぜ、「おひとりさまでもだいじょうぶ。」というタイトルにしたのでしょうか。
- 「おひとりさま」が自分の生き方にもっと自信を持ってもらい、もしものときにも慌てない自立した生き方をしてもらいたいという気持ちをこめて付けました。
- Q8.最後に、読者の方に向けて一言お願いします。
- ばりばり働いて人気者で、一人で住んでいるけどいろいろな人が遊びに来るという人は沢山いますが、退職した後や、自宅で一人になった時等、一人の時間があるところには危険が潜んでいます。そういう意味で、自分には危険がないと思っている人も、これを読んで、自分の生き方を見つめ直すきっかけとしてくれればうれしいです。