だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1497回 「放射能と原発のこれから――武田先生、どうしたらいいの?」

自分の身を守るためには真実と向き合うことが第一歩。大人たちは様々な事情のなかで、原発事故で起きた本当のことや、ありのままの現実、これから起きてくると思われる怖い話を隠してきました。放射能、被ばく、汚染……。福島原発事故で起きた真実を語ることからはじめて、誰もがいま抱いている不安や疑問に答えていきます。

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原発事故から10ヶ月・・・

福島の原発事故が起きて10ヶ月が経とうとしています。 しかし現在も、この事故は収まらず、牛肉、コメ、粉ミルクからセシウムが検出されたとか、次々にショッキングなニュースが報じられています。放射能汚染は全国に広がり、除染もままならないのに、野田首相は「原発は冷温停止した」という収束宣言を出しました。一体どうなっているのでしょう? 当初、政府はホントのことを知らせたらパニックが起きるとかで、「直ちに影響はない」といい続け、私たちは事実を知らされずに毎日を過ごしていたのです。 そこで今日は、テレビでお馴染みの武田邦彦先生が、中高校生目線でわかりやすく書いた、「原発・放射能について知っておきたいホントのことと、これから」を伝える本を紹介します。

著者の武田邦彦(たけだ・くにひこ)さんは、 1943年東京生まれ。東京大学教養学部基礎科学科卒業。 大学を卒業後、旭化成工業?に入社。ウラン濃縮研究所所長、芝浦工業大学教授、名古屋大学大学院教授を経て、現在は、中部大学教授です。内閣府原子力委員会と安全委員会の専門委員を歴任しています。 TV出演も多く、「さんまのホンマでっか!?TV」「たけしのTVタックル」などでお馴染みの先生です。本のなかでご自身を含めて、「研究者は変わっている」と仰っているのですが、先生のHPを見ると、「趣味 : 歴史、熱力学、おいしくない食事をすること」と書かれています。

そんな魅力あふれる武田先生ですが、今日紹介する本も武田先生らしく、原発、放射能の真実といまの現実を包み隠さず語っています。 これからの日本を作り上げていく若い世代のために、知っておいて欲しいこと、知らなければならないことを授業形式で、 1時限 武田先生、放射能って怖いものなんですか? 2時限 武田先生、どうすれば放射能から身を守れますか? 3時限 武田先生、なぜ、日本は原発をやめないのですか? 4時限 武田先生、自然エネルギーは地球にやさしいですか? 課外授業 女子高生100人のアンケート といったかたちで、分かりやすく解説しています。

テレビや新聞、東電、政府が真実を知りながら伝えてこなかったことが次々に明らかにされていきます。 そして本当はなにも分からず、何が起こっていたのかも理解できなかった、東電、政府、マスコミ各社の無知無能ぶり。 どうして日本はこのような状況になってしまったのか、事実はどうなのか、放射能の国で、これからどう生きていけばいいのか、いま知りたいことの全てがわかる内容です。

事故発生時、どのように行動すればよかったのか

テレビで「放射能」という言葉をきかない日はなかった3月や4月に比べたら、報じられることが少なくなった今の方が、実ははるかに深刻な状況になっているのだそうです。 何故隠すのか、隠す必要はどこにあるのかといったことまで掘り下げてあります。 中高生目線で若い人に向けてやさしく語りかける講義形式になっているので、とても理解しやすいです。

では、本の内容を少しだけ紹介します。 新刊ラジオ(音声版)では、矢島さんが講義を受けているような雰囲気でご紹介しました。

先生 「では、まず、最初に怖い話を1時限目からしていきましょう。 福島第一原発事故が起きた時、発電所の近くに住んでいる人たちに政府は、「遠くに逃げて下さい」と呼びかけましたよね。 原発からの距離によって「避難区域」を決めて誘導しました。原発を中心に10キロ、20キロという円が描かれた地図をテレビでよくみませんでしたか? 実はあのような「遠くへ逃げて下さい」というのは、原発事故では最もやってはいけないことだったのです」 矢島さん 「え?じゃあ住民は政府によって危険な目にあわされていたのですか」 先生 「原発はドカンと爆発をしたら「放射能」が出てきます。その「放射能」は「光」のように直進します。ということは、あまりにも遠かったり、山のような遮蔽物があったりして「光」が届かない場所には影響がないのです」 矢島さん 「ん?遠くに行けば影響がないのなら逃げてよかったんじゃないですか?」 先生 「それで話が終わらないところが、原発事故の難しいところなのです。3号機が爆発したとき上空にあがった「キノコ雲」がありました。あれはなにかというと、実はあれ自体が「放射性物質」なのです。     「放射性物質」とは「放射線」を発する物質のことで、形としてはチリや花粉のようなものだと思って下さい。     つまり、原発がドカンと爆発して出るのは、「放射線」という「光」だけでなく、「放射性物質」という「花粉」のようなものもあるということなのです。「花粉」はやっかいです。風によって遠くまで運ばれるからです。もし無風ならば問題はなかったのです。そのまま下に落ちるだけですから。ところが現実には「無風」なんてありえません。ですから遠くに逃げるのではなく、「風」から逃れる必要があったのです。にもかかわらず政府の「遠くに避難してください」という発表を真に受けて、テレビも新聞もそれを伝えてしまいました。その結果、飯館村やその近隣の人たちは長い期間、放射能を浴びるという大変悔やまれる事態が起きてしまいました」

死の灰とともに避難していた住民・・・

矢島さん 「原発のそばに住んでいた人が、風向きと同じ方向に逃げていたかもしれないということですね」 先生 「そうです。「死の灰」とともに移動したようなものですから、もっと深刻です。放射能を浴びることを「被ばく」といいます。ですから原発の事故が起きて「被ばく」をしないために必要なことは、まず「知識」です。次に必要なのは「自分の頭で考える」ということです。いくら政府やテレビは「遠くへ逃げろ」と言っても、知識をもとに自分の頭で考えれば「風から逃げなくては」とい結論にいたるはずです」 矢島さん 「(矢島さんの感想・意見などなど・・・)」 先生 「これから長い時間、放射能や原発と向き合わなくてはいけないみなさんは、この大切なことをぜひ心に刻み込んでください」 矢島さん 「「放射性物質」はどこまで飛んだのですか?」 先生 「福島第一原発の爆発によって、北は岩手から南は静岡まで汚染されてしまいました」 矢島さん 「先生、では汚染された地域はどうしたらいいのですか?        これ以上「汚染」を広げないようにするためにはどうすればいいのですか?テレビでは「汚染」はたいしたことない」ってよく言っていますよね。本当ですか?あと、なんで東京電力は汚染された土をそのままにしているんですか?」 先生 「そうですよね。分からないこと、不安なこと、知りたいこと、たくさんありますよ ね。ひとつずつ講義ゆっくりしていきましょう」

まとめ

このように、本書の中でも誰もが思う疑問、つねに不安だったできごとを分かりやすく図解やデータとともに解説していきます。 ・「核爆発」は起きたのですか? ・牛肉や新米から出たセシウムは怖いのですか?今年の新米は食べても安全ですか? ・身の回りで近づいてはいけない場所ってありますか? ・100%ガンになるわけじゃないんですよね?ガンにならないためにはどうすればいいですか? ・政府が発表している「暫定基準値」って何ですか? ・日本は原発の数が多いそうですが、それはなぜですか? ・原発周辺の人たちは反対していませんが、なぜですか? ・なぜ事故に備えてこなかったのですか?事故後でも、学者たちがたいしたことないというのはどうしてですか? ・なぜ誰も住んでいないような無人島などでやらないのですか?

このように、誰もが一度は考えた原発に関する疑問や謎、知りたいことの全てが書かれています。 これから大人になっていく若い世代はもちろん、子どもを育てている人、いまを生きる人、これからをいきる人、日本に生きる全ての人に是非とも読んで欲しい一冊です。

放射能と原発のこれから――武田先生、どうしたらいいの?

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自分の身を守るためには真実と向き合うことが第一歩。大人たちは様々な事情のなかで、原発事故で起きた本当のことや、ありのままの現実、これから起きてくると思われる怖い話を隠してきました。放射能、被ばく、汚染……。福島原発事故で起きた真実を語ることからはじめて、誰もがいま抱いている不安や疑問に答えていきます。