経営コンサルタントによる企業再生のプロセスは、私たち一般人から見れば想像以上に重く、繊細で、ドロドロした世界なのだろうというのは容易に推測できるのだが、それは所詮イメージでしかない。
企業の問題を解決するための方法論を綴った書籍は数多あるものの、その現場の雰囲気もパッケージングして伝えてくれる本はそう多くはないように思う。
そういった中で本書はストーリー形式を通じて現場で起きていることを伝えてくれるが、そこにあるストーリーの展開は“スリリング”という他ない。
主人公の相馬明日美は『女子大生会計士の事件簿』の主人公・藤原萌実を彷彿とさせる、天真爛漫な25歳の女性だ。
頭の切れ味は凄まじく一流のコンサルタントの腕を持っているその一方で、淡い恋心(といえるのかどうか分からないが…)を抱いたりするなど、女性らしい一面を時折覗くこともでき、なかなか憎めないのだ。
本作では、そんな明日美が大学の後輩の父親が経営する老舗温泉旅館の再生に挑む。
近年では熱海で老舗旅行の再生がクローズアップされたが、その事例を思い起こしながら読むと、さらに理解が深まるだろう。
とにかく1人1人の登場人物が生き生きと描かれており、また、ストーリーも早いテンポで進んでいく。その一方で、フローの解説部分はしっかりとページを割いており、図表も掲載されているなど、わかりやすくするための工夫が凝らされている。
実務面でも、そして物語面でも楽しめる1冊だ。
(新刊JP編集部)
- 会社再生が面白いほど分かる
ビジネスエンタメ小説! - 著者名:田中 伸治(T&Tフィナンシャルグループ社長)
- 出版社:青月社
- 価格:1,575円
- ISBN-10:4810912183
- ISBN-13:978-4810912180
- プロローグ 温泉旅館とデコボココンビ
- 第1章 山本屋の経営危機と忍び寄る影
- 第2章 整理屋・雨月との対峙
- 第3章 山本屋 夏の陣!
- 第4章 新たなキャンバスを求めて
- 第5章 再生計画実行完了!
- エピローグ 明日美と雨月。
新たなアダムとイヴ - あとがき
- 特別寄稿 フリーアナウンサー 梶原しげる
書籍概要
会社再生プランナー・相馬明日美が、過剰債務に苦しむ老舗の温泉旅館の再生に挑むビジネスエンタメ小説。
敵対する美形の整理屋・不破雨月との激しい攻防や闇金融の変態チンピラによる妨害を乗り越えながら、温泉旅館の再生を遂行していく。
リスケジュールや債権譲渡、民事再生法、会社分割、事業譲渡など、専門的なスキームもストーリーの中で納得しながら読めます。
スラスラ読める&読み応えもある、企業再生の専門家が描く本格派のエンターテインメント!