影宮:そうですね。ただ、男性の方が表に出にくいというのはあります。だから、今回の本では毒親に苦しめられている全ての人を対象にしています。
影宮:私自身も「毒親」に苦しめられてきましたのですが、親との関係で参考になる本がありませんでした。本当に親との関係に苦しんでいる人は、問題を解決したいわけですから、事例だけ挙げた本では不十分だと思ったんです。
影宮:正しいともまちがっているとも思っていないでしょうね。子育てにはマニュアルがないので、自分が育てられたように子どもを育てるんです。
だから、両親のネグレクトによって育った子は、自分の子どもに対してもネグレクトで育てるか、反対に過干渉になってしまうかどちらかです。関わり方が極端になるんですね。
影宮:悩むことがないんですよ。自分の行動に問題があると思っていないので、自分を顧みることがないんです。社会的ステータスがある家だとよりこの傾向は強いですね。
影宮:「過干渉」などは特に自覚しにくいですね。過干渉の親は、傍から見ると「愛情深い親」に見えますし、子どもの方も「愛情を受けて育った」と思いがちですから。
でも、過干渉で育てられた人は、大人になっても自分で何も決断できないことが多いんです。また、親離れしていませんから、結婚しても常に実家を頼ってしまったり、反対に実家の意見が家庭に入ってきたりして、夫婦間のトラブルになりやすい。
影宮:「毒親」に育てられた人の特徴としてコミュニケーション力が低い人が多いというのはありますね。他者との付き合い方というか距離感がわからないという。引っ込み思案になるか、ものすごく押し付けがましい人になるかという両極端に分かれます。
人は親が自分に接したように他者に接しますから、高圧的に押さえつけられて育った人は、職場でも高圧的だったり、反対に押さえつけられるのが怖くて意見を発表できなかったりするわけです。
こればかりは、自分ではなかなか変えることができません。
影宮:子どもからしたら、「自分の親は普通じゃないな」と気付いているんですよ。でも生まれてからずっと育ってきた家庭で、他を知らないわけですからどこがおかしいのかわからない。
それに、親の自分に対する態度や行動について「嫌だな」と思ったとしても、それをどう解決すればいいかも子どもはわからないから、息苦しさはずっとあるわけです。他人だったら縁を切ってしまえばそれで済む問題でも、相手が親ではそうもいきませんから、「嫌だけどほどほどの関係で付き合っていこう」という方が大半ですね。
影宮:まず言えることは、自分が望んでいるのと違う行動を子どもが取った時は、徹底的に、それこそあらゆる方法を使って潰しにきます。
普通なら、子どもの行動がどうしても意に沿わないのであれば、「そこまで言うなら」ということでそれ以上は関わらないでしょう。でも「サイコパス型」の親は、どんな手を使ってでも子どもを自分に従わせようとします。
影宮:肉体的な暴力は子どもが大きくなってくると通用しなくなりますから、精神的に陥れる方法を取ることが多いです。
私の母がまさに「サイコパス型」傾向にある親だったのですが、裏で私を悪い人間に仕立て上げて、親族から孤立させようとしました。「自分は酷い息子を持ってかわいそうな人間だ」ということを親族一人ひとりに言っていくわけです。
影宮:こちらは親がそういうことをするとは思いませんから無防備なんです。自分の目的を邪魔する人間は自分の子どもであろうと許さないというのは、「サイコパス型」の親の特徴としてあります。
影宮:私の場合は「もうこれ以上我慢ができない」という一点でしたね。勤めていた会社に乗り込んできて入口で押し問答になったり、電話を何度もかけてきたりといった状態でしたから、自分の身を守るという意味でも絶縁しました。
影宮:躊躇というよりも、罪悪感ですね。自分が親に対してやったことへの。
「毒親」に虐げられて育った子どもは、常に「正しいのは親で、あなたはまちがっている。あなたが悪い」と言われて続けてきていますから、どんな問題が起きても「自分が悪いからこんな問題が起きたんじゃないか」と思う癖がついているんです。これが一番苦しいところですね。
影宮:「決別しよう」と決めてしまったらもう障害はないんですよ。ただ「本当に親と縁を切っていいんだろうか」と迷っていると、なかなか一歩が踏み出せませんよね。
私はこの本の中で、自分の状況について客観的に見るための「解毒ワーク」を紹介しているのですが、迷っているという方はやってみて欲しいと思います。自分が親にされてきたことや、それに対する怒りや憎しみをきちんと捉えることができれば、決別するエネルギーが湧いてくることもあるでしょうし、エネルギーが湧いてこないならやめておけばいい。とにかく、これまで抑え込んで隠してきた本心を吐き出して把握することが大事なんです。
影宮:基本的には、距離を置いても問題の解決にはならないと思っています。
よく、「毒親」から逃れるために結婚するという人がいるんですよ。結婚すれば親と関わらなくて済むんじゃないかということで。
でも、多くの場合夫婦関係に亀裂が入ってしまいますね。なぜかというと、距離を置くだけだと親との接触はあるわけですから、親子の確執が結婚した家庭に持ち込まれてしまうんです。
自分の親との問題を配偶者に相談しても、配偶者からしたら他人の家の問題ですから「親子なんだから仲良くしなよ」と言いますよね。そうすると「夫(妻)なのに全然気持ちをわかってくれない」と配偶者に対して不満を持ってしまうわけです。
それと、配偶者によっては何とか親子を和解させて、問題を解決しようとする人もいますが、これはやってはいけないことです。親との問題で苦しんでいる本人というのは、自分が親にされたことを消化できないからこそ苦しんでいるわけで、そんな状態で和解なんてできるわけがないですから。
影宮:結局のところ、聞くことしかできないと思います。否定せずに相手の話を聞いて、「大変だったね」と言ってあげればいいんですよ。具体的に何か手伝ってほしいと言われたら絶対に断るべきです。他人の家庭のことを本当の意味では理解できないでしょうし、巻き込まれる可能性もあります。たとえば「毒親」が「あの人と付き合ったからこんなことになった」と言いだすかもしれないわけです。相談に乗ったつもりなのにとばっちりを受けてしまう。
影宮:「毒親」に育てられた子どもは、将来自分も「毒親」になる可能性が高いというのはわかっておいていただきたいと思います。今は「被害者」の場所にいても、いずれ自分が親になったら、同じようなことを子どもにしてしまうかもしれません。自分の親の歪みを子どもに引き継がないように、というのは本当に伝えたいことでもあります。子どもを辛い目に遭わせないないためにも「負の連鎖」は自分のところで断ち切りましょう。
また、「毒親」に育てられた方で、今すでにお子さんがいらっしゃるという方には、親のことや愛情を与えられなかった心の中にあるわだかまりを「できるだけ早い段階で過去のこと」にしていただきたいです。そのためには、親から本当の意味での自立が必要になります。それができれば、親から愛情を与えられずに育った人も、愛情を与える親になることができますから。
毒親専門カウンセラー。親子問題解消カウンセリングスクール「器塾」代表。サイコパス気質の実母との裁判を経て、絶縁を経験。三十数年にわたる毒親支配から脱出した「毒親サバイバー」。毒親育ちの子どもを毒親の支配から解放し、親からの自立までをサポートする「親子の確執解消のプロ」として活躍中。2014年秋にNPO法人「親育て倶楽部」を設立予定。