だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1556回 「だからこそできること」

乙武洋匡さんと武田双雲さんが出会い行われた「教育談義」から、1年以上に渡って語り合った内容が、ついに本になりました! 驚くほど共通点が多く、普通の人とは“どこか違う”ところを持ち合わせる2人の対話はとても興味深く、面白いです。人生に悩む人、ネガティブに考えがちな人は、“だからこそできること”が見つかる一冊です。

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概要

こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。

僕が昔から会いたいな〜と思っていた方のひとり、乙武洋匡さんが参加している 対談本を今回はご紹介します。会いたいというのは、ブックナビゲーターとして というよりは、子どものころに友達として会いたかったです。

直接お会いしたことはありませんから著書やツイッターを見ているだけなんですが、 ぜったい面白い人だろうなあ〜と思っております。

今回の本もとっても面白く読みました。さっそくご紹介してまいりましょう!

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◆今日の一冊 『だからこそできること』 (乙武洋匡 武田双雲/著 主婦の友社/刊)

◆著者について

乙武洋匡さん 1976年東京生まれ。早稲田大学在学中に出版した『五体不満足』が500万部を 超えるベストセラーとなりました。“五体不満足は不便だけど不幸じゃない” という言葉が有名ですが、先天的に両手両足がない方です。 99年TBS系『ニュースの森』でサブキャスターを務め、大学卒業後は スポーツライターとして『Number』等で活躍。2005年4月より東京都新宿区 教育委員会非常勤職員となり、教育者としての活動もスタートしました。

武田双雲さん 1975年生まれの書道家。書道は3歳の頃から、母であり、同じく書道家である、 武田双葉さんより叩き込まれたそうです。大学卒業後はNTTに入社し、 3年勤めた後、独立します。 独立後は書道家として、音楽家や彫刻家などさまざまなアーティストとの コラボレーションや個展などが注目を集め、メディアにも多数取り上げられました。

初対面でいきなり意気投合

今回ご紹介する対談本、ツイッターで武田双雲さんから乙武さんに、 「教育談義をしましょう!」と、対談を提案したのがきっかけなのだそうです。 何十万人というツイッターユーザーたちがそのやりとりをリアルタイムに見ていて、 その中には主婦の友社の方もいて、“じゃあ本にしましょう!”となったそうです。 2人はもともと面識があったわけではないのですね。

学術的な対談本であれば、それでも形になってしまうのかもしれませんが、 武田双雲さんと乙武洋匡さんが語る内容は『教育談義』をきっかけに始まる対話で、 お互いの育った環境だとか、考えていることなど、内面的・精神的なことも含まれます。

方や五体不満足の乙武さんと、方や天才と呼ばれて育った武田双雲さん、お二方が 人生を生きる中で“自分の役割”を見つけ出し、いかにポジティブな気持ちで人生を 楽しんできたかということが語り合われています。

そこには、2人の意外な共通点や、自己肯定する中での悩み・葛藤なども含まれ、 面白く、読み応えもありました。2人にもともと面識があったわけではないと 知ったときは、いったいどんな対談になるのか? と不安と期待に包まれて しまったのですが、非常に面白かったです!

乙武さんが破天荒なのは言わずもがなですが、武田双雲さんもとても面白い方で、 あっけらかんとぽんぽん質問される方なんです。 そのへん乙武さんもよかったようで、「この対談はうまくいく」と感じたと、 本の中で語っています。

読みどころをピックアップ

今回、新刊ラジオでは、気になった対談箇所を抜粋しながら、お話しています。 ぜひ音声版を聴いてみて下さい。 「読む新刊ラジオ」では、いくつか気になった箇所を掲載します。

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乙武さん 「基本的に僕の場合、なんでも誰かにやってもらわなきゃいけないんですよ。  もちろんやってあげる側も大変だとは思うんですけど、やってもらう側って  いうのも実はしんどくて……。たぶん、自分でできたほうが楽だと思うんですよ」

人に頼むことが多いことから、人の表情から心中を察する眼が養われた乙武さんの 気持ちとは?

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武田さん 「乙武さんはどんな子どもだったの?本では読みましたけど」

乙武さん 「優等生でしたよ。  こういう体に生まれてきたので、ほかの子と比べてできないことがある  じゃないですか。でも、できないままにしておきたくない。なんとかしてやって  やろうって思うんです。授業でも遊び時間でもみんなと同じように、  それ以上にやってやろうじゃないかって負けん気が強かったんです」

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2人は自他共に認める「前向き」な性格なのだそうですが、それは一体なぜなのでしょう。 話しているうちに「褒められて育った」という共通点が浮き彫りになりました。

乙武さんは、(本の中からの表現ですが)両手両足の無い「底辺」からスタート しているので、両手両足のないわが子が寝返りを打っただけで両親は大喜び だったそうです。

起き上がったり、歩いたり、字を書いたり、ご飯を食べたり、五体満足の子ども でももちろんうれしいことでしょうが、尚更だったということでしょう。

「とにかく褒められた」と言います。

一方、武田双雲さんは、生まれた時、両親が「もうこの子は絶対天才に違いない」と 思い込んで、そのまま育てられたと語っています。もはや理由はわからないそうですが。

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しかし、乙武さんのご両親は、このようなことに悩んだこともあったそうです。

“この鼻っ柱をへし折るべきか、伸ばすべきか” “社会に出てからも同じようにはいかないだろうから”

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本書より、いくつか内容をピックアップしてご紹介しました。 音声版では感想をコメントしながら紹介しているので、あわせて聴いてみて下さい。

それにしても、2人の会話ってほんとうに面白いですよ。

どんな人にも、生まれたからにはそれぞれ役割があるものだと思いますが、 それをどう探して、どう向き合っていけばいいのか、2人の対談からヒントが見つけられるかもしれません。

とはいえ、まどろっこしいこと考えずに、エッセイとして読むにもおすすめですよ。

だからこそできること

だからこそできること

だからこそできること

乙武洋匡さんと武田双雲さんが出会い行われた「教育談義」から、1年以上に渡って語り合った内容が、ついに本になりました! 驚くほど共通点が多く、普通の人とは“どこか違う”ところを持ち合わせる2人の対話はとても興味深く、面白いです。人生に悩む人、ネガティブに考えがちな人は、“だからこそできること”が見つかる一冊です。