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実践 超高収益商品開発ガイド

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書籍情報

超高収益
商品開発ガイド

粗利80%実現7つのステップ

定価: 2520円
著者: 高杉 康成
出版社: 日本経済新聞出版社
ISBN-10: 4532319137
ISBN-13: 978-4532319137

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著者インタビュー

―『[実践] 超高収益商品開発ガイド 粗利80%実現7つのステップ』についてお話を伺えればと思います。まず、高杉さんは新商品開発のコンサルタントとして活動されていますが、これまでにどのような商品にかかわったかをお聞きしてもよろしいでしょうか。

高杉「『岩盤浴おやすみマスク』という商品があります。これは、花粉症対策のマスクなのですが、従来のマスクは花粉をシャットアウトすることを注力した商品ばかりでした。「花粉除去 99.9%」といった具合ですね。

ところが、花粉症で悩んでいる方は、昼間だけではなく、夜も花粉症に悩まされていました。そこで、この夜のニーズをとってみると、「布団についた花粉で眠れない」、「夜眠れないので翌日つらい」、「花粉症マスクは息苦しくて気づいたら寝ている間に取っている」というような困りごとが浮かび上がってきました。

そこで、この会社の持っている「ポカポカする機能性繊維BS-FAIN」という素材を生かし、夜用のマスクを企画開発することにしました。ここで最も注力しましたのが、「夜用であること」なんです。息苦しくてはマスクを外してしまうので通気性を確保し、ポカポカする素材の特徴を生かすために、素材の成分を研究し、使い捨てではなく洗い替えができる仕様にしたてました。結果として、1枚2100円という高価格にもかかわらず大ヒット商品となりました。

市場シェアではなく、顧客ニーズをしっかりととりいれた商品コンセプトと仕様の仕立てが鍵となりました。

後は、工事現場などで使われる発電機やハツリ機械の音を小型軽量の箱で囲って騒音を落とす「ミノリサイレンサー」、農業のビニールハウスやキノコ栽培などで使われ、熱エネルギーを保存しながら内外気を入れ替えてくれるため、空調コストを落としてくれる「熱交換器・涼風」といった商品を手がけました。どちらも顧客ニーズをとらえた大ヒット商品となっています。他にも大企業から中小企業まで、ユニークで高収益である商品を数多く手掛けてきました」

―また、高杉さんがご存じの「高収益商品」について、実例を交えてお聞かせ願えればと思います。

高杉「例えば、ホギメディカルという医療メーカーは、手術の種類や方式によって違うガーゼ、ディスポタオルなどの医療材料を、術式や疾病ごとにキットにして販売し高収益を上げています。これは、手術をする際、準備をする多忙な看護師さんなどが、忙しくてそういったことをしている時間がないという困りごとをうまく解決している商品ですね。現場の動きをみることで生まれる典型的なニーズ収集型高収益商品です」

―本書は商品開発のはじめから終わりまでが非常に細かく体系立てて説明され、非常に充実した内容です。このような網羅的な本を書くことになったのにはどういう経緯がありましたか?

高杉「今の新商品開発コンサルタントの仕事を始めて約10年になりますが、小規模企業から上場企業まで、様々な業種、規模の企業を支援してきました。その中で、大きく欠如しているのが「顧客ニーズ」という視点だったのです。

大企業は、自社の持っている工場、技術に頼ってしまい、中小企業は連携ビジネスや補助金に頼ってしまう。また、顧客ニーズ収集を行っていると言っている企業でも、その中身が薄く、うまく実践している企業は数少ないことがわかりました。これでは本当の意味で良い商品は生まれないという危機感を持ちましたね。

世界に秀でた技術を持ちながら、それをうまく顧客ニーズと融合させるという重要な部分が欠如しているからこそ、日本企業は苦戦しているのでしょう。一部、技術に秀でた会社の成功事例がTVなどで放送されていますが、あれは、ほんの一部の事例で、大多数の企業は、技術だけではなく顧客ニーズをしっかりととらえる形のビジネスを模索すべきと考えたのです。そこで、本書を出版し、顧客ニーズの重要性と、そこからスタートする商品開発の体系をしっかりと伝えていくことにしました」

―特に興味深かったのが「顧客ニーズ」の掴み方の部分です。顧客の要望を「ニーズ」か「わがまま」か判断するために、どのようなことが必要となるのでしょうか。

高杉「顧客からの要望が1人とか1社だけであれば、それは、まずは「わがまま」としてとらえてみることです。そして、同じような仕事をしている人から同じような要望がでてきたら、その段階で初めて「ニーズ」としてとらえる必要があります。

これは、1人や1社からの要望だけで商品開発をしてしまうリスクを減らす狙いがあります。「顧客ニーズに基づいた商品を開発したが売れなかった」という話が時々あるのですが、よく聞いてみると、やはり1人や1社の要望だけで商品開発をしてしまっているのですね。

人や企業は多様な動きをします。例えば、パソコンを使う場合でも、個人と企業では使い方が違います。セキュリティの考え方が違ったりしますね。USBメモリーを禁止している企業も多いですが、個人ではだれでも使っていますね。このように、1人1人で使い方等は違うものなのです。従って、そこから出てくる要望というのは千差万別の可能性をもっています。そこで、1人や1社から出てきた段階では、まずはそれを「わがまま」としてとらえ、同じようなことをしている人から同じような要望が出ていないかどうかを探していくのですね。

千差万別とはいえ、人や企業は、同じような属性を持っていると同じような困りごとを持っている可能性が高いのです。例えば、私のようなコンサルタント業である場合、出張が多いので「軽くて壊れにくいパソコン」に対しては強い要望を持ちます。一方、同じような出張族のコンサルタントにとってみれば、前述のような仕様はありがたいものとなりますね。

このように、1人や1社から出てくる要望は、まずは「わがまま」としてとらえ、同じような属性を持っている人から同じような要望が出てきた段階でそれを「ニーズ」として扱うことが必要なのです。要は、要望の法則を見つけ出すようなイメージですね」

―また、ニーズから導き出された新商品のアイデアですが、ビジネスとして展開するにはより洗練していかなければなりません。アイデアをビジネスとして通用するものに磨き上げる過程でどのようなことが大事になりますか?

高杉「収益性と展開性が鍵となります。具体的には、収益性を上げるためには、商品の特徴をとがらせる必要があります。基本的には、売れている商品は3つの性格がとがっています。

1つは、「ワクワク感」という性格です。 iPhoneやディズニーリゾートなどのように、持っているだけ、行くだけでワクワクするような感覚を与えてくれる商品です。

次に、「困りごと解決」という性格です。これは、顧客が持っている困りごとを商品が解決してくれるという性格ですね。例えば、高速道路のETCシステムは料金徴収の煩わしさを解消してくれることに加えて、渋滞解消にも大きく貢献しています。

最後に3つ目は、「趣味嗜好」の性格です。ゴルフや釣りといった趣味嗜好の領域でとがっていることですね。

このように見ていきますと、世の中で売れている商品は、この3つの性格のどれか、あるいは複数の要素でものすごく尖っているのです。従いまして、新商品を開発していく際には、この3つの要素に照らし合わせて、自社の商品が尖っているかどうかを判断し、さらにとがらせていく必要があります。こういった要素がとがった商品というのは、顧客にとっての価値が高いため、安売りではなく、高価格で販売できる高付加価値商品となるのです。

次に展開性ですが、これは、先ほど述べましたように、同じような困りごとを持っている人がどれだけ多くいるかということです。また、ワクワク感や趣味嗜好の性格の場合は、それに対して感受性の高い同じような属性を持った顧客がどれだけ多く存在しているかが鍵となります。

アイデアはだれでも思いつくのですが、単なるアイデアだけでビジネスを行ってしまうと、大けがをする可能性があります。ましてや高収益商品となると、この収益性と展開性をしっかりと描けた状態から商品開発をスタートさせる必要があります」

―本書で明かされているノウハウは、インターネットを使った新サービスを考えるというようなケースにも応用できるのでしょうか。

高杉「インターネットを使った新サービスにも同じようなこのノウハウは十分通用します。例えば、今流行りのクラウドサービスですが、どこかにサーバーを借りて、何かのクラウドサービスを開始するにしても、「どういった困りごとに何の価値を提供するのか」がなければ、単なる絵に描いた餅で終わってしまいます。また、ネットゲームなども「ワクワク感」「趣味嗜好」の特性をとがらせていくことは重要ですね。

このように、私の経歴からモノ作りを想像される方も多いかもしれませんが、実際は、本書に書かれているようなノウハウを使って、高付加価値型のペットショップを新規展開させてみたり、テレビ局の広告の新商品開発を行ったりと、多種多様な業種で役に立っています」

―高杉さんがかかわった商品開発の事例のなかで、印象に残っている成功談、失敗談がありましたら教えていただければと思います。

高杉「成功談で一番印象に残っているのは、前述の「ミノリサイレンサー」という防音商品をご支援したときですね。この会社は自動車部品を作っているのですが、自動車メーカーの海外進出もあり、何か新しいビジネスを立ち上げていく必要があったのですが、今まで、自動車メーカーから言われてものしか作ったことがないこの会社にとっては未知の領域だったのです。

そこで、私が支援させていただいて、プロジェクトを立ち上げたのですが、そのプロジェクトの合言葉が「利益を上げてもっといい生活をしよう」なんですね。ともすれば、会社の経営理念がどうか、あるいは、年度計画達成といったお題が全面に出がちなのですが、「高収益商品を作って利益率を改善し、自分たちが自分たちで待遇を改善する」という意気込みには、ある意味感動を覚えました。

1年近くかかって新商品を開発し発売させたのですが、完成した際のみなさんの喜びは今でも忘れられないですね。おかげさまで商品は順調に売れています。

失敗談では、エコ商品を作ったときですね。今から5年前ぐらいに、とある企業の新商品開発で支援することになったのですが、今から思えばその手続きが問題だったのかもしれません。

中小企業だったのですが、開発リーダーから稟議書を上げる形でコンサル支援を入れる形態だったのですがこの形がよくなかったのでしょうね。要は、下から上がってきた案件で、社長の関与が低く、あまり興味がなかったのでしょう。 結果としては、商品的には、非常にいいプランができ、技術的な検証も行い開発可能ということになったのですが、社長自身がそういったエコ分野には全く興味がなく、開発プロジェクトはその段階で終了となりました。今思えば、その業界の常識を覆すような画期的な商品で、今のエコトレンドを考えると、おそらく発売していたら大ヒットしていたと思います。私が手掛けた他のヒット商品と比べても、そのコンセプト、市場性、収益性、展開性は抜群で、群を抜いている商品でしたので。

しかし、なぜ社長はやらなかったのでしょうか。今でも不思議です。この経験を踏まえまして、上場企業はともかく中小企業で社長の関与が低いプロジェクトはお受けしないことにしています」

―最後になりますが、読者の方々にメッセージをお願いします。

高杉「国内市場が縮小基調にある中、企業は新しいビジネスや商品を生み出し、収益構造を展開していかなければならない段階に来ています。大企業はグローバル企業とのし烈な戦いを行い、中小企業は勝ち残りと生き残りを模索していかなければなりません。

海外進出、グローバル化などが叫ばれていますが、その前に、よく考えなければならないのは、「ビジネスや商品の仕掛け具合」です。いくら海外に進出しても、どこかの下請けをやっているのであれば、収益構造は変わりませんし、リスクは増大します。また、大企業は、海千山千の海外グローバル企業との戦いを制していくためにも、ビジネスを洗練させ強いビジネス・商品で戦っていかなければなりません。

日本企業は、強いビジネスを「強い技術」と勘違いしている節があります。もちろん、本当に強い技術というのは、強いビジネスを生み出す可能性を持っています。しかしながら、技術は、市場性や収益性といったビジネスと結び付けてこそ生きるものです。

日本企業が、世界に秀でた技術を持っているにもかかわらず、海外勢にやられているのは、ビジネスの仕立て方がうまくないからだと思っています。中小企業でも同様で、すごい技術がすごい商品だと思っていますが、そうではないのです。「強い顧客ニーズにすごい技術」が入ることが究極の商品なのです。

世の中は動いています。高度成長期には「お金」が高い価値を持っていました。お金を借りて工場を建てれば、順調な経済の成長に支えられて売り上げも伸びていきました。お店を建てれば、消費の拡大に後押しされ成長していくことができました。

しかし、今は、「お金の価値」もさることながら、その「使い方=ノウハウ」のほうに価値が移転しています。お金を持っているだけでは、それをうまく生かせないのです。国内企業が膨大な内部留保を抱えているにもかかわらず海外勢にやられているのは、お金の使い方がうまくないのでしょう。中小企業に数え切れないほどの補助金を用意しても、新しいビジネスや商品が生まれてこないのは、ノウハウが足らないのです。

この「価値の変化」に早く気付いて、みなさんの持っている「優れた技術」を顧客ニーズと融合させ、高収益商品を生み出し、会社、経営者、株主、従業員、取引先といった利害関係者のみんなが幸せになれるように頑張ってください」