解説
「難聴は加齢によるもの」と思っている人は多いかもしれません。
しかし、『耳は1分でよくなる!』(今野清志/著、自由国民社/刊)によれば、難聴とは音がほとんど聞こえなくなる病気のことではなく、音が聞こえにくい状態を指すといいます。その上で、以下のチェックリストを見てみてください。
- テレビのアナウンサーが話すことは理解できても、バラエティタレントのしゃべりがわからない
- 早口で話されると、声が大きくても分かりづらい
- 呼びかけられたのに、気づかずにいることが少なくない
- 静かな場所なら問題ないが、まわりが騒がしいと何度も聞き返してしまう
著者の今野さんによれば、上記のうち一つでも当てはまるものがあるなら、聴力が衰え始めていると疑ったほうがいいそうです。
ちなみに厚生労働省が平成23年に実施した調査基準によれば、聴覚障害者の数は約24万人。しかし、WHO(世界保健機構)の基準(40dB以下の音を聴き取れるかどうか)に照らし合わせると、日本国内の難聴者の数は2000万人に達するともいわれているといいます。
上のチェックリストや、この2000万人という数字を見ると、若い人にとっても難聴は無縁ではないことが分かるはず。では難聴の原因として、どのようなものが挙げられるのでしょうか。
1、血流の悪化
耳という器官は、細かな働きをするため、たくさんの栄養や酸素を必要とします。そして、それらのものを耳に運んできてくれるのは血流。つまり、血流が悪くなれば、自ずと耳も正常に働かなくなってしまうのです。
2、内臓疾患のおそれ
今野さんが専門としている中医学では、生命エネルギーである「気・血・水」の巡りを良くすることが健康を保つための基本とされているそうです。また、これら三つのうち「気・血」が巡るルートで、内臓や表皮などの全身を結ぶ流れを「経絡」と呼びます。そして、耳は腎臓の経絡上にあり、深いかかわりがあるとされているのです。
3、自律神経の乱れ
これまでにあげた、血流の悪化や、内臓の疾患といった問題を引き起こす背景に、自律神経の乱れというものがあります。
自律神経とはどういうものなのでしょう。交感神経は昼間、心身を活動的な状態へと導くための神経で、副交感神経は逆に夜を中心に働き、休息を促すための神経です。
そして交感神経が優位になると、血管が収縮し血圧が上昇します。その結果、血流が悪化するのです。また自律神経と内臓は、互いに働きをコントロールし合う関係にあるため、どちらかが衰えると悪影響が出てしまいます。
つまり自律神経の乱れが、耳の働きを鈍らせてしまうのです。
本書は中医学をベースに、耳と全身との関係を解き明かしています。また、耳やお腹、頚椎などを刺激することで耳の機能を回復させるトレーニングも紹介されているので、最近少し耳の調子が悪いなと思う人は、これらを試してみると効果を得られるかもしれません。