総評:ゲームエンタテインメントの未来
過去最高の市場規模も、限界はまだ先に
2007 年の国内の家庭用ゲーム市場は、過去最高の規模だった前年の水準を上回り、ハードとソフトの合計で6879.5 億円という前人未到の域に達した。2006 年に記録的な成長を成し遂げた携帯ゲーム機市場の勢いを受け継ぐだけでなく、Wii を中心とした据え置き機市場も躍進した結果である。これで市場規模は3 年連続のプラスとなり、国内市場は完全に成長の軌道に乗ったと言えるだろう。『ファミ通ゲーム白書2008』第1 章では、空前の好景気となった2007 年の日本国内の家庭用ゲーム市場をさまざまな方向から検証しつつ、将来の市場を展望する。
過去最高を更新、どこまで伸びる?
過去最高を更新した2007 年の国内家庭用ゲーム市場規模。 2006 年ほどの急激な拡大ではなかったものの、ハード・ソフト の合計で、前年から約10%の増加となった。もはや7000 億円 の大台突破も目前であり、5000 億円を挟む展開が続いていた 2005 年以前の水準を考えると、わずか2・3 年前が一昔前のこと のように思える。市場規模の縮小が続いていた時期を乗り越え、国 内のゲーム業界は明らかに新しい段階へ突入したと言えるだろう。
2007 年の市場が順調に成長した理由としては、ハードの貢献が 大きい。ソフト市場規模が前年比で99.1%の3605.4 億円であっ たのに対し、ハードは3274.1 億円で前年比125.0%と大幅に拡 大している。理由としては、2006 年12 月に発売されたWii が大 躍進したことに加え、ニンテンドーDS Lite の安定した推移と、新 型モデルの発売されたプレイステーション・ポータブル(PSP)の 復活がハード市場を大きく押し上げた。
PSP、「モンハン」と新モデルで復活
2007 年、ゲーム業界の関係者をもっとも驚かせたのは、Wii の大ヒットでもPS3 の低迷でもなく、PSP の奇跡的とも言え る復活劇ではないだろうか。その立役者は、もちろん「モンス ターハンターポータブル」シリーズである。2005 年12 月に 発売された1 作目の「モンスターハンターポータブル」は、初 週11.8 万本から累計66.9 万本(ベスト版除く)を販売する ロングセラーとなり、じわじわと人気を拡大。さらに、満を持 して2007 年2 月に登場した「モンスターハンターポータブル 2nd」は、PSP 初のミリオンヒットとなり、本体の売れ行きを 強力に後押しした。そして、2007 年9 月にPSP 本体の薄型・ 軽量の新モデルが発売されたことで、勢いはさらに加速する。同時期に発売された「クライシス コア-ファイナルファンタジー VII -」の効果もあり、9 月の月間販売台数は、発売以降初めて 50 万台を突破した。
ハード牽引の原動力は、ビッグタイトル以外にも、ワンセグ視 聴や音楽・映像再生機器としての需要が考えられる。旧型モデル からの買い換え需要もあり、薄型PSP は2007 年後半に目覚 ましい勢いを見せた。その結果、年間のPSP 本体の販売台数は、 前年のおよそ1.5 倍にあたる302.3 万台に達している。2007 年末時点での累計販売台数は750 万台を超え、2008 年2 月 には800 万台も突破。1000 万台の大台突破もほぼ確実だ。
成長はまだ限界ではない
このように2007 年を振り返ってみたが、いいことずくめのよう で、むしろ好材料が出尽くした感があるのではないだろうか? 一見、 2008 年以降のゲーム業界が、さらに上昇する材料に欠けるように 思われるかもしれない。いや、ちょっと待って欲しい。ここ数年、“ゲー ム”と呼ばれてきたものは、家庭用ゲーム機から携帯電話やPC に、 据え置き機から携帯機に、スタンドアロンからオンラインに、とどま るところを知らない勢いで拡散してきた。「ゲームの広がり」が、最 近の繁栄を支えていることは間違いない。そして、その広がりは、 もう止まったのであろうか? もちろん、そんなことはないはずだ。 Wii・PS3・Xbox 360 の3 機種は、豊富なネットワーク機能でさ まざまな広がりを発生させ、そもそもDS とWii はインターフェイ スの革命でユーザー層の拡散をもたらした。業界の変化はそれだけ ではない。Wii ウェアやXNA はゲームソフトの開発を変える力を秘 めているうえ、Wii チャンネルのさまざまな機能は、ユーザーとメー カーのつながりに一石を投じるなど、ゲームの“民主化”は着実に 進んでいる。