生ゴミ・資源ごみ・粗大ごみなど、私たちが生活すると様々な種類のゴミが出ます。
ゴミは持ち主にとって不用になったからこそ廃棄されるわけで、私たちはそれらに価値がないと思いがち。しかし、ゴミはアイデア次第で立派な経済的価値を持つことができるのです。
東南アジアと日本の東北地方を旅しながら、それぞれの地域でゴミ事情を調査してきた瀬戸義章さんは、本書の中で、各地で行われているユニークなゴミの再利用やごみ処理の方法を紹介しています。
そこからは、ゴミには価値がないどころか、新しいビジネスの種になること、つまりゴミがお金になることを読み取ることができます。
■牛を使ったゴミ削減
資源の活用という意味では、ゴミ処理場は多くの可能性を秘めていると瀬戸さんはいい、その一例としてインドネシア・ジャカルタのピユンガンゴミ処理場を取り上げています。
ここでは、生ゴミを牛に食べさせ、空き缶や鉄くずは売却するために人が拾います。これによってゴミを削減できるだけでなく、食肉を育てられ、同時に貧民層の収入減も確保できるのです。
排出されるゴミの約半分が食品ゴミ・生ゴミというジャカルタのゴミ事情があればこその処理方法だといえますが、ゴミを再利用してお金に結びつけるという試みとしては、ポジティブに捉えられるものです。
■「ゴミ銀行」でポイ捨てが激減
同じくインドネシアで、NGOが経営しているジャンクショップ「ゴミ銀行」もゴミの再利用に一役買っています。
「ゴミ銀行」とは、各人が持ち寄ったゴミの値段を通帳で管理できる銀行。
窓口にビニール袋や紙、ビンなどのリサイクル可能な物品を持っていくと、通帳に品物の種類と重量が記載されます。毎月、この資源はまとめて業者に売却され、個々人は預けた重量に応じて現金を得るという仕組みになっています。
この「銀行」が設立されたことで、人々は「ゴミがお金になる」ことに気づき、ポイ捨てが格段に減ったそうです。
「ゴミ銀行」の会員は2011年時点で252人まで増え、町をきれいに保つとともに、低所得者層の支援をする役割を果たしています。
■震災ガレキを有効活用
東日本大震災の被災地となった宮城県石巻市でも、廃棄物の再利用が試みられています。
たとえば、被災した家屋の建材や流木などの木質系災害廃棄物から異物を取り除き、細いチップ状に破砕した後、接着剤で成型して、家具や建築資材などの使われる合板が作られています。
木質系災害廃棄物は、たい肥として再利用することも試みられており、紙やビニールなどの異物が混じっているものは、バイオマスボイラーの燃料にも利用されているそうです。
本書には、アジア各地や東日本大震災の被災地で、ゴミが人々のアイデアによって収益を生むものとして生まれ変わっている例が数多く紹介されています。
普段何の気なしに捨てているゴミですが、本書で取り上げられている再利用の試みを知れば“ゴミ=いらないもの、価値のないもの”という認識が変わるはずです。
ジャーナリスト・作家。1983年生まれ。神奈川県川崎市出身。神奈川総合高等学校・長崎大学卒業。長崎では「諫早湾干拓」の現場から環境問題を学ぶ。大学時代に、マウンテンバイクで日本を横断、また、ドイツ・フランスを訪れて、ゴミ処理について学ぶ。大学卒業後、都内の物流会社に就職。リユースビジネス「エコランド」の広報を担当し、webマーケティング、イベント、ブランディング、広告プロモーション、PRなどの業務を手がける。同サービスは2009年にグッドデサイン賞を受賞した。実際に不用品回収作業も行い、生活ゴミでベッドが埋まるような「ゴミ屋敷」現場をも体験する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)