だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1480回 「玉観音」

中国の人気ナンバーワン作家の最高傑作。謎の美女を巡る男たちの「愛」と「復讐」の物語です。中国では2回ドラマ化され、香港では映画化された恋愛サスペンス。リメイク版も相次いで放送されるなど、海岩作品の人気がうかがえます。ごく普通の幸せを望んでいた主人公が、自分の幸せを犠牲にしてまで選んだ道はなんだったのか…。

新刊ラジオを購読する方はこちら

読む新刊ラジオ 新刊ラジオの内容をテキストでダイジェストにしました

中国人気ナンバーワン最高傑作

● 著者プロフィール  海岩(ハイ イェン)さんは、1954年北京生まれ。作家、シナリオライター、インテリアデザイナー、ホテル経営者とマルチな才能をもつ、いま、中国で人気ナンバーワンの作家です。発表する作品全てが映像化されて大ヒットするという、中国では知らない人はいないほどです。本業はホテル経営とインテリアデザイナー。そのかたわらに小説を書くという才能の持ち主。本作はサスペンス小説であるとともに、海岩氏によれば、『すべての女性捧げる恋愛小説』でもあるというのです。中国では2回のドラマ化、香港では映画化された作品です。

 「玉観音」は、ハンサムで常に女性の注目される“楊瑞(ヤン・ルイ)”という青年が、テコンドーを操る謎の美少女との出会いで繰り広げられるストーリーです。ヤン・ルイが学生のときは工場長である父親のもと裕福な暮らしをしていました。しかし、大学を卒業した年に母親が病で倒れ、貯蓄を使い果たし、さらに借金まで背負いこみ、そして母親は亡くなります。そのあとすぐに、父親の工場も倒産。父親は敗北感から一日中、酒を飲み、酔ってたわごとを言っていました。そんなとき、かつての父親の部下で、ヤン・ルイの友人だった“リウ・ミンハオ”が再就職活動を勧めます。父親はプライドがあるので、自分では行かず、息子のヤン・ルイに求職に行かせます。

そこで出会った謎の美女・・・。

 そこで、出会ったのが“チョン・ニン”。急成長の私営企業・国寧(クゥオニン)公司の副社長。勝気で気性の激しい女性。ヤン・ルイは最初、彼女に反感を抱きます。なぜなら背が高く、ぱりっとした服装で、まじめな顔つきで、髪は男のように短く、話し方も男のように横柄だったかからです。ヤン・ルイの好みは、清楚で従順な女性でしたから、チョン・ニンは彼の好みと正反対な女性でした。

 しかし、チョン・ニンはヤン・ルイに好感を持ち、彼の父親を国寧(クゥオニン)公司の国寧ビル建設準備委員会の副主任に命じ、以前の工場長の報酬よりはるかに上回る報酬を与えます。そのうえ、大学を卒業したばかりのヤン・ルイも国寧(クゥオニン)公司に採用され、資材部のプロジェクトマネージャになり、副社長であるチョン・ニンと付き合うこととなるのです。

 しかし、ヤン・ルイが担当する仕事は少なかったので、毎日することがなく、いろいろな女の子と連れ立って遊んでいました。そんなとき、友人のリウ・ミンハオがとても素敵な女性がいるとヤン・ルイに持ちかけます。そして、その女性こそがヤン・ルイの人生を変えてしまうこととなります。

ヤン・ルイとの出会い

 「僕は毎日することもなく、友達を誘ってバーに行ったりボウリングをしたり、彼らが連れてきた女の子としゃべったりした。たくさんの娘が僕を好きなになり、遊びに誘われた。僕はこういう娘たちとは、付かず離れずの浅い関係を保ち、軽々しくは寝なかった。第一に、誰かに付きまとわれて騒ぎになりチョン・ニンに知られたら大変だし、僕はそのとき目が肥えていて、本当に気に入った娘がいなかったのだ。 リウ・ミンハオも僕に何人かの娘を紹介した。初めはどんなに美人か吹聴されるものの、一目見ると失望しないことはなかった。言い方が神秘的であればあるほどがっかりしたものだ。僕が「兄貴は美人を見たことあるのか?」と文句を言うと、リウ・ミンハオ は「ほかのことは威張れないが、美人なら大勢見たよ」と言い返した。 「映画でか?知ってるか、最近チャンツィイーが出てきただろ、本当に純情だよな」 「ああ、チャンツィイーなら・・・」 リウ・ミンハオが乗ってきたので、「よく知ってるんだろ!」と僕が遮ると、彼は笑って言い張った。「そうでもないさ。実はな、一人知ってるんだ、チャンツィイーそっくりで、チャンツィイーより純情な娘だ。本当だよ!」 僕は彼を睨んだ。とても信じられなかったが、やはり我慢できなくて尋ねた。「どこの誰だい?」「京師(チンシィー)体育学校のテコンドークラブにいるんだ!」 リウ・ミンハオは最近テコンドーの道場に通っている。一つは流行りだから、一つはダイエットのためだ。 「ヤン・ルイ、お前もテコンドーをやらないか。その体格と肉付きなら、半年で青帯のレベルになるよ。やってみればわかる、本当に面白いから」 僕は笑って尋ねた。「兄貴の言うその娘は、本当にきれいなのか?」 リウ・ミンハオは真剣な表情になった。「絶対に処女だ。気に入らなきゃ別のを紹介するよ、いいだろう?」 「美人がテコンドーをやったら台無しじゃないのか?」 「彼女はテコンドーをやらないよ、道場の雑用係なんだ」 雑用係? 処女で、雑用係でチャンツィイーみたいな娘・・・このいくつかの要素が合わさって、僕はなぜか、実際に自分の目で確かめてみたいと強く思うようになった。 京師テコンドークラブは京師アマチュア体育学校の経営で、体育学校の施設を使用している。そこは想像していたよりずっと古くて汚かった。二日後、その粗末で大きな倉庫のような練習場で、僕がのちに永遠の愛を誓うこととなる安心(アンシン)という女性に出会ったのだ」 (P33-34より抜粋)

アンシンとの出会い

 アンシンの純粋で無垢な雰囲気に魅かれ、今までの女性にいだいたことのない気持ちがヤン・ルイに芽生えます。誠実であるが強烈にアプローチするヤン・ルイ。ヤン・ルイを拒み、一定の距離を保とうとするアンシン。

 やがてヤン・ルイの一途な思いを受け入れふたりは結ばれます。周囲の反対がありながらも一緒になることを誓います。しかし、アンシンには想像を絶するような過去がありました。ヤン・ルイとアンシンとの関係を知り、激しい嫉妬に襲われるチョン・ニン。

 アンシンの過去を調べ上げ、ヤン・ルイへ暴露してしまいます。アンシンには壮絶な過去、意外な本性がありました。アンシンはかつて麻薬取締り部隊の最前線で働いていたこと、夫と子どももいました。それでもヤン・ルイの気持ちはさらに強まり、アンシンの全てを受け入れ一緒に生きていくことを選んだのですが…。チョン・ニンはふたりを許すことができず、さらなる打撃を加えます。そしてふたりは…。

 さまざまな要素が絡まり合って、ページをめくる速さが気持ちに追いついていかないくらいです。秋の夜長、長編サスペンス、一気読みしてしまうかも。

玉観音

ラジオで話題になったあたたかい物語(ひとつ前の新刊ラジオを聴く)

玉観音

玉観音

中国の人気ナンバーワン作家の最高傑作。謎の美女を巡る男たちの「愛」と「復讐」の物語です。中国では2回ドラマ化され、香港では映画化された恋愛サスペンス。リメイク版も相次いで放送されるなど、海岩作品の人気がうかがえます。ごく普通の幸せを望んでいた主人公が、自分の幸せを犠牲にしてまで選んだ道はなんだったのか…。