だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1538回 「究極の顧客サービス「ザッポス体験」」

「(たまたま)靴を売ることになった顧客サービス企業」と自らを称し、徹底した顧客中心主義で知られる靴の通販サービス「ザッポス」。本書は、ザッポスのビジネスの展開や、成功のために必要な企業風土などを過程を追って解説した一冊です。洋書の翻訳本らしく、エピソードも多く、読み物としても楽しめるように作られています。

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概要

こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。

皆さんは、ザッポスという企業をご存知でしょうか。 大雑把に言ってしまうと、インターネット通販事業者で、顧客サービスが非常に 優れている企業です。およそ3年前にAmazonに買収されましたが、僕はザッポス みたいなインターネットを通じた顧客サービスの充実した企業ってすばらしいな と思って、ずっと注目していました。

今日はザッポスについて書かれた本をご紹介しますが、 どんな企業風土が根付いているのかや、どんな事業を行ってきて、今のザッポスが あるのかなど、そんなことが分かる本をご紹介したいと思います。

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◆今日の一冊 『究極の顧客サービス「ザッポス体験」 ―顧客も社員も幸せにする5つの法則』 (ジョゼフ・ミケーリ/著 日経BP社/刊)

◆この本をひと言でまとめると 「ザッポスの顧客至上主義文化の考察」

◆著者について ジョゼフ・ミケーリは、執筆や講演活動のほか、企業コンサルタントとしても 国際的に活躍されている方です。著書、『スターバックス 5つの成功法則と 「グリーンエプロンブック」の精神』(ブックマン社)や、リッツ・カールトン ・ホテルを取材して書かれた『ゴールド・スタンダード』(ブックマン社)など を発表し、全米でベストセラーとなりました。

ザッポスの評価額、12億ドル!

本書は、徹底した顧客中心主義で知られる靴の通販サービス「ザッポス」の ビジネスの展開や企業風土などについて書かれた本です。

みなさんは、「ザッポス」がどんな会社かご存知ですか?アメリカ・ネバダ州に 本社を置き、靴、衣料、アクセサリーなどをネット通販で販売する企業。 靴のオンライン小売でアメリカ最大です。

1999年にトニー・シェイらの出資を受けて創業され、2009年11月に、12億ドルの 評価額でアマゾン・ドットコムによって買収されました。

ザッポスは、みずからを、「靴を売ることになった顧客サービス企業」と称して います。経営上の苦境は何度も経験してきましたが、経営陣は短期的な利益に傾向 することなく、「顧客にとって正しいことは何か」をいつも追求してきました。

そういう文化もあり、カスタマー・サービスを大切にすることで、ザッポスは よく知られているのです。

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本書のタイトルでもある「ザッポス体験」とはどのようなものでしょうか。 著者のジョゼフ・ミケーリは次のように表現しています。

 「顧客第一で、社員を大切にする企業は数あれど、   ザッポスほどあふれる「愛」を表現するところはない」

ザッポスのあふれる「愛」とは何かは本書を読むと分かりますが、ザッポスからの 「愛」を受けた顧客は「愛」を返し、顧客も社員も成長していく、そんな関係を 彼らは築いているのです。

具体例をひとつあげると、ザッポスに毎日入ってくる注文の75%はリピート客に よるものだそうです。そして、ザッポスが大好きな人=ザッポニアンたちの口コミが 何よりの宣伝になるので、マーケティングや広告の費用を抑えて、顧客サービスの 提供に専念できるのだそうです。

このような多くの根強いファンたち(消費者)が、ザッポスのサイトを何度も 訪れては、商品を注文し、それだけでなく友人や同僚にも勧めているのです。 これができるのは、トップ経営陣の理念、社員たちのマインドの共有、そして、 徹底した効率化と、生産性を高める日々の努力など、様々な経営努力の上に成り 立っているのです。

ザッポスの企業価値観とは?

本書では「ザッポスの5つのビジネス法則」を柱として、経営やビジネスの展開、 顧客との関係性の作り方などについて迫っていきます。

 <ザッポスの5つのビジネス法則>  1.パーフェクト・フィットをめざせ  2.迅速で手間いらずのサービスを  3.パーソナルに踏み込め  4.STRETCH(ストレッチ)   5.勝つために遊ぶ

ザッポスを成功に導いた要因のひとつに、「考え方や感覚が似た人間を揃えて、 共通の目的に向かって前進させたこと」があげられます。それが、ザッポスが 採用活動で重視にしている「パーフェクト・フィット」の精神です。

「パーフェクト・フィットをめざす」というのは、自社のビジネスを徹底的に 理解することです。すると社員たちはそれをサービスの基準にしたり、選択の 指針にするなど、案内板として使えます。また、新入社員が入ってくる際にも、 社風や文化が自分に合うかを確かめることもできます。

この「パーフェクト・フィット」をめざすために、「コアバリュー」(価値観) をザッポスは明らかにしています。

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一般的な企業の価値観とザッポスのコアバリューを比較するとこうなります。

 <一般的な企業の価値観>  正直    尊重   責任  公正   秀でること  プロ意識  多様性  効率  柔軟性  革新

いい言葉ではありますが、その意味をよく変えないと具体的になりませんし、 解釈も人によって変わってしまうかもしれません。

こういった一般的な企業の価値観を踏まえてザッポスの価値観を読んでみて下さい。

 <ザッポスのコアバリュー>  1.サービスでワォ!を提供する  2.変革を受けいれ、推進する  3.楽しくてちょっとイカレたことをつくりだす  4.冒険し、創造し、心を開け  5.成長と学習を怠るな  6.コミュニケーションを通じて、開かれた正直な関係を築く  7.前向きなチーム&ファミリースピリットを持つ  8.少しの努力で多くをやり遂げる  9.情熱と決断力を持て  10.謙虚であれ

これがザッポスです。

このコアバリューをつくる際、ザッポスは・・・

まとめ

このコアバリューを定める際、ザッポスは、関係者全員が自らに問いかけ、 答えを見つけ出しつくっていったのだそうです。

 ・自分たちは何者なのか?  ・何のためにこうして集っているのか?  ・全員が共有する価値観は何か?

そしてリーダーたちが、組織内で了解されていることを救い上げ、社員の声に耳を 傾け、ビジネス全体の発展と意地に役立つコアバリューを、「言葉」にしていった のです。この作業がうまくいけば、できあがった価値観は確かなよりどこになるの だそうです。

◆ まとめ 本書の続きでは、ザッポスのコアバリューの扱い方や、実際ザッポスの社員たち が行ってきたこと、成功のために必要な文化を見極める過程などを追って解説して いきます。洋書の翻訳本らしく、エピソードたっぷりで読み物としても楽しめる ように作られています。

たとえ業種が違っても、顧客との向き合い方や、社員への接し方、ビジネス展開 の経営などについて、学びの多い一冊です。

究極の顧客サービス「ザッポス体験」

究極の顧客サービス「ザッポス体験」

究極の顧客サービス「ザッポス体験」

「(たまたま)靴を売ることになった顧客サービス企業」と自らを称し、徹底した顧客中心主義で知られる靴の通販サービス「ザッポス」。本書は、ザッポスのビジネスの展開や、成功のために必要な企業風土などを過程を追って解説した一冊です。洋書の翻訳本らしく、エピソードも多く、読み物としても楽しめるように作られています。