だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1337回 「「きれいごと」を言い合っても世の中は変わらない」

中国という国をどのくらい知っているでしょうか?著者が自らの経験と新しい知見を踏まえて、日本・中国・韓国ビジネスの未来を予想します。日本と中国の成長過程の分析を通じて両国を理解していき、現在の中国の現状、日本の未来など、著者ならではの視点で鋭く描いていきます。「きれいごと」ではなく、本音だけで語った一冊です。

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バンキシャ!出演者が語る“本音のアジア経済”

尖閣諸島沖での中国漁船衝突事故による関係悪化で中断されていた安全保障対話が、20日に再開されました。日中の相互理解と経済協力は、アジア全体の経済発展の上でも欠かせないものなので、これからの対話を通じて理解を深めていってほしいと思います。

『「きれいごと」を言い合っても世の中は変わらない』は、日本で長期に渡って会社を経営してきた中国出身のコンサルタントが、日本と中国の成長過程を分析しながら未来の経済を予想した本です。

経営者・コンサルタントとしての経験をもとに、アジアマーケットと、日本・中国・韓国ビジネスの未来を予想します。現在の日本はなぜ成長が止まり、先行きが不安定になっているのかという点についても、深く切り込んでいます。

● 著者は、日中の成長過程から“未来予測”するコンサルタント

宋 文洲(そう・ぶんしゅう) さんは、1985年に北海道大学大学院に国費留学生として来日。天安門事件で帰国を断念し、札幌の会社に就職をしますが、すぐに倒産。学生時代に開発した土木解析ソフトの販売を始め、1992年28歳のときにソフトブレーンを創業。経営を通じて、日本企業の非製造部門の非効率化を痛感したといいます。

1998年には、営業など非製造部門の効率改善のためのソフト開発とコンサルティング事業をスタート。現在は、経営コンサルタントや経済評論家として、北京と東京を行き来する生活を送っています。テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中(CX「新報道2001」、BSフジ「PRIME NEWS」、TBS「がっちりマンデー」他)。

経済成長を拒否した「きれいごと」を言う日本人

題名にあるように宋さんは、「きれいごと」が嫌いだとハッキリと言います。 これは、立派な言葉を隠れ蓑に、卑怯な自分を正当化している輩が多いからだと言います。 また、「きれいごと」をやめないと本質は見えてこない。だから「きれいごと」をやめないと日本は元気を取り戻せないとも言います。

宋さんは、何故そう言い切れるのでしょうか? また、宋さんが「きれいごと」と表現するのは、日本人のどのような思想や文化、または行動を指しているのでしょうか。

本書の中では、次のように語っています。

● 日本が元気を取り戻せない理由

宋さんは、「きれいごと」ばかり言い合い、いつまでも元気を取戻せないでいる日本人に対して、このように語っています。

「きれいごとは立派な嘘です。普通の嘘よりも酷いのです。普通の嘘なら見破るとすぐに反論できますし、騙されないように自分から逃げることもできます。しかし、きれいごとは国家、天下、倫理、道徳などの立派な隠れ蓑の下で人の思想をレイプする行為です。

日本はなぜ90年代初頭から急に成長が止まり、奇跡のように20年間にもわたってその成長を止めたのでしょうか。 いろいろな人がいろいろな角度から解説を試みているのですが、私は日本社会が本音を言わず、きれいごとばかりにはまったのが重要な原因だと思うのです」

90年代初頭というと、宋さんが起業して会社経営をはじめた頃です。 当時、バブル景気の熱覚めやらぬ日本経済は、株式、投機、不動産投資で資産価値を上げるのに躍起になっていた時代です。そういう時代と比べると、確かに現代の経済は「きれいごと」に見えるのかもしれません。

● 来日して、“国民レベルの低さ”を感じた

宋さんが留学生として日本にやってきたとき、日本の学生や社会を見て、国民全体としての平均レベルの違いを感じたそうです。

初めて足を踏み入れた豊かな国、日本に対して、宋さんは、中国国民の「平均レベル」の低さを感じたと言います。生活感、金銭感覚、ものの見方が日本人と全く異なり、国民性の違いを感じたそうです。当時の宋さんの思いが、本書にはリアルに描かれています。

誤解しやすい「中国バブル」と「日本バブル」の違い

中国はバブル経済だと日本では言われています。 もちろん、その情報は間違ってはいません。しかし宋さんは、「当時の日本のバブルと同じように捉えてはいけない」と言います。

中国の経済はいまも成長を続けています。しかし、中国を衛星から見てみると、中国のバブルは“点々”なのです。 当時の日本のバブルは、日本全国どこへ行ってもバブル景気でした。しかし中国はそうではありません。例えば不動産が高いのは、北京や上海などの都会に限ったことで、田舎の土地は誰も買わないのです。

日本と中国のバブル違いを宋さんはこう言います。

「例えば大連からはじまって広州ぐらいまでや、内陸の西安なり成都なり重慶なりという都市までのバブルは現在も波及している。 これらの都会の土地は、ほとんど今バブル状態だと思う。それがつぶれた場合は中国の経済はどのくらい影響をこうむるかというと、つまり落ち込んだ場合は日本のパターンと違うと言いたい。どういう影響かわからないけれども。 無責任なことは言えないが、つまり少なくとも日本みたいにならない気がする…。

日本は当時、バブル崩壊してどうして立ち直れたか正確には分析できない。だけど、当時の日本には何でもあった。そのときみんな車を持っていたしストックもあった。 だから物が売れない状態になった。 中国は物をつくればこれからも売れる。土地は今現在、完全に投機状態。当時、日本では、私が覚えているのは、日本人はだれもが買う物はもうないと、あとは入れかわる更新需要だけだからと言っていたと思う。

中国は、そうじゃない。見れば分かる。あの貧乏人の多さが。だから不動産のバブルがあったとしても、こういう局所的なものは、つぶした後は経済がどうなるかが予想がつかない。逆に言うと、もう少し落ち着いて地味に発展していく過程になるかもしれない。不動産投機の連中を痛い目に遭わせてね」

中国は日本とは比較にならない程の広大な土地、国民を持ち、貧富の差も日本より大きいものです。バブル経済においても、裕福になるのはほんの一部のみで、たとえば、バブルが弾けたとしても、国の体制自体には大きく影響しないのではないだろうか、と考えているようです。

本書の続きでは、この他にも、「メイドインジャパンとメイドインチャイナ」の違いや、教育、技術、ビジネスをあらゆる角度から捉え、東アジアマーケットへの可能性も考えていきます。

全章チェック&まとめ

バンキシャ!出演者の“本音のアジア経済”いかがでしょうか? 本書では、日・中・韓の経済成長の分析から、これからのアジア経済の未来が見えてくる一冊となっています。

それでは最後に全章をまとめておきます。

第1章 体験と立ち位置の違いによって見えたこと、気づいたこと日本から見えたこと ・中国から見えたこと(1) ・中国から見えたこと(2)−−韓国、ロシアなどについて

第2章 中国を理解するための糸口 ・「華僑」を理解することでわかること ・中国人にとっての「統合と政治」

第3章 日本と中国の成長過程を考える−ステージごとに違うインフラ整備 ・成長過程で考えたこと ・MADE IN JAPANの神話

第4章 本質や原理・原則はどこの国でも変わらない ・どんな体制でも、消費者が商品のレベルを決め、国民が政治レベルを決める ・技術・ものづくりビジネス、そして戦略的発想 ・「きれいごと」、本音と建前をめぐる考察−−日本と日本人社会の心象風景

第5章 東アジアマーケットでの新しい可能性を考える ・特殊と普遍 ・あらためて「グローバル経済化」のもとで価値を考える

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「きれいごと」を言い合っても世の中は変わらない

アジアに可能性を感じられました。

「きれいごと」を言い合っても世の中は変わらない

「きれいごと」を言い合っても世の中は変わらない

中国という国をどのくらい知っているでしょうか?著者が自らの経験と新しい知見を踏まえて、日本・中国・韓国ビジネスの未来を予想します。日本と中国の成長過程の分析を通じて両国を理解していき、現在の中国の現状、日本の未来など、著者ならではの視点で鋭く描いていきます。「きれいごと」ではなく、本音だけで語った一冊です。